今年のアカデミー賞は
「エブエブ」の圧勝という感じで終わりました。こういうのは流れというのがあって、賞レース序盤こそ
「イニシェリン島の精霊」が先行していた印象でしたが、後半からの「エブエブ」の巻き返しが凄まじかったです。
また、一昔前ではこうしたジャンル映画が受賞するというのも考えられない事でした。そういう意味ではアカデミー賞も大分変って来たという感じがします。
さて、個人的に昨年観たベスト10を発表したいと思います。昨年観た映画は40本。コロナ渦が日常化し映画館に行く機会もいつもの頻度に戻った1年でした。そんな中でのベスト10。個人的には中々の当たり年だったと言えます。
1.
戦争と女の顔
2.
ベイビー・ブローカー
3.
コーダ あいのうた
4.
RRR
5.
トップガン マーヴェリック
6.
ケイコ 目を澄ませて
7.
さがす
8.
パワー・オブ・ザ・ドッグ
9.
英雄の証明
10.
フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
作品賞 「戦争と女の顔」
監督賞 S・S・ラージャマウリ(「RRR」)
脚本賞 是枝裕和(「ベイビー・ブローカー」)
主演男優賞 ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(「
ニトラム NITRAM」)
主演女優賞 ヴィクトリア・ミロシニチェンコ、ヴェシリサ・ペレリギナ(「戦争と女の顔」)
ジャンル俺アカデミー賞
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1年の総決算、恒例の俺デミー賞を発表をしたいと思います。
一昨年はパンデミックの影響で余り映画館に行けず、この俺デミー賞もベスト10を敢えてつけませんでしたが、今回は久々にベスト10の発表と個別賞の発表をしたいと思います。
とはいっても、昨年も前半は余り映画館に行けず、トータルで26本の鑑賞に留まってしまいました。後半から少しずつ足を運べるようになったとはいえ、結果的には少し名残惜しい1年となってしまいました。
尚、本家アカデミー賞は色々なハプニングがありながらも無事開催され、
「コーダ あいのうた」(2021米仏カナダ)が作品賞、脚色賞、助演男優賞を受賞。
「DUNE 砂の惑星」(2021米)が最多6部門受賞。そして日本映画としては久しぶりに
「ドライブ・マイ・カー」(2021日)が国際長編映画賞を受賞しました。日本人としては嬉しい限りです。
1.異端の鳥
2.ファーザー
3.プロミシング・ヤング・ウーマン
4.由宇子の天秤
5.ドライブ・マイ・カー
6.MONOS 猿と呼ばれし者たち
7.ライトハウス
8.ミナリ
9.ノマドランド
10.アイダよ、何処へ?
作品賞 「異端の鳥」
監督賞 ヴァーツラフ・マルホウル(「異端の鳥」)
脚本賞 クリストファー・ハンプトン、フロリアン・ゼレール(「ファーザー」)
主演男優賞 アンソニー・ホプキンス(「ファーザー」)
主演女優賞 フランシス・マクドーマンド(「ノマドランド」)
ジャンル俺アカデミー賞
「ボーイフレンド」(1971英)
ジャンル音楽・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 1920年代のイギリスの場末の劇場。雑用ばかりさせられている引っ込み思案なポリーは、主演女優が怪我をして公演に出られないため代役で出演することになる。戸惑いながらもステージに立つポリーだったが、そこにはハリウッドの一流監督が見学に来ていて…。
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(レビュー) バックステージの雑用係の女性が夢と希望を求めて奮闘する姿を軽快な音楽とダンスで綴ったミュージカル映画。
監督、脚本は鬼才ケン・ラッセル。キッチュなアールデコ調のメイクと衣装、絢爛豪華な舞台美術等。独特な見世物小屋観が浩々と画面に展開されており、まさしくケン・ラッセルにしか作りだせないミュージカル劇になっている。
ただ、巨大なレコード盤のセット上の群舞など、華やかりしMGM的ミュージカルを意識したような演出も散見される。本来のケン・ラッセルらしい毒々しさはかなり薄みで、そういう意味では他の作品に比べると随分と取っつきやすくなっている。
一方、物語自体はステージ上の演目と舞台裏を交互に描くリアルタイムドラマで、存外シンプルである。女優志望のポリーの奮闘を、周囲の人間模様を絡めながら描くというバックステージの物語は適度にユーモアを交えながら肩の力を抜いて観ることができた。
しかし、見所はやはりステージ上でのパフォーマンスとなろう。
メイン所のキャストはイギリスの舞台で活躍している俳優も含まれているそうなので、歌もダンスも見応えとしては十分である。特に、背の高いタップダンサーのパフォーマンスが印象に残った。
ポリー役はモデル出身のツィッギー。本作が映画初主演ということで、どうなるかと思ったが中々どうして、健闘している。さすがに周囲の舞台俳優陣と比較してしまうと厳しいものがあるが、逆に新人女優らしい初々しさがあって良かったと思う。
ただ、60年代後半の彼女のスチールなどを見ると、本作よりもずっと若々しく魅力的に撮られている。時代の流れもあるので仕方ないかもしれないが、それらと比べると本作の彼女は少し老けてるように見えた。本来の魅力を引き出せなかったことは少し悔やまれる。
