突っ込み上等な時代劇の怪作。

「真田風雲録」(1963日)
ジャンルアクション・ジャンルコメディ
(あらすじ) 慶長五年、関ケ原合戦で泥棒をしていた浮浪児のお霧、清次、伊三、六たちは佐助という奇妙な少年と出会う。彼は生れた時に隕石の放射能を浴びて超能力を身に付けていた。それから数年後、成長した彼らは運命の再会を果たす。一同は佐助をリーダーとして大坂城へと向った。彼らはそこで真田幸村に従うことになるのだが…。
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(レビュー) 大坂の陣を舞台にした奇想天外なアクション時代劇。
一応史実を元にしているが、かなりぶっ飛んだ脚色が加えられているため、真面目に戦記物として観ない方が良いだろう。ファンタジーの要素も含まれているので、ある種伝奇ロマンのような作品として割り切って観るべし。
監督は数々の娯楽映画を輩出してきた加藤泰。
脚本には原作者でもある福田善之が参加している。
この原作は福田の戯曲であるが、本人曰く、学生運動を風刺したということである。その傾向はこの映画にも色濃く出ている。加藤の演出が余りにもエンタメに振っているため、意識しながら観ないと分からないかもしれないが、確かに原作の狙いはそこかしこに読み取れる。時代劇で何故学生運動を‥?という疑問はあるが、製作された当時の風潮を考えればそういう機運があったのだろう。
加藤の演出は実に奔放である。
猿飛佐助に超能力シーンを筆頭に、ミュージカル演出、まるで”お遊び”とも思えるような悪ふざけが過ぎたアクションが次々と飛び出してくる。このあたりは好き嫌いがはっきり分かれそうである。かなりクセが強い。
キャスト陣では、佐助役に東映の看板スター中村錦之助が扮し、快活な演技を披露している。ヒロインお霧役は渡辺美佐子。他にジェリー藤尾やミッキー・カーチス、千秋実、常田富士夫、大前均等、個性派俳優が揃っている。いずれも一癖も二癖もある役柄で、真田十勇士を活き活きと妙演しているのが良い。
但し、映画前半はかなりお気楽に観れるのだが、後半からりシリアス色を出してくるので、決して明朗快活なコメディというわけではない。籠城する大阪城を舞台にしているのは、明らかに学生運動の閉塞感を表現しているし、佐助たちが戦をせず怠惰な日常を送る姿には学生運動の終焉も嗅ぎ取れる。
また、クライマックスは真田十勇士の夫々の末路が哀愁タップリに活写され、まるで討ち死にしていった当時の学生たちの鎮魂にも思えてくる。
そうかと思うと、真田幸村の絶命シーンなどには滑稽さも過剰に演出されており、中々一筋縄ではいかない作品である。
映画は娯楽であると同時に歴史を写す鏡でもある。決して悪ふざけだけでは終わらない。加藤泰と福田善之の中にはそんな思いがあったのではないだろうか。
お疲れ様です。
こうして記事にして頂きまして、
紹介した身としましては有り難い限りです。
キャラ崩壊デフォの中で錦兄佐助のカッコ良さと、
千姫と才蔵(この映画ではくの一設定)の可憐さ、
ツッコミ役で常識人だった秀頼が印象的でした。
あの時代、アジテートして簡単にホイホイ乗っかってたと言うのは、
今にして思えば異常かつ貴重だったんだなと思ってます。
これ以外でも台詞中心の新歌舞伎で『大老』が上演されてまして、
これは井伊大老達幕府側を政府に、
水戸藩薩摩藩尊皇側を学生運動側にあてがってましたし、
先鋭化して行った70年代新左翼を、
源平時代の木曽義仲軍にあてがった清水邦夫原作の舞台、
「我が魂は輝く水なり」もありました。
亜米利加でも60年代末期に、
体制に潰されたヒッピーなどアメリカのカウンターカルチャーの姿を、
キリスト最後の7日間になぞらえたであろう、
ジーザスクライスト=スーパースターが初演されてましたから、
日米以外でもあの時代を逆に過去の時代に置き換えてた作品は、
もっとあるのかなと思ったりしています。
>さとうさん
この映画は一部でカルト視されている怪作で中々日の目を見ることはないのですが、埋もれさせるのには勿体ないヘンな魅力がありますよね。
やりたい放題やっている感じが観てて楽しいです。
しかし、逆にそこが好き嫌いの分かれるところかもしれません。
当時の世相を反映させたところは今見ても価値ある部分かなと思います。
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