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闇のバイブル/聖少女の詩

独特の映像に魅了される麻薬のような映画。
闇のバイブル 聖少女の詩 [DVD]闇のバイブル 聖少女の詩 [DVD]
(2004/02/27)
ヤロスラバ・シャレロバ、ヘレナ・アニェゾバ 他

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「闇のバイブル/聖少女の詩」(1969チェコスロバキア)星5
ジャンルファンタジー・ジャンルエロティック
(あらすじ)
 13歳の少女ヴァレリエは両親がいなく、厳格な祖母に育てられた。ある日、彼女は村にやって来た旅一座に不気味な怪物を見る。それ以来、奇妙な悪夢にうなされる。農夫が公然とセックスをし、少女達は森の中で川遊びをし、少年は磔にされ戒めを受けた。ヴァレリエは不思議な光景を次々と目撃しながら迷宮の世界を彷徨っていく。
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(レビュー)
 初潮を迎えたばかりの少女が、不思議な現象に遭遇しながら、自らの呪われた運命と対峙していくミステリアスな怪作。幻のロリータ映画として一部に熱狂的なファンを持つことでも知られる作品だ。

 物語は判然とせず、筋を追っていくと余り面白くない。一応、ヴァレリエが見る悪夢という解釈が出来るが、場面に整合性がなかったり、キャラクターの生死が不明瞭だったり、かなり曖昧な内容になっている。

 また、吸血鬼の設定をベースに敷いていることは明白だが、これがヴァレリエにとって何を意味するものなのか。今ひとつ分からない。怪しい宣教師が村を牛耳っていくことと関連付ければ、吸血鬼は神的なもの、権力的なもののアイコンとして存在しているのかもしれない。あるいは、思春期のヴァレリエに不安と恐怖を与えんとする父権の象徴なのか?はたまた、彼女に永遠の処女性を強要する周囲の大人達の傲慢さなのか?色々と想像できる。

 こうした様々な点で分かりにくい作品である。しかし、逆に言うとその解釈を巡っては如何様にも想像を働かせることが出来、見る人によって作品の魅力は無限大に広がっていくことにもなろう。近いテイストとして挙げられるのが、寺山修司の幻想的な作品やL・マル版アリスと言える「ブラック・ム-ン」(1975仏西独)あたりだろうか。見る人によって評価が真っ二つに分かれるような作品だ。

 映像も不思議な味わいを醸す。作り手の美的感性が忠実に再現された耽美タッチ、日本のワビサビにも似た儚さや透明感が特徴的だ。
 そして、画面の作りこみに最も寄与しているのは、東欧独特のロケーションの素晴らしさである。優しい光が差し込む田園風景、伝統的な石畳、これらはこの物語をまるでファンタジーのように見せている。
 一方でヴァレリが見る悪夢シーン、あるいは屋敷の地下室で繰り広げられる行為にはダークな色調が占有し薄気味悪さが前面に出てくるようになる。美観とのコントラストは実に刺激的であり、この禍々しさにも魅了される。

 また、見所の一つとしてエロティックなシーンも挙げられよう。下世話というよりも上品に撮られており、余りいやらしさを感じさせない。少女の半熟なセックスアピールが周囲の大人、そして自らをも翻弄していくというのはナポコフの「ロリータ」にも共通するものであるが、こちらは近親相姦的な禁忌さも相まって、かなり倒錯した世界に傾倒している。

 キャストでは何と言っても、ヴァレリエ役の少女の繊細さと小悪魔性をしのばせた造形に魅了された。映画出演は本作のみということで勿体無い。

 監督のヤロミール・イレシュはチェコ・ヌーヴェルヴァーグの作家として知られる才人である。この長編処女作の他に数本撮っているが、残念ながら日本でDVD化されているのは本作のみである。類まれなセンスを感じさせる映像作家なので他の作品もぜひ見てみたいのだが‥。
[ 2011/06/18 03:08 ] ジャンルファンタジー | TB(0) | CM(1)

最近、ツタヤのお勧めコーナーに並んでいたのでぜひ観ようと思っていた。チェコの映画はクセ強そうで警戒していた。
[ 2016/07/10 11:20 ] [ 編集 ]

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