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腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

一風変わったヒューマンコメディ。このイタさにシンクロ出来るかどうかは人それぞれ。
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(2008/02/22)
佐藤江梨子、佐津川愛美 他

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「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」(2007日)星3
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 女優になるために東京に出ていた澄伽が、両親の死去で実家に戻って来た。葬式が終わったらすぐに帰るつもりだったが、事務所から解雇されて止む無く実家の世話になる。澄伽は妹・清深と過去に深い因縁があり、兄・宍道とも過去に只ならぬ関係にあった。兄嫁・待子はひたすら能天気で、澄伽にとってこの田舎暮らしは苦痛以外の何物でもなかった。そんなある日、澄伽は雑誌で気鋭の映画監督・小森哲生の記事を見つける。次回作の主役を掴もうと彼女は彼と文通を始めるのだが‥。
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(レビュー)
 女優志望の女とその兄妹達の関係をブラックに綴ったヒューマン・コメディ。同名戯曲の映画化である。

 個性的なキャラクターと設定は面白かったが、主観の曖昧さに戸惑い、正直中盤までは余り楽しめなかった。このドラマの主人公は基本的に澄伽である。冒頭とラストを妹・清深の視点で結ぶのは良いとして、劇中の視座は二人の間を行き来する。これがドラマへの興味を削いでしまっている。清深の主観描写をほどほどにして、澄伽に集中した方が構成としてはスッキリしたのではないだろうか。

 例えば、清深が過去に起こした事件の回想は、清深の視点で描かれているが、むしろ澄伽の視点で描いた方が残酷さと衝撃度が増したように思う。このようなどっちつかずな視座がドラマを弱めてしまっているような気がした。

 それにしても、この澄伽という女性は見ていてかなりイタい。しかも、そのイタさを自覚していないどころか、自意識過剰で傲慢である。その言動は平和な家族の暮らしを掻き回していくようになる。劇中に度々猫が登場してくるが、澄伽の気まぐれもいかにも"猫″的と言っていいだろう。正直見ていて不快極まりないキャラクターだったが、それを主人公に据えているのだから本作は実に"冒険的″な映画と言える。

 一方、澄伽と対立していく妹・清深は、姉とは正反対に部屋に閉じこもって一人で黙々とマンガを描く自閉症気味な少女である。澄伽との間は完全に冷め切っていて、そこには過去の因縁が関係している。彼女はそのことを根に持たれて澄伽に度々虐めを受ける。

 こうして二人は憎しみを増幅させていくのだが、その争いは見ていて実に痛ましい限りである。と同時に、血縁の呪縛についても考えさせられた。設定自体は非常に特殊だが、このあたりは極めて普遍的なホームドラマとして見ることができる。

 クライマックスは当然二人の対決となるのだが、これにはカタルシスを覚えた。想定内ではあるものの、そこに至るまでの姉妹の対立が徹底されているので説得力も感じられる。また、その後のオチも良かったと思う。二人は今後どんな人生を歩んでいくのだろうか‥。そんな想像も掻き立てられた。

 演出は基本的にはオーソドックスな物を見せてくれるが、所々にマンガ的な表現が見られる。中島哲也監督にも似た映像に対する偏執的な執着も感じられ、特に先述のクライマックスの演出には度肝を抜かされた。冒頭のブッラクなセンスも嫌いではない。

 キャストでは影や怨念を持ったキャラが揃う中、待子を演じた永作博美の妙演に癒された。天然系のいじられキャラだが、唯一ホッと息を付かせてくれる役どころである。
 山本浩司の情けなさもハマっていた。スタンプカードのネタは秀逸である。

 ところで、小森哲生という名前は、やはり小室哲哉にかけているのだろうか?喋り方からもそんな感じがしたのだが‥。
[ 2012/10/09 01:22 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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