「シン・仮面ライダー」(2023日)
ジャンルアクション・ジャンル特撮・ジャンルSF
(あらすじ) ショッカーのアジトから脱出した本郷猛と緑川ルリ子はクモオーグの攻撃により窮地に追い込まれていた。本郷は本能的にバッタオーグへと変身し、その危機を回避する。ところが、戦いの最中で恩師・緑川弘を目の前で殺されてしまう。父を失ったルリ子はショッカーとの戦いに執念を燃やし、本郷もそれに協力するようになっていく。
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(レビュー) 1971年にテレビ放送された特撮作品「仮面ライダー」を、
「シン・ゴジラ」(2016日)、
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(2020日)の庵野秀明が50年ぶりにリブートしたSFアクション作品。
庵野監督にとって念願の企画だったらしく、その思い入れは十分に伝わってくる作品だった。原作に対するリスペクト、マニアであればクスリとできるような小ネタがふんだんに詰め込まれていて、旧作ファンなら十分に楽しめるのではないだろうか。
自分も後追いではあるがオリジナルのテレビ版を見ているし、石ノ森章太郎氏の原作コミックスを読んだことがあるので色々な発見があって面白く観ることができた。
但し、オリジナル版や原作マンガを知らない仮面ライダー初心者が観た場合はどう映るだろうか?大変入り込みづらい作品のように思う。
映画は何の説明もなくいきなりカーチェイス・シーンから始まる。確かにテンション高めでワクワクさせられるが、同時にこの世界観を全く知らない人にとっては唐突過ぎて付いていけないのではないだろうか。
世界観や人物の説明も意味深な固有名詞が乱発するので何が何やらである。庵野作品ではお馴染みの例のアレなのだが、その耐性がない人にとっては難解に思えるかもしれない。
物語自体は1本芯が通っているのでそれほど難しいわけではない。ただ、枝葉の部分がどれもこれも中途半端なのが問題で、ネタとしては面白いものの、それ以上でもそれ以下でもないというのが困りものである。
総じて、”遊び心”に溢れたオマージュ作として良く出来た映画という印象である。但し、良くも悪くも庵野監督の思い入れが強すぎて、かなり歪な作品になってしまった感は拭えない。
もう一つ、見せ場となるアクションシーンについても書いておきたい。今回はPG12のレーティングなので、多少の流血シーンが出てくる。旧作は子供向けらしからぬ禍々しいトーンが一つの魅力であったので、そのあたりを意識してのことだろう。そういう意味では、原作の良い所を取り入れてると思った。
ただ、「シン・ゴジラ」同様、iPhoneやGoProを使って庵野監督本人が撮影を務めており、妙に凝ったアングルや早いカット割りが目につく。暗い場所でのアクションシーンになると何をやっているのかサッパリ分からないという始末で、もう少し見やすくしてほしかった。
また、CGアクションの出来もやや物足りず、個人的には
「シン・ウルトラマン」(2022日)の方がよく出来ていると感じてしまった。
キャスト陣の演技は押しなべてクールあるいは道化的な演技が目につき余り面白みを感じなかったのだが、そんな中、ルリ子を演じた浜辺美波だけは後半から良くなっていく。主人公は本郷猛だが、一方で本作はルリ子が自らの運命に立ち向かっていくドラマにもなっており、本郷との関係性を含め、彼女の心情変化に見応えを感じた。
「シン・ウルトラマン」(2022日)
ジャンルSF・ジャンル特撮・ジャンルアクション
(あらすじ) 巨大生物・禍威獣(カイジュウ)の出現に悩まされた日本政府は、禍威獣対策の専門チーム禍特対(カトクタイ)を設立。班長の田村を中心に神永、滝、船縁らが対応に当たっていた。ある日、禍威獣の危機がせまる中、空から銀色の巨人が現れて救われる。巨人の調査が始まる中、新たに禍特対に着任した分析官の浅見は神永とコンビを組むことになるのだが…。
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(レビュー) 現在もシリーズが続いている特撮ヒーロー「ウルトラマン」。その第1作目をリメイクしたSFアクション作品。
庵野秀明が総監修、脚本を担当し、樋口真嗣が監督を務めた作品である。
