「アンダードッグ」(2020日)
ジャンルスポーツ・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) かつて日本タイトルにあと一歩まで迫りながらも、今は“かませ犬”としてリングに上がり続ける末永は自堕落な生活を送っていた。一方、養護施設出身の若き天才ボクサー大村は順風満帆な日々を送っていた。彼は落ちぶれた末永に辛らつな言葉を投げかけながら、何故か放っておけなかった。その頃、売れない芸人宮木はテレビ番組の企画でボクシングに挑むことになる。その対戦相手に末永が選ばれるのだが…。
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(レビュー) かませ犬としてリングに上がり続ける落ち目のボクサー、前途洋々な若き天才ボクサー、番組のためにボクシングを始める売れない芸人。夫々のボクシングにかける思いをエネルギッシュに描いた作品。
尚、本作はABEMAプレミアムで全8話で配信された作品を元にした劇場版である。前後編の2部作で公開され、計4時間半越えの大作である。配信版は未見だが、今回は劇場版の方を鑑賞した。
監督、脚本は
「百円の恋」(2014日)の武正晴と足立紳のコンビ。奇しくも今回もボクシングを題材にした作品であるが、女性ボクサーが主人公だった前作と違って、今回は3人の男性を主人公とした群像劇になっている。
かつての栄光にしがみつく落ち目のボクサー末永。才能に恵まれた若き天才ボクサー大村。大物俳優を父に持ち売れない芸人をしている宮木。夫々がリングで戦う意味を見出していくまでのドラマをハードに活写している。
前編は主に末永と宮木の戦い、後編は末永と大村の戦いとなっている。
ファイトシーンが劇画タッチに拠りすぎて「百円の恋」と比べて若干リアリティに欠ける気がしたが、前作とはまた違った見応えを感じた。特に、後編の末永と大村の戦いは白眉の出来栄えで、観てて自然と手に汗握ってしまった。
末永、大村、宮木、夫々のドラマも見応え十分である。
まず、末永は妻に見捨てられた甲斐性無しで、かつての栄光はどこへやら。今ではデリヘル嬢の送迎をしながら日銭を稼ぐ落伍者に落ちぶれている。唯一の楽しみは別れた幼い息子との面会だけ。そんな息子の前で恥をかけないと、再びリングに上がる決心をするのだが…。
やがて、宮木とのエキシビジョンマッチが組まれるのだが、これはテレビ番組の企画ありきで始まったもので、末永は当然負け役を演じさせられることになる。しかし、このまま負け続けの人生で良いのか?という思いが末永の中でふつふつと芽生えていく。
一方、対戦相手の宮木にもドラマは用意されている。親の七光りで入った芸能界だが、そのプレッシャーに押しつぶされて目が出ず、引退をかけて今回のボクシング企画に挑戦する。周囲からは軽く見られがちな彼にとって、この戦いだけは本気の勝負という思いを強くし、いざリングに上がるのだが…。こちらも後がない崖っぷちの人生で見応えを感じた。
そして、才能あふれた大村は、身重の新妻に支えられながら順風満帆なボクサー人生を歩んでいる。ところが、そんな彼も思わぬアクシデントに見舞われ、チャンピオンになる夢を閉ざされてしまう。再起をかけて末永との戦いに挑むのだが…というのが後編のクライマックスとなる。
4時間半という長さもあり三者のバックストーリーは濃密に筆致されており、大変面白く観ることができた。
また、メインの3人以外のキャラクターがユーモラスに描写されているおかげで、陰鬱になりがちなドラマも嫌味なく観れる。
末永とデリヘル嬢・明美とのやり取りも淫靡になりすぎずクールに抑制されており、この辺りも中々スマートに処理されていると感心した。
そして、ドラマに息吹を吹き込んだキャスト陣の熱演も見逃せない。
何と言っても、末永を演じた森山未來の体を張った役作りが凄まじい。この荒んだ佇まいは
