浅野忠信が演じるチンギス・ハーンの伝記映画。
「モンゴル」(2007独カザフスタンロシアモンゴル)
ジャンル人間ドラマ・ジャンルアクション
(あらすじ) 12世紀後半のモンゴル。9歳の少年テムジンは大部族メルキト族と和平を結ぶために政略結婚をさせられようとしていた。ところが、結婚の儀を執り行うために出た旅先でボルテという少女と運命的な出会いを果たす。テムジンは彼女を許嫁にした。その後、テムジンの父が毒殺されると、部下のタルクダイの謀反によってテムジンは過酷な扱いを強いられるようになる。脱走を試みたテムジンは九死に一生を得て、野心溢れる少年ジャムカと出会い逞しく成長していった。それから20年後、成長したテムジンは許嫁のボルテと結ばれて母の元へ帰ってきた。しかし、幸せも束の間、そこにメルキト族の騎馬隊が攻めてくる。
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(レビュー) 世界人口の半数以上を支配したモンゴル帝国を築いたチンギス・ハーン(テムジン)の波乱に満ちた人生を壮大なスケールで描いた伝記映画。
wikiによるとチンギス・ハーンの歴史書は色々とあって、細かい