オリジナル版から設定が色々変わっているが、基本的な物語は前作を踏襲した形で展開されいている。人によっては賛否あるかもしれないが、個人的にはオリジナル版に対するリスペクトが感じられたので特に違和感は持たなかった。むしろ庵野秀明のウルトラマン愛が全開で、どこか愛おしさも覚えたくらいである。懐かしいBGMやSEにも心躍らされた。
ただ、内容を詰め込み過ぎたせいで、若干ドラマが弱くなってしまった感は否めない。ウルトラマンこと神永と禍特対メンバー、特に浅見との関係性は本ドラマの大きな見どころであるが、いかんせん次々と現れる禍威獣や外星人との戦いにストーリーが追われてしまい人物描写がなおざりになってしまった。肝心の神永(ウルトラマン)と浅見の関係を深く掘り下げることが出来ず、本来であればそこから生まれるはずの神永(ウルトラマン)の葛藤もクライマックスを盛り上げるまでに至っていない。
また、禍特対のメンバーは夫々に個性的に確立されていたが、果たして神永はどうだったか?と言うと、最速ウルトラマンに憑依されてしまうので掴み所のないキャラクターとなってしまった。彼らの間で果たして本当に同僚以上の仲間意識はあったのか?その絆が弱く感じられたのは残念である。
一方、映像的な見せ場には事欠かない作品だと思う。冒頭から驚かされる幕開けだったが、次々と登場する特撮シーンのオンパレードに自然と胸躍らされた。以後もウルトラマンと禍威獣の戦いは続き、そのどれもがオリジナル版を意識しつつ確実に現代風にアップグレードした迫力あるシーンになっている。
パースを強調した構図や物越しのショットなど、いわゆる”実相寺アングル”の多用は流石にどうかと思ったが、これもまた庵野氏のカラーだろう。彼が自主制作した「帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令」でもそうだった。彼の実相寺昭雄監督に対する敬愛が感じられた。
ここまで書き連ねてみると、まるでオリジナル版を観ていなければ楽しめない作品のように思えるかもしれないが、決してそういうわけでもない。もちろん知っていれば色々とマニアックに楽しめる作品ではある。しかし、単純に巨大ヒーロー映画として十分に完成された作品になっているので、一見さんでも楽しめる作品になっていると思う。
尚、庵野秀明と樋口真嗣のコンビと言うと、どうしても
「シン・ゴジラ」(2016日)を連想してしまうが、作りからして完全に違うので比較するのはあまり意味がないような気がする。
「シン・ゴジラ」はゴジラ第1作を元にその概念を現代的に再解釈した映画だったのに対し、こちらはウルトラマンという概念をそのまま引き継いだ、昔ながらの勧善懲悪な物語である。言い方を変えれば、元の料理の美味しい所をかいつまんで創り上げたサービス精神旺盛な寄せ鍋風な味付けになっており、ストイックに素材の味を煮詰めていった「シン・ゴジラ」とはまったく異なる作品のように思う。
こちらは「大巨獣ガッパ」の元ネタとして知られている。
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「怪獣ゴルゴ」(1959英)
ジャンル特撮・ジャンルSF・ジャンルアクション
(あらすじ) アイルランドの沖合いで海底火山が爆発する。付近を航行中だった海難救助船の船長ジョーは、船の修理のため近くの島に寄港した。ジョーたちを出迎えたのは考古学者を名乗る不審な男だった。その後、港に死体が上がる。彼の顔は恐怖に引きつっていた。ジョーは相棒サムと共に海底を調査するのだが‥。
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(レビュー) 「原子怪獣現る」(1953米)のユージン・ローリーが監督した怪獣映画。
「原子怪獣現る」は日本の「ゴジラ」(1954日)の元ネタとして知られる作品だが、こちらは日活が製作した「大巨獣ガッパ」(1967日)の元ネタとして有名な作品である。
どのあたりが似ているのかというと、怪獣ゴルゴの親子が出てきて人間と戦う‥というシチュエーションが同じである。2作続けてパクられてしまったユージン・ローリーは一体どんな思いだったのだろうか。‥とは言っても世界的に有名な「ゴジラ」はともかく、日活唯一の怪獣映画「大巨獣ガッパ」の存在をどこまで知っていたかは分からないが‥。
もっとも、この「ゴルゴ」も、前半のストーリーは明らかに怪獣映画の元祖「キングコング」(1933米)をベースに敷いていることは間違いない。