尚、本作は劇場公開時は110分だったが、その後135分の完全版がリリースされた。今回は完全版での鑑賞である。
全米アカデミー賞が決定しました。
去年は新型コロナの影響で映画産業に大打撃の一年となってしまいました。
そんな状況下での選考ということで、本来あるべき姿とは程遠いものだったかもしれませんが、少なくとも選出された作品はいずれも素晴らしい映画だと思っています。
ここ最近は配信会社製作による作品が強まっており、それがこのコロナ渦によって更に大きなトレンドになってきた感がします。
自分も去年は余り映画館に行けず、劇場で観たのはたったの15本。例年の半分以下でした。
そんな中で俺デミー賞を選ぶというのもはばかられるのですが、良い映画は良いときちんと評価してあげたい…という思いもあります。
今回は敢えて順位を付けず、10本を選ぶだけにしてみました。
いずれ劣らぬ傑作だと思います。
ジョジョ・ラビットパラサイト 半地下の家族この世界の(さらにいくつもの)片隅に1917 命をかけた伝令レ・ミゼラブルミッドサマー劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデンスパイの妻<劇場版>Mankマンク37セカンズ以上となります。
今年も依然としてコロナ渦が続いており急激な状況の改善は望むべくもなく、やはり劇場へ足を運ぶ機会も少なくなりそうです。それでも幾つか気になっている作品もありますし、感染対策をしっかりしてなるべくたくさん駆け付けたいですね。
ジャンル俺アカデミー賞
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「炎と女」(1967日)
ジャンルサスペンス・ジャンル社会派
(あらすじ) 伊吹真五と立子の間には、一歳七ヶ月になるひとり息子、鷹士がいた。しかし鷹士は人工授精によって生まれた子であり、真五の実の子ではなかった。伊吹家には人工授精の手術を担当した藤木田、そして精子の提供者である坂口と妻シナが出入りしていた。ある日、立子が目を離したすきに鷹士が行方不明になってしまう。
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(レビュー) 人工授精を巡って二組の夫婦が愛憎渦巻く対立を深めていく社会派ドラマ。
監督、脚本は松竹ヌーヴェルヴァーグの旗手、吉田喜重。共同脚本を山田正弘、田村孟が務めている。
山田正弘はテレビのウルトラマンシリーズのメインライターとして活躍した人物であり少々意外であった。一方の田村孟は同じく松竹ヌーヴェルヴァーグの旗手として活躍した大島渚の作品を数多く手掛けており、今回の仕事はその流れからだろうと想像できる。もっとも、吉田喜重とのコンビは本作1本のみというのが意外であるが…。
例によって、吉田喜重らしい凝った映像が至る所で見られ、ファンであれば間違いなく楽しめる作品になっている。逆に、観念的でシュールな演出に耐性のない一般の観客にとっては実に独りよがりな作品…と一蹴されそうである。
個人的にはこの吉田ワールドは割と好きなので楽しく観ることができた。
また、物語も今回は難解な所はなく、非常に明快に展開されているので楽しめた。
真五と立子、坂口とシナ。二組の夫婦は人工授精によって生まれた鷹士を巡って血縁的にねじれた関係にある。鷹士の本当の父親は精子の提供者である坂口であり、真五ではないのだ。
そのため、立子は人工授精の子供、鷹士に素直に母としての愛情を注げないでいる。真五は精子の提供者である坂口に”男”として少なからず嫉妬の感情を抱いている。坂口は妻のシナを抱けず、そのせいで子供ができないことに負い目のようなものを感じてる。そして、シナは子供を産めない体にコンプレックスを抱いている。
このように4人は、それぞれにわだかまりを抱えているのだが、表向きはそんなことを感じさせないほどフランクに付き合っている。傍から見るとこれが存外恐ろしいわけだが、しかしある事件をきっかけに両夫婦の関係は一気に険悪になってしまう。シナが、鷹士を自分の息子だと言って連れ去ってしまうのである。
果たして4人の関係はどうなってしまうのか?そこが本ドラマのポイントとなる。
吉田監督のシュールな演出は今回も健在である。
まず、何と言っても立子たちが住むモダンな邸宅のデザインが印象的である。幾何学的な画面構成は吉田作品の一つの特徴であるが、それを象徴するかのように存在している。
そして、極端なパースの画面構図が登場人物たちを徹底的にフレームの枠の中に押し込み、彼らの圧迫感と緊迫感を見事に表現している。
ロケーションも素晴らしい。高くそびえたつ林道、廃鉄橋等、よくぞこんな場所を見つけてきたと感心するばかりである。
女性のスキャットを前面に出した音楽もシュールな世界観にほどよくマッチしていた。
キャスト陣では立子役の岡田茉莉子の浮遊感をもたらした演技が喜重ワールドを下支えしている。やはり吉田喜重のミューズは彼女以外にはないと再確認させられた。
尚、人工授精という問題をこういう形で取り上げたことは、製作された時代を考えればかなり先進的だったのではないかと思う。そういう意味においては先見性を持った作品とも言える。