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ダークナイト ライジング

見事な完結編‥と言いたいところだが‥。
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「ダークナイト ライジング」(2012米)星3
ジャンルアクション・ジャンルSF
(あらすじ)
 人々から熱烈な支持を受けて死んでいった地方検事ハービー・デントのおかげで、ゴッサム・シティには平和が戻った。その頃、デントの罪を一身に被ったバットマンことブルース・ウェインは、屋敷で隠匿生活を送っていた。そこにカリーナという謎の女がやって来る。彼女はブルースの指紋を盗みだすと、それを世界的テロリスト、ベインに売り払った。ベインはそれを使って恐るべき陰謀を企てる。ブルースは再びバットマンになってベインの陰謀に立ち向かっていく。
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(レビュー)
 C・ノーラン監督、C・ベール主演で送る「バットマン」シリーズの第3弾、最終章。

 物語は前作から8年後が舞台になっている。最凶の敵ジョーカーとの戦いで傷つき打ちのめされたブルースは、新たな敵ベインの出現によって再び戦の場へ戻っていく。前作の影の薄さから一転、いかにも勧善懲悪な復活を遂げ、これはこれで実にオーソドックスな結末になっているのではないだろうか。考えてみると、このシリーズは第1作のタイトルでもある「バットマン ビギンズ」(2005米)、つまりバットマン覚醒のドラマを描こうとしたシリーズだったのかもしれない。そういう意味では納得の完結編である。アクションシーンや話の流れが良くできている。

 ただし、前作「ダークナイト」(2008米)との絡みから言うと少し食い足りない。確かにヒーロー映画として見れば十分納得できる作品である。しかし、前作であそこまでバットマンの葛藤に肉薄したドラマが、今回は途端に軽んじられてしまった印象を持ってしまう。

 前作はバットマン覚醒の物語としては大きな転換点だったような気がする。バットマンをダークサイドに引きづり込もうとしたジョーカーの存在は大きい。光があって闇がある。この二つは表裏一体であり、いつでも逆転する可能性がある。この<不確かな価値観>をジョーカーはバットマンに突きつけたのだ。その結果、バットマンは闇に生きるダークナイトになってゴッサム・シティから姿を消した。正義とは?悪とは?という問答を提示した骨太なドラマは、ヒーロー映画らしからぬ特異な物語になっていて、そこがこのシリーズの真髄だったように思う。それを受けての今作である。やはり見る方としては、その葛藤にさらに踏み込むようなドラマになっているだろう‥を期待した。ところが、蓋を開けてみれば期待していたほどの深淵さは無かった。それどころか、あそこまで強烈な印象を残したジョーカーの影が今作にはまったくもって見当たらない。至ってストレートな勧善懲悪なドラマになってしまった。

 今回の敵ベインも体格的にはバットマンを超えるほどの巨漢で、見た目の強さは十分である。現に1対1で殴り合いをしてもバットマンを圧倒するパワーを見せつけている。しかし、彼にはジョーカーほどの精神的な凶悪さが足りない。もっと言えば、物理的な殺戮はするが精神的な破壊という人間の内面にまで及ぶような悪魔性が感じられないのだ。もっとも、それが終盤のあのオチに繋がっていることを考えれば、ベインの悪役としてのチープさは納得する所ではあるのだが、だとしたらその後に見顕しする黒幕についてはもっとスケール感を持たせて欲しかった。結局、過去の私怨という形で処理されてしまっては余りにも軽過ぎる。

 前作の終幕を受け継ぐなら、今回はバットマンの葛藤を深く追求すべきだったように思う。それがドラマ的に言っても自然の流れである。

 例えば、バットマンの戦う意味に言及する素材はこの物語の中には幾つかあったように思う。
 一つはJ・ゴードン=レヴィット演じる新キャラ・ブレイク刑事の幼少時代のエピソードだ。これはバットマンが正義の意義を見つめなおす格好の素材になったはずである。しかし、物語の中ではブレイク刑事から見た過去の英雄の思い出としか描かれておらず、肝心のバットマン本人の思い出としては語られていない。遅まきながらバットマンはクライマックスで正義の意義について開眼するが、問題はどうやって開眼するか?そこのドラマである。バットマンから見たブレイク刑事の幼少時代。そこに焦点を当てれば戦う意義は掘り下げられただろう。

 また、執事として仕えるアルフレッドも使い方次第では面白くできるキャラだ。こちらに関しては若干掘り下げようとしている節が見られたがまだまだ弱い。アルフレッドの引き留めを振り切って戦場へ向かうブルースの覚悟。ここを広げていけば戦う意義が更に強く重いものになっただろう。

 むろん、ひたすら内省的な作りになってしまってはエンタメ映画としては失敗である。だから、アクションシーンの要所にこうした葛藤場面を入れることで前作のようなハードな作りに出来たのではないか‥と思うのである。実に勿体なく思う。

 見ればわかるが、今回はどちらかというと第1作との繋がりが大きい。おそらくそちらとの整合性を図ろうとした結果、こういう作りになってしまったのだと思う。

 また、細かな個所で幾つか突っ込み所があり、完成度という点でもこれまでに比べると若干落ちる。
 例えば、ラーズ・アル・グールの幻影の言葉、盲目の医師の言葉。この二つでブルースがベインの正体に確信を抱くのは早計な気がした。そもそも周囲は"唯一の脱出者゛の正体を知っていたわけで、それをブルースに教える人がいてもおかしくはないと思うのだが‥。
 また、セリーナのトンネル爆破はまったく意味が無いものとなってしまっている。彼女の犯罪歴を消すチップも物語上どれだけ重要な意味があったか分からないし、それが手に入った経緯もサッパリ説明されていない。
 黒幕のこと切れる瞬間の演出も軽すぎる。核爆弾のぞんざいな扱い共々、苦笑場面だろう。
 派手なアクションシーンの影に隠れて目立たないが、完成度を高めるならこうした所はの作りはもう少し考えて欲しかった。

 アクションシーンについてはこれまで通り見応えが感じられた。これだけの迫力の映像を見せられるとやはり2時間40分もあっという間に感じられてしまう。特に、クライマックスのカーチェイスシーンはスピード感と重量感があって良かった。また、冒頭のハイジャック・シーンもノーラン監督の前作「インセプション」(2010米)のようなテクニカルなアクション演出で興奮させられた。ノーランのアクションは対人銃撃戦こそ野暮ったく感じるが、それ以外は見やすいし上手い方だと思う。
[ 2012/09/11 00:49 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

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