ジョーたちは海底から現れたゴルゴを捕獲してサーカスに売り飛ばそうとロンドンに連れて帰る。そこでゴルゴが暴れて町が大パニックに陥る‥という筋立ては、そのまま「キングコング」のストーリーである。そこに怪獣親子の”絆”というエッセンスをまぶすことで本作はオリジナルティが確立されているわけだ。
特撮的な見所としては、海底に不気味に漂うゴルゴの影だろうか‥。何とも生々しい質感にゾッとさせられた。
また、このゴルゴがトラックに乗せられてロンドンの街中を運ばれていくシーンがあるが、これもインパクトがあった。実物大のスケールモデルが使用されているので中々の迫力が感じられる。
それと、今作は海外としては珍しい着ぐるみの怪獣である。これに関してはむしろ「ゴジラ」から影響を受けているという見方も出来る。「原子怪獣現る」のようなコマ撮りアニメに比べたら時間も予算も少なくて済むので、大分安く作ることが出来る。
尚、ゴルゴのデザインは全体的にはオーソドックスな形状で、取り立てて新鮮と言うほどではない。ただ、耳が非常にユニークで、これはおそらく当時のモンスター映画に登場する半魚人から影響を受けたものだろう。水中に生息するので、理にかなったデザインである。
「ゴジラ」の元ネタと言われている作品。
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「原子怪獣現る」(1953米)
ジャンル特撮・ジャンルSF・ジャンルアクション
(あらすじ) 米軍が北極圏の水爆実験の最中に謎の巨大生物を発見する。第一発見者であるトム・ネスピット教授は負傷しニューヨークの病院に搬送された。しかし、彼がいくら怪獣を見たと訴えても誰も信用しなかった。その頃、海洋を航行中の漁船が巨大生物に襲われるという事件が発生する。この事件を知った教授は被害者の元を訪ねるのだが‥。
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(レビュー) 太古の恐竜が水爆実験によって地上に蘇るパニック映画。
怪獣映画好きの間では有名な話だが、本作は「ゴジラ」(1954日)の元ネタではないかと言われている。見てみると確かにそう思える節がある。例えば、怪獣が水爆実験で生まれたことや、最新鋭の秘密兵器で倒される結末などは明らかに「ゴジラ」に通じるものである。
実際に本作が日本で公開されたのは1954年なので「ゴジラ」と同じ年である。しかし、アメリカでは1953年に公開されているので、もしかしたら東宝の製作サイドが何らかの形で、この設定なり、プロットなりをどこかで目にしたのかもしれない。本当の所は分からないが、それくらいこの両作品はよく似ている。
もっとも、こと特撮に関して言えば、その手法は大きく異なる。ご存知のように日本の「ゴジラ」は完全に着ぐるみの怪獣である。それに対して、こちらの怪獣はコマ撮りアニメで表現されている。
そのアニメーションを担当したのが、言わずと知れたダイナメーションの大家レイ・ハリーハウゼンである。素朴ながら活き活きと表現された怪獣の動きは正にハリーハウゼンといった感じで、現在のCG全盛の映像とは一味違う味わいを持っている。本作は彼の名を一躍有名にしたことでも知られている。
また、本作の原作はレイ・ブラッドベリの短編「霧笛」である。但し、原作とは言っても、映画の中には原作は一部分しか出てこない。怪獣が灯台を破壊するシーンだけである。それ以外は、ほとんど映画独自のストーリーとなっている。
そして、このレイ・ハリーハウゼンとレイ・ブラッドベリは高校時代からの親友という縁を持っている。本作はそんな二人の”レイ”が組んだ最初にして最後の作品ということでも知られている。
監督はこの手の怪獣映画では職人的な手腕を発揮するユージン・ローリー。演出は安穏としているが、ハリーハウゼンの特撮が活躍を見せるクライマックス・シーンは中々魅せる。ただ、突っ込み所満載な低予算映画なので、その辺はご容赦を‥。
ストーリーは怪獣映画の王道を行くような展開で、地味ながらよく出来ていると思った。ヒロインと主人公の絡みもドラマの進展に無理なく詰め込まれていて中々良い。
キャストでは、西部劇ではお馴染みのリー・ヴァン・クリーフがチョイ役で登場してくる。後年の渋い風貌からは想像もできない初々しさだが、ラストで美味しい所を持って行く。これほどの大役を任されるとは、やはりこの頃から期待されていたのだろう。
日米二大怪獣の対決や如何に!?