「苦役列車」(2012日)の主人公と被る部分もあるが、こちらは肉体的なストイックさが求められる分、ただ単に落伍者というだけでは務まらない役所である。内に秘めたる芯の強さが静かに体現されており感心した。
大村を演じた北村匠海、宮木を演じた勝地涼も夫々に森山に劣らぬ熱演を見せている。
本作で一つだけ気にいらなかったのは、宮木が出演するバラエティ番組に関する描写であろうか…。これが少し冗長に感じた。もしかしたら配信元との絡みから忖度したのではないか…と勝手に穿ってしまったのだが、果たして…。
「BLUE/ブルー」(2020日)
ジャンルスポーツ・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) ボクシングジムで黙々とトレーニングに励む瓜田は、負け続けのボクシング人生を送っていた。同じジムの後輩・小川は対照的に才能に恵まれ、いまや日本チャンピオンに挑もうとしていた。しかも瓜田の初恋の相手・千佳との結婚も控えていた。そんなある日、ジムに楢崎という青年が入門してくる。彼は女の子にモテたいという理由だけでボクシングを始めるのだが…。
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(レビュー) 3人のボクサーたちの戦いの日々をドラマチックに綴ったボクシング映画。
瓜田、小川、樽崎。三者三様、夫々の栄光と挫折を描いており、群像劇として大変よくできた作品である。「ロッキー」(1976米)をはじめ古今東西様々なボクシング映画が作られてきたが、こういう形でボクサーの光と影を描いた作品というのは今まであるようでなかったのではないだろうか。新鮮に観ることが出来た。
監督、脚本は
「ヒメアノ~ル」(2015日)、
「愛しのアイリーン」(2018日)、
「空白」(2021日)の吉田恵輔。wikiによれば、氏は中学時代から30年以上ボクシングジムに通っているということである。なるほど、それを知ると本作のリアルなジムの風景や、ボクサーたちの厚みのある内面描写も頷ける。
例えば、瓜田は勝敗にこだわりがなく、他にやることがないからという理由だけでボクシングをやっている。完全にボクサーとしての人生を諦めた落伍者なのだが、後輩たちに対する指導は確かで、頼れる先輩としてジムの中では貴重な存在となっている。こうしたキャラクターは想像だけでは中々造形できないと思う。おそらく吉田監督の実体験に基づいて作られたキャラクターなのではないだろうか。
あるいは、試合後はアルコールを控えなければならない理由や、スパーリングの危険性等、何となくは理解していたが、本作ではそのあたりもプロの視点でしっかりと語られている。今作はボクシングを題材にした映画ではなく、ボクシングその物についての映画という感じがした。
物語は、瓜田以外に、小川と樽崎というボクサーが登場してくる。
小川は恋人との結婚を考えているが、パンチドランカーになったことで運命を暗転させていく。
樽崎はひ弱な青年から徐々一人前のプロボクサーに成長し、やがて先輩を追い越すほどの存在にまでなっていく。
この両者については、いわゆるボクシング映画ではよく見られるような型にはまったキャラで、どうしても既視感が拭えなかった。ただ、そうした”お約束”も含め、ボクシングに賭ける夫々の想いは十分面白く観れたし、自然とアツいものがこみ上げてきた。
また、劇中には随所にユーモアが散りばめられており、このあたりの捌き方も吉田監督は堂に入っている。
例えば、女の子にもてたいという樽崎の軽薄さは今時の若者という感じがしてクスリとさせられたし、アパートで練習していたら大家に怒鳴り込まれるといったエピソードも微笑ましく観れた。
一方、細かい点で幾つか気になることもあった。
一つは、楢崎のライバルとなる練習生に関するエピソードである。彼は映画中盤である悲劇に見舞われるのだが、この処理の仕方が存外安易に思えてならなかった。
もう一つはこのジムにおける体調管理はどうなっているのかという点である。パンチドランカーに苦しむ小川を、ジムの会長が全く気付かないというのはどう考えてもおかしい。いくら本人が隠していたとしても、毎日傍で見ていてるのだから何かしらの兆候は感じなかったのだろうか。
