美しい映像は必見。
「言の葉の庭」(2013日)
ジャンルアニメ・ジャンル青春ドラマ・ジャンルロマンス
(あらすじ) 靴職人を目指す高校生タカオは、ある雨の日に学校をさぼって公園で靴のスケッチを書いていた。そこで缶ビールを飲む女性ユキノと出会う。以来、二人は雨の日になると、そこで交流を育んでいった。タカオは次第にユキノに惹かれていくのだが‥。
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(レビュー) 高校生の少年と孤独な女性の愛を繊細なタッチで描いた中編アニメーション。
原作・監督・脚本は新海誠。
「秒速5センチメートル」(2007日)の所でも書いたが、彼の演出スタイルは非常にスタイリッシュである。ある種絵画的映像美が際限なく追及された所にその才覚が伺えるが、これは彼が独自の作家性を前面に出すことが許されている環境にあるからであろう。
彼の作品をこれまでプロデュースしてきたのはコミックス・ウェーブ・フィルムという会社である。ここは、クリエイターの作家性を重視した作品作りを行っている会社で、こうした支えを借りながら新海誠はオリジナリティ溢れるアニメーションを作り続けることが出来ているのである。
物語は、少年の初恋を抒情的に綴っもので中々味わい深い。この年頃の少年にとっての夢や希望、大人の女性に対する憧れが如何に人生にとって大きいものか。それが丁寧に描けていると思った。
また、タカオの家庭環境は少し変わっていて、そこに彼のバックスボーンも嗅ぎ取れる。これも色々と想像してみると面白い。
今作は基本的にタカオの視座で進むドラマであるが、一方でユキノの方に目を向けると、彼女にも彼女なりのドラマが見えてくる。こちらは仕事や恋に悩む大人の女性のドラマになっていて、これも中々面白いと思った。ただ、タカオに比べるとどうしても紋切り的で、一定のリアリティは感じられるものの、彼女が抱える悩みは掘り下げ不足という感じがした。今作は50分足らずの中編作品である。もう少し時間があればこちらも充実したものに出来たかもしれないが、このあたりは致し方がない。
映像は今回もひたすら美しい。先述したように、これは新海作品の大きな美点である。今回はほとんどが雨が降る公園を舞台にしたタカオとユキノの会話劇になっているが、この背景が非常に美しく描写されていて感心させられた。特に、雨粒で煙る空気を映像として見せたセンスには脱帽である。実写では中々ここまで美しくは表現できないであろう。アニメーションならではという感じがした。
ただ、こうした美点には落とし穴もあると思う。美しい映像で塗り固められた世界観は、時として創作者のナルシシズムばかりが目立ち、ドラマをどこか浮世離れした物に見せてしまう場合もある。自分は新海作品の中に必ずこのあたりの功罪を見てしまう。そのせいで「秒速5センチメートル」は余り肌に合わなかった。美しい映像ばかりが目立って、ストーリーや人物の葛藤が後方に追いやられてしまったからである。肝心のドラマが物足りなかった。
しかし、今回は「秒速~」に比べると主人公たちの葛藤はしっかりと描かれているし、ストーリーも小品に合ったサイズで余り破天荒な感じを受けなかった。おそらく新海監督の繊細なタッチは、SFやファンタジー、大河ドラマよりも、こうした日常に起こる細やかなドラマの方が合っているような気がする。
お疲れ様です。
私の場合はこの作品が初の新藤作品でしたが、
確かに、SFや大河ものよりも今回のような作品がいいのかもしれませんね。
これまでの話題作でポジション確立しつつありますし、
今後も注目したいと思います。
今回はこれにて。
どうしても地味な印象ですが、作りは丁寧なのでそのクオリティは評価されるべきでしょう。今後どういった作品を作っていくのか、自分はぜひ長編を見てみたいですね。
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