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モリエール 恋こそ喜劇

喜劇作家モリエールのドラマ。
モリエール 恋こそ喜劇 [DVD]モリエール 恋こそ喜劇 [DVD]
(2011/12/23)
ロマン・デュリス、ファブリス・ルキーニ 他

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「モリエール 恋こそ喜劇」(2007仏)星3
ジャンルロマンス・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 17世紀のパリ。演劇青年モリエールは、借金を抱えながら自分の劇団を従えて各地を巡業していた。ある日、ついに債権者から訴えられて投獄されてしまう。そこに豪商ジュルダンの遣いがやって来た。ジュルダンは密かにセリメーヌ伯爵夫人に恋い焦がれており、彼女の気を引くために芝居を披露する算段をしていた。それに協力して欲しいというのだ。こうして釈放されたモリエールはジュルダンの屋敷に住みながら演技の指導を始めることになった。彼はそこでジュルダン夫人に惹かれていくようになる。
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(レビュー)
 17世紀に活躍した劇作家モリエールの伝記映画。
 空白の数か月間と言われている無名時代にスポットライトを当てて描かれるフィクショナルな恋愛コメディである。

 自分はこれまでモリエールの作品に触れる機会がなかったため、彼が一体どんな人物だったのか?どんな作品を残したのか?まったく知らなかった。したがって全くまっさらな状態で見たのだが、これが実に魅力的な人物で映画自体も面白く見ることが出来た。

 言ってしまえば、モリエールはまるで子供のような純粋な人間だったのだと思う。
 例えば、ジュルダン邸に招かれた彼は、夫人の目をごまかすために宣教師に成り済まして潜入する。ところが、あっちでボロを出し、こっちでボロを出し、まるで子供のようなドジを踏む。むろんコメディとして作っているので、実際の彼がここまで間抜だったわけではなかろうが、実に可愛らしく憎めないキャラクターとし造形されている(犬に追いかけられるところは笑った)。

 当然のことながら、これでは夫人にも怪しまれる。そもそも、ドサ回りの喜劇役者である彼に試練潔白な聖職者を演じられるはずもない。大胆というか、楽観的というか‥、この"成り済まし″自体が彼の人となりを良く表している。

 ちなみに、モリエールとジュルダン夫人の会話の中で「役者も聖職者も同じ演じる者たちよ」というセリフが登場してくる。これには唸らされるものがあった。確かに"言葉″によって人心を掌握していく行為自体は共通している。片方はセリフ、片方は教示。基本はどちらも一緒であり、ジュルダン夫人のこの言葉は言いえて妙であった。

 物語は、モリエールと彼の正体を知ったジュルダン夫人のメロドラマを中心にしながら展開されていく。艶笑風に味付けされているので変にジメジメとしない所が良い。

 ただ、後半からテーマの引き締めにかかるため、二人の恋心がピックアップされ恋に焦がれる人間の性(サガ)のようなものが徐々に頭角を現し始めていく。傍らで描かれるジュルダンとセリメーヌの恋愛ドラマも然り。実にシリアスな結末を迎える。

 思うに、この悲恋を見る限り、モリエールの喜劇作家としての活動はこうした悲劇の裏返し、反動の表れだったのではないかと思えてくる。辛い現実を忘れて一時の楽しみを与えるのが娯楽の本質的要素、エンタテイメントは悲劇ではなく喜劇でなければならない。この考え方がモリエールの創作活動の原動だったのではないか‥そんな風に思えた。

 尚、ドラマ上、やや締りの悪い部分があったのは残念だった。ジュルダンの娘アンリエットの結婚問題がサブストーリーとして綴られている。これは喜劇と悲劇が表裏一体であることを示すべく登場させたエピソードであろう。しかし、終盤の性急な展開については疑問であった。その場その場での人物の行動、たとえばドラント伯爵のきびすを変える行動は説得力に欠ける気がした。

 演出は軽妙にまとめられている。後半の悲恋色もサラリと描いているので嫌味が残らない。このあたりのさじ加減は中々上手いと思った。尚、映像の完成度という点でも中々クオリティが高いと思う。

 モリエールを演じるのはR・デュリス。基本的にシリアスな演技を得意とするフランス若手俳優の雄であるが、今回は作品のテイストに合わせてコメディタッチに徹している。ジュルダンに動物の演技指導をするシーンが可笑しかった。

 セリメーヌ役を演じたリュディヴィーヌ・サニエの高慢な伯爵夫人も合っていた。無邪気な冷淡さとでも言おうか‥。この小悪魔的な魅力はいかにもサニエらしい。ジュルダンやドラント伯爵等、多くの男たちを顎で使う所が憎らしいやら可愛いやら‥。F・オゾン作品の常連であったが、その後余り女優活動がなかったので久しぶりに見れて嬉しかった。
[ 2012/10/19 01:41 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(2)

お疲れ様です。

レポありがとうございます。
私も紹介致しました意味があったというものです。
私が本作品を最初に観た渋谷東急文化村ル・シネマは意欲作を頻繁に上演しており、これ含めまして数回足を運びましたが、
客層が以外と地雷なんですよね。
三越系デパほど上流層って訳でもなく、
地上派TV夕方ニュースショーとか視てそうな感じで、
人は見かけによらぬって事なんでしょうけど…。
[ 2012/10/27 06:30 ] [ 編集 ]

今回はありがとうございました。
確かにル・シネマは客層が独特ですよね。何度か行ってますがそのたびに肩身が狭い思いにさせられて‥。
そう言えば、リニューアルしてからまだ一度も足を運んでないので、いずれ行ってみたいです。
[ 2012/10/29 02:22 ] [ 編集 ]

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