キャスト陣では、瓜田役の松山ケンイチ、小川役の東出昌大、楢崎役の柄本時生。夫々に熱演していると思った。役作りという点では、いずれ劣らぬものを見せてくれている。彼らの演技合戦は本作最大の見所と言える。
「ケイコ 目を澄ませて」(2022日)
ジャンル人間ドラマ・ジャンルスポーツ
(あらすじ) 下町の小さなボクシングジムで黙々とトレーニングに打ち込むケイコは生まれつき両耳が聞こえないというハンデを持ちながら、地道な努力の末にプロボクサーになった。初戦に勝利しプロとしての第一歩を踏み出すケイコだったが…。
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(レビュー) 実在の聴覚障害の女子プロボクサー小笠原恵子の自伝を元にしているということだが、エンドクレジットで本作はフィクションである旨が記される。原作は未読なので分からないが、調べてみると時代背景を含め色々と脚色されているそうである。ただ、そうした映画独自の改変はあれど、ケイコ自身の生き様や彼女が置かれている状況には色々と考えさせられるものがあるし、何よりハンデを負ったままリングに立つ彼女のひたむきな姿には素直に感動を覚えた。
本作は二つの観点から感想を述べてみたい。一つ目はボクシング映画としての観点、二つ目は聴覚障害者を描いた映画としての観点である。
まず、ボクシング映画として見た場合、「ロッキー」シリーズのようなファイトシーンは余りなく、どちらかと言うとケイコの内面に重きを置いたヒューマンドラマ的な作りになっている。ケイコはデビュー戦で初勝利をあげるが、自信を得るどころか逆に不安を感じてしまう。このまま本当にプロとしてやっていけるだろうか?経営が厳しいジムの重荷になっていないか?家族に心配をかけてないか?そうした葛藤がじっくりと描かれている。
考えてみれば、耳が聞こえないということはセコンドのアドバイスやレフェリーの言葉、ゴングの音すら認識でないわけで、そんな状況の中で戦うということは想像を絶するほどの孤独であろう。その苦悩は観ているこちらにも十分に伝わってきた。
また、ケイコの面倒を親身になって見る会長の存在も良かった。言葉を喋らず黙々と練習に励むケイコとは、あまりコミュニケーションを取らないが、一緒にトレーニングをする姿からは確かな絆が感じられた。まるで娘を見守る父親のような優しい眼差しが、会長の人となりをよく表している。個人的には「ミリオンダラー・ベイビー」(2004米)におけるクリント・イーストウッドとヒラリー・スワンクの関係を連想した。
第二の観点は、ケイコの聴覚障害という設定から見る本作の社会派的な意義である。
ケイコの戦いはリング上だけではない。日常の至る場面で彼女は自身のハンデを思い知らされる。例えば、アルバイト先の同僚や同居している弟の恋人は手話ができない。そのため彼等とはほとんどコミュニケーションを取らない。コンビニのレジの店員の言葉も聞こえないので、会計の時には気まずい空気になってしまう。すぐ近くにいるのに意思疎通が取れないということは、普通に考えてかなりのストレスだろう。この映画はそんな聴覚障害者の苦労を、日常の一コマの中に上手く落とし込んでいると思った。
偶然かもしれないが、最近は手話をフォーチャーした映画が多くなってきたような気がする。昨年観た
「ドライブ・マイ・カー」(2021日)、今年のアカデミー賞で作品賞を受賞した
「コーダ あいのうた」(2021米カナダ仏)、先頃観た
「LOVE LIFE」(2022日)等。立て続けに手話が出てくる映画を観たので、余計にそう思うのかもしれない。最近のLGBTQや多様性にも言えることだが、こうした流れは昨今の潮流なのかもしれない。
