レイア将軍率いるレジスタンスはファースト・オーダーの猛攻に晒され、基地を手放して決死の脱出を図る。その頃、レイは伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーを連れ戻そうと説得を試みるため惑星オクトーへたどり着いた。レイの要請を頑なに拒むルークだったが…。
(レビュー) 「最後のジェダイ」という何とも意味ありげなサブタイトルに惹きつけられる本作は、監督がJ・J・エイブラムスから
「LOOPER/ルーパー」(2012米)のライアン・ジョンソンにバトンタッチされ、前作とは少し傾向の違う作品となっている。スター・ウォーズらしいユーモアを残しているのは前作同様だが、主要キャラのカイロ・レンとルークの葛藤に焦点を当てたシリアスな内容はこれまで以上に内省的な作品となっている。
J・Jは製作総指揮に名は残しているものの、脚本はエピソード5~7まで担当したL・カスダンではなくジョンソン監督が単独で執筆。今回は完全にライアン・ジョンソンの映画になっている。
前作は古いファンの期待に応えるサービス精神を配しながら、新シリーズの柱となる新キャラクターの誕生にワクワクさせられた。色々と不満に思う所もあったが、「スタートレック」をリイマジネーションさせたJ・J・エイブラムスのバランス感覚の良さはとりあえず良い方向に働いていたように思う。
そこから今回はライアン・ジョンソンに変わってどうなるか?という所が注目である。自分は前作の「LOOPER/ルーパー」を気に入っていることもあり、かなり期待して観た。
結論から言うと、結末を含め全体的な作りは決して悪くはないと思った。第一にジェダイの長い歴史に一つのケジメを付けたことは大英断である。これだけ挑戦的な内容を作り上げたジョンソン監督。そして、それを許可したディズニーの勇気は称賛したい。
ただ、旧世代のジェダイ、つまりルークのドラマをメインに据えてしまった一方で新しいキャラクターたちの物語は蚊帳の外に置かれてしまい、せっかく前作で素晴らしいスタートを切ったドラマが余り進展しなかったのは残念である。そもそも、肝心のレイのドラマがなおざりになってしまっているのがいただけない。彼ら新しい世代のドラマをもっと見せて欲しかった‥というのが正直な感想である。
逆に、フィンのドラマは新キャラ・ローズの登場でロマンス方向へ流れていくが、果たして全体のドラマにどこまで必要だったのか?同様に、ホルドー中将、DJの活躍も必ずしも必要だったとは言い難い。
もっとも、前作のレビューでも書いたが、このあたりは本作単品で評価するのは難しい所がある。もしかしたら、それらが後に繋がる伏線であったり、続編に大きく関わる設定になったりするからだ。今回放りっぱなしになってしまったDJが次作で再登場することだってありうるかもしれない。この手の作品の評価は、どうしてもシリーズ物特有の難しさがある。
一方、脚本上で幾つか強引な個所、粗が目立つのも残念だった。
例えば、途中で退場したかに見えたレイアの復活はさすがに萎えてしまった。旧作ファンに必要以上に気を使ったのだろうか?だとしたらそれは誤りのように思う。本来であれば、世代交代が一つのテーマとなっているシリーズなのであるから、あの場面では復活すべきではなかったように思う。
他にも幾つか突っ込み所はある。先述したように、レイの描写がなおざりになっており、彼女がドラマの裏でどのような行動をとっていたのかが観ている側に全然分からないのは問題だ。
例えば、ファースト・オーダーに捕った窮地から彼女がどうやって脱出できたのか?あるいはクライマックスで彼女が搭乗したファルコン号はどこへ行っていたのか?全く描かれていない。曲がりなりにも本シリーズの主役である。その彼女の同行が一切描かれないというのは流石に問題だろう。
また、レイとカイロ・レンがテレパシーで会話をするシーンが中盤で繰り返し登場してくる。話している内容もそれほど変わらないし、映像的にも変わり映えがしないので退屈してしまった。やるとすればここは何かしらの変化を付けないとダメだろう。
というわけで、ライアン・ジョンソンの脚本、演出は共に雑であり、作品の完成度を一段落としてしまった‥というのが正直な感想である。
考えてみでば、「LOOPER/ルーパー」も脚本自体は決して出来が良いわけではなかった。あれは設定が斬新なだけであって、料理の仕方には幾つか問題があった。それを考えると今回は大分マシにはなっているが、やはり詰めの甘さが感じられる。
とはいえ、全てが期待に沿えなかったかというとそういうわけではなく、中にはとてもいい場面もある。
3つに分かれたドラマが同時並行的に盛り上げられていく後半の展開は非常に上手いし、カイロ・レンの葛藤をジックリと拾い上げた演出も丁寧で良い。そして、ルークの見せ場となる終盤は、かなり燃える展開で、こうした所にライアン・ジョンソンの演出力の高さが伺える。
この3点については作品の強度をギリギリのところで支えており、それだけで鑑賞感は満足できるくらいにはなっている。
一方、映像に関しては前作同様素晴らしかった。冒頭から始まる宇宙空間での戦闘シーンは大迫力であるし、中盤のカジノのシーンも観てて楽しい。終盤の戦いの場となる惑星の独特の景観も鮮烈で良い。
また、本作では悩めるルークの前にヨーダが霊体となって登場してくる。プリクエルでは完全にCGで再現されていたが、今回はマペットで表現されている。前作にも言えることだが、本シリーズはCGで塗り固められたプリクエルからの脱却を計っていることがよく分かる。そこは好感が持てた。
尚、第9章は2019年12月公開予定で監督はJ・J・エイブラムスに戻るらしい。どうやらディズニーは全9章だったシリーズを更に継続させる方向で企画しているようだが、少なくとも次作で今回の3部作は終わりとなる。果たしてレイとカイロ・レン、フィンのドラマはどういった結末を迎えるのか。完全に新世代のドラマになると思うが、ファンとしては新しい「スター・ウォーズ」を見せてくれるのではないかと期待したい。