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「キングコング対ゴジラ」(1962日)
ジャンル特撮・ジャンルSF・ジャンルアクション
(あらすじ) TV局のスタッフ桜井は、視聴率アップのためにスポンサーであるパシフィック製薬の部長から“南海の巨大魔神”を探す探検番組の企画を言い渡される。早速、桜井は相棒・藤田を連れ立って現地に向かった。彼らはそこで原住民から“魔神キングコング”の存在を知らされる。一方、北極海ではアメリカの原潜が氷山の眠りから覚めたゴジラを発見する。ゴジラは日本にめがけて進行した。その頃、南島の桜井たちはキングコングを捕獲して日本へ連れ帰ろうと算段していた。
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(レビュー) 東宝創立30周年記念作品として製作されたゴジラシリーズ第3弾。
今回の作品は、アメリカ映画の怪獣王”キングコング”と日本の怪獣王”ゴジラ”が戦ったらどちらが強いか?というコンセプトから始まった企画モノ的な映画である。双方ともに超有名な怪獣である。当時の子供たちはさぞかしワクワクして見たのではないだろうか?
とはいえ、怪獣同士の戦いは確かに大きな見所なのだが、個人的には前半の人間ドラマ。とりわけパシフィック製薬の社長のコミカルなキャラクターが大変気に入った。
演じるのは有島一郎。軽妙な演技は流石にこなれていて、一人で”場”を賑わすほどの存在感を見せつけている。視聴率のことしか頭にない典型的な会社人間は普通であれば憎々しくなるものだが、有島が演じるとどこかチャーミングに見えるから不思議である。これぞ有島一郎の”味”であろう。
また、桜井と妹、妹の婚約者が同じ団地の隣同士に住むという設定も面白かった。この設定はストーリーを軽快に勧めるのに一役買っている。また、三者の軽妙な会話も洒落てて良かった。
全体的にストーリーはテンポ良く進むので、主役である怪獣不在でも十分面白い。桜井がドラムを叩いて登場したり、ハンカチで口紅を拭くなどの演出もスマートで良かった。
ただ、その一方でご都合主義な展開もあり、特に怪獣対決が主となる後半でそれが目立つ。
例えば、南洋の孤島に日本のラジオの電波が届くか?といった突っ込みや、ゴジラの上陸で避難した桜井の妹を婚約者が追いかけるのは物理的に考えて無理ではないか?といったシナリオ上の綻びがある。かなり強引なこじつけに感じられた。
特撮的な見所としては、当然クライマックスの二大怪獣の戦いになるが、それ以外にも本物のタコを使った特撮シーンも印象深い。当然合成となるわけだが、うねうねと動く触手がかなり気持ち悪かった。
また、全体のユーモアなトーンを意識してか、怪獣対決の方にもそういった演出が施されている。ゴジラとキングコングは二度戦うのだが、その第1戦。ゴジラに敗北したコングが頭をかいて逃げ去る姿が妙に可笑しかった。岩陰に隠れるコングも何だか間抜けで可愛らしかったし、今回の映画は純和製なので全体的にゴジラ優勢といった着色になっている。
尚、「キングコング」の名称使用料として東宝はアメリカRKO社に対して5年契約8000万円を支払った。当時としては破格の金額だったが、映画は大ヒットを飛ばし、この年の年間配収第4位、3億5千万円を稼ぎだしている。このように十分の利益を上げることが出来たのだから、この企画は大成功と言っていいだろう。
また、これに味を占めた東宝は、RKO社との契約が切れる直前に第2弾として「キングコングの逆襲」(1967日)を製作した。そちらはコングが完全に正義のヒーローであり、敵役としてゴリラ型の巨大ロボット”メカニコング”が登場してくる。このメカニコングのデザインは中々味わい深いので、興味のある方はぜひそちらもご覧いただきたい。