監督、脚本は三宅唱。自分は初期作「PlayBack」(2012日)しか観たことがないのだが、その時には少しシュールで独特な演出をする監督だなという印象だった。しかし、今作では現実感を重視した演出が貫かれており、その時の印象とは全く異なり驚かされた。映像もザラついた16ミリ特有の質感で、シーンに生々しい臨場感を生んでいる。デジタルビデオ全盛の現在では余り味わえない映画体験が逆に新鮮だった。
また、縄跳びの音やサンドバッグを叩く音、電車や工事の音といったサウンド面の演出にも監督のこだわりが感じられた。
キャストでは、何と言ってもケイコを演じた岸井ゆきのに尽きると思う。セリフがない難役を眼差しのみで表現しきった所が見事だった。また、冒頭のロッカールームのシーンを見れば分かるが、肉体改造も抜かりはなく、役所としての説得力も十分である。
特に印象深かったのは、試合中に発する彼女の叫び声だった。もちろんこれは対戦相手のダーティーな戦いぶりに対する怒りであることは明白なのだが、自分はそれだけではないように思う。何をやっても思うようにいかない厳しい現実に対する憤り。あるいは、ふがいない自分自身に対する怒りにも聞こえた。正に魂を揺さぶる叫びである。
「THE FIRST SLAM DUNK」(2022日)
ジャンルアニメ・ジャンルスポーツ・ジャンル青春ドラマ
(あらすじ) 湘北高校バスケ部はインターハイで強豪・山王工業とぶつかる。湘北のポイントガード宮城リョータにとって、この試合は幼い頃から思い描いていた因縁の対戦であった。試合は白熱した展開を見せながら進んでいくのだが…。
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(レビュー) 1990年代に少年ジャンプで連載されたバスケマンガ「SLAM DUNK」の劇場用アニメ。連載当時はテレビアニメ化もされ一世を風靡した人気作である。今回は原作者である井上雄彦氏が自ら監督、脚本を務めて製作した作品である。
自分は原作とテレビアニメを見ていたこともあり、作品に対する思い入れはそれなりに強い。だからこそ、なぜ今になって劇場用アニメ化?畑違いの井上雄彦にアニメ映画の監督が務まるのか?そうした心配があった。
しかし、結論から言うと、原作でもテレビアニメでもない、新しい「SLAM DUNK」を見せてくれたという意味で大変満足することが出来た。もちろん原作もテレビアニメ版も好きなのであるが、それとは違う新鮮な面白さが感じられた。リメイクとは懐古主義に堕してしまってはダメだと思う。今の観客に向けて作るという所に大きな意義があり、おそらく井上雄彦自身もそういう意図で本作の製作に臨んだのではないだろうか。
物語は、原作でも大きな見せ場となった山王戦をメインに展開される。その中で湘北のメンバーそれぞれに焦点を当てたドラマが語られていく。この構成は試合の緊張感やスピード感が度々寸断されるというデメリットはあるが、個々のキャラを紹介する前段のドラマを手際よく処理できるというメリットもある。功罪あると思うが、この構成自体は上手いやり方だと思った。原作を知っている人にとっては様々な思い出が蘇るし、そうでない「SLAM DUNK」初見の人でも退屈することなくダイレクトに作品に入り込めると思う。
その中でメインとなるのが宮城リョータのドラマである。原作では桜木花道が主役なので、リョータをメインに据えたことに正直なところ驚きがあった。しかし、また違った角度からこの世界観を楽しむことが出来たことは新鮮であったし、何よりリョータが辿ってきた過去が大変ドラマチックなもので、メインのドラマたるに十分の魅力が詰まっている。後で知ったが、彼に関する読み切りマンガがあったらしく、それをベースに敷いているということだ。
さて、公開前に短い予告スポットを小出しにしていた本作であるが、それを見た時点で映像が明らかに3Dアニメと丸分かりで、テレビアニメ版に慣れ親しんだ自分にとっては正直かなりの不安を感じていた。最も違和感を覚えたのは背景のモブなのだが、しかし大画面で見るとそこまでの不自然さは感じなかった。
