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脱走特急

脱走物と列車物を併せたストーリー。ハラハラさせるアクションシーン。侮れない傑作だと思う。
脱走特急 [Blu-ray]脱走特急 [Blu-ray]
(2012/06/22)
フランク・シナトラ、トレヴァー・ハワード 他

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「脱走特急」(1965米)star4.gif
ジャンルアクション・ジャンル戦争
(あらすじ)
 1943年、イタリア軍の捕虜収容所にアメリカ軍のライアン大佐が収容される。この時、収容所は捕虜たちとイタリア軍の間で緊張した睨みあいが続いていた。脱走を計画していた捕虜たちが非情な懲罰を受けていたのである。ライアンはこれ以上無益な争いを止めさせるため仲間に脱走計画を諦めさせて、その代わりにイタリア軍に待遇改善を要求した。これが認められてライアンはたちまち捕虜たちのリーダーになっていく。やがてイタリア軍が降伏し収容所が解体されることになった。ライアンたちは戦場を掻い潜って自軍へ合流しようとするのだが‥。
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(レビュー)
 連合軍捕虜の集団脱走を描いたアクション映画。

 ライアンを演じるのはF・シナトラ。歌手としての印象が強い彼が、本作では後半でバリバリのアクションを見せこれまでにないヒロイックな一面を見せている。
 ただ、どうしても軍人としての厳格さに欠け、ミスキャストとまでは言わないが少々温い演技に写ってしまった。仮にも勇猛果敢な捕虜たちをまとめ上げるわけであるから、そこには軍人としてのカリスマ性が欲しい。今までにないタイプの理知的な軍人で面白いが、どうしても物足りなさも感じてしまった。

 もっとも、今作は各所にユーモアを盛り込んだ作りになっている。そこに彼の飄々とした演技は上手くハマっていた。また、ラストの演技は見事だと思った。これがあったことで、それまでの不似合な印象も自分の中では帳消しになったくらいである。

 物語はタイトルにもある通り、ライアン率いる捕虜たちが列車に乗って敵の陣地を突破していく‥というものである。本作の妙味は一連の脱走映画にはない奇抜なアイディアだと思う。何と彼らはドイツ兵に成り済まして脱走しようとするのだ。はっきり言うと、シナトラなどは明らかにドイツ人に見えなく無理ありすぎな設定であるが、そうしたリアリティにある程度目を瞑ることが出来たなら想像以上に面白く見れる娯楽作品になっている。

 映画前半は、捕虜収容所を舞台に展開される、いわゆる刑務所物である。脱走を計画する捕虜。それを粛清しようとするイタリア兵。その対立を軸に展開されていく。新しくやって来たライアンが両者の間を取り持つことで出来上がっていくパワーゲームが面白く見れる。

 また、脱走計画の首謀者で捕虜たちのリーダー、フィンチャム少佐とライアンの対立ドラマも面白い。フィンチャムは根っからの軍人気質でヒューマニズムを信条とするライアンとは正反対なキャラクターである。 ライアンの登場以降、リーダーの地位を奪われて不満を募らせるのだが、この二人のやり取りがドラマチックで面白い。

 そして、もう一人、この前半部には、捕虜との間で通訳を務めるオリアーニ大尉というイタリア兵が登場してくる。彼も中々面白い立ち位置をしたキャラクターである。彼は元々反ナチでライアンに似たヒューマニストである。ライアン達の逃亡の旅に同行することになり、そこで芽生えるかすかな信頼関係がドラマに一定の味わいをもたらしている。

 後半は、一転してサスペンス、アクションの連続で展開されていく。ここでの見所は2点。
 1点目はドイツ軍の将校に成り済まして敵の陣地を掻い潜っていくサスペンスである。ドイツ語が喋れるという理由でイギリス人の牧師がナチスの将校に成り済ますのだが、食料補給所での彼の立ち振る舞いなどにはシニカルなユーモアが感じられて面白かった。緊迫感を盛り上げるカメラワークも絶妙である。

 そして、2点目は追いかけてくるドイツ軍との激しい追撃戦を描くクライマックス・シーンである。ドイツ軍の戦闘機メッサーシュミットまで登場する派手なドンパチは、最後の最後まで手に汗握る展開を演出し大いに盛り上げてくれる。

 このように最初はシナトラの"らしからぬ"軍人振りに不安を抱いたのだが、見進めていくうちに話の作り方、人物の描き方が実に手練れていて全体としては中々楽しめた。

 共同脚本のウェンデル・メイズは、史上初の大西洋横断無着陸飛行を描いたリンドバーグの伝記映画「翼よ!あれが巴里の灯だ」(1957米)やアメリカ駆逐艦とドイツ潜水艦の息詰まるような攻防を描いた「眼下の敵」(1957米)、豪華客船の沈没を描いたパニック映画「ポセイドン・アドベンチャー」(1972米)等のシナリオを手掛けた才人である。今、例に挙げたような密室劇、グランドホテル形式のドラマを得意とするライターで、その才能が今回の収容所、列車という限定されたシチュエーションでは見事に発揮されていると思った。彼の脚本術の上手さがよく表れている。

 惜しむらくは列車に乗り合わせていた女性の扱いが若干弱く映ることだろうか‥。今作で唯一の女性キャラだけにもう少し存在感をアピールするような箇所があっても良かったように思う。また、前半で面白い立ち位置だったオリアーニ大尉も後半にいくについれて段々影が薄くなってしまう。せっかくの美味しいキャラなのでもっとストーリーに絡ませても良かったように思った。

 音楽はJ・ゴールドスミス。こちらもベテランだけあって緊張感を上手く演出するスコアを作り上げている。
[ 2012/09/24 19:17 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

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