言わずと知れた勝新の代表作。伝説がここから始まった。
「座頭市物語」(1962日)
ジャンルアクション
流浪の盲目のヤクザ座頭市は、かつて旅で知り合った下総の貸元・飯岡の助五郎親分を頼ってある村に辿り着いた。助五郎は市の剣の腕前を買って用心棒に雇った。その頃、飯岡と対立する笹岡組も1人の用心棒を雇った。江戸からやって来た浪人・平出という男である。ある日、市は川釣りに出かけ、そこで平出と出会う。市は平出が病におかされているのを一発で見抜いた。平出はそんな市に、剣客としてのライバル心と奇妙な友情を芽生えさせていく。
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(レビュー) 勝新太郎が盲目のヤクザを演じた時代劇シリーズの第1作。人気を博し全26作品作られた。
稀代のアウトロー、座頭市のキャラクター。それを怪演した勝新太郎の魅力。この奇跡的なまでの組み合わせが本シリーズの最大の肝だと思う。この魅力に取り込まれたらおそらく一生脱け出せないだろう。それくらい強烈な個性を持ったシリーズである。
この第1作で見所となるのはクライマックスの座頭市対平出の対決シーンである。一瞬の気の緩みが死につながる真剣勝負の緊張感、ヤクザの無情な宿命を切なく謳い上げた哀愁漂う幕引き。それらがストイックに突き詰められていて、いわゆるプログラム・ピクチャー的な安っぽさが感じられない。実に見応えがあった。
座頭市の居合切りを封印した〝出し惜しみ″の作劇にも上手さを感じた。ミステリアスな人物として提示し続けながら、見る側の期待値を落とさなかった作劇は見事である。
例えば、映画は序盤の10分で市の人となりを描き、盲目の彼は他人の心を読むことが出来る‥という"只者ならざる感"を出している。その後は、市の立ち振る舞いの中に彼のヒューマニズム、"能ある鷹は爪隠す”的な凶暴性を忍ばせながら、市という人物をしたたかにフィーチャーしている。この作劇は素晴らしい。
尚、個人的に最も印象に残ったのは月夜の晩の語らいである。ここには市の優しさがよく出ていると思った。殺伐としたトーンにこうしたロマンチックなトーンを自然に挟み込んだ演出が絶妙である。また、ここには後の展開の"お膳立て”もきちんと仕込まれている。このあたりの伏線の張り方は実に手際が良いと思った。
一方、全体的にストーリーが散漫な作りになっているのは残念だった。例えば、蓼吉とお咲の愛憎を中盤まで引っ張っているが、実際に二人の関係を描く描写はなく、全てを言葉だけで片づけてしまっている。更に、この逸話は全体の物語にさほど影響を及ばさない。これは省略できる部分だったのではないだろうか。こうした部分を含め、ストーリーはもう少し整理して欲しかった。