また、原作マンガを再現したかのような2D的な肌触りは、3D特有の無機質さを打ち消し、なんならマンガの絵に近い感じすらして感動を覚えた。声や音楽、演出の功績も大きい。これらが井上雄彦の”絵”に加わることで、見事にアニメーションならではの躍動感が生まれている。
キャスト陣は、テレビアニメ版から一新されているが、同じ世界観でも別角度から捉えた本作にあっては、それもまた良し。むしろ同じではテレビアニメ版から離れられなくなってしまうので、これで正解だったように思う。
少し気になったのはエピローグだろうか。おそらくここに持って行くために途中で山王のエピソードを入れたのだろう。ファンサービスとしてはいいかもしれないが、個人的には少し戸惑いを覚えた。もっとすっきりとした構成、終わり方でも良かったような気がする。
「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」(2017米)
ジャンル人間ドラマ・ジャンルスポーツ
(あらすじ) トーニャ・ハーディングは幼い頃から、母ラヴォナの元でスケート選手になるべく毎日厳しい練習をさせられていた。やがてその才能が開花すると、瞬く間に世間の注目の的となっていく。そしてジェフという青年に出会い恋に落ちるのだが…。
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(レビュー) オリンピックにも出場したことがあるフィギュアスケーター、トーニャ・ハーディングの半生を綴った伝記映画。
彼女は1994年のリレハンメル・オリンピックに出場する際、当時ライバルだったナンシー・ケリガンに対して妨害工作をしたという事で起訴され、世界的に大きなニュースになった。その真相に迫る内容は興味深く観れた。
また、それ以外に母親との確執、夫ジェフからのDV行為といったプライベートな問題も赤裸々に描かれている。誤解を恐れずに言うなら、ある種ゴシップネタ的な楽しみ方ができる作品だと思う。
ただ、一つ気になったのは、果たしてこの映画で描かれていることはどこまで真実なのだろうか?という点である。普通この手の伝記映画の場合、たいてい関係者の手記や原作小説が存在するものだが、本作にはそうした元となる素材がクレジットされていない。おそらくだが、関係者の証言などを元にストーリーを作っていったのだろうが、その検証はどこまで徹底されているのだろうか。ある程度娯楽としての面白さが上積みされているような気もしたが…。
実際、映画を観てみると予想以上にユーモラスな味付けが施されている。トーニャのバックストーリーは悲惨極まりなく、件の妨害工作も大変陰惨な事件だが、そうしたシリアスさを感じさせないくらいに周囲の関係者は能天気だ。
監督は
「ラースと、その彼女」(2007米)のクレイグ・ギルスピー。「ラースと~」はリアルドールを恋人だと思い込んだ青年をユーモラスに描いた作品だったが、本作でもそのタッチは継承されている。毒のあるドラマをコミカルに仕上げることで大変取っつきやすい作品に仕上げている。軽快な演出とポップな映像センスは「ラースと~」の頃に比べると随分と垢抜けた印象を持った。
また、モキュメンタリー風に登場キャラのインタビューシーンを挿入するのも中々凝った構成で面白かった。ただ、これも本人でない以上、どこまで信用して観ていいのかは判断しかねる所である。
キャストでは、トーニャを演じたマーゴット・ロビーの熱演が素晴らしかった。後から知ったが、彼女は元々アイスホッケーの経験があるらしく、本作でもその経験を活かして華麗なスケーティングを披露している。もちろんCGや吹替えでカバーしている部分もあろうが、それを差し引いても見事な身体能力の高さを発揮していて感心させられた。
中でも、オリンピックの大舞台に立つ直前、鏡の前で泣きながら無理やり笑顔を作るシーンは印象に残った。これまでの道のりを思い出して感極まったのか、それとも夢にまで見た舞台を前にして感情が高ぶったのか。その真意は色々と想像できるが、自分は何だかその笑顔を見てとても憐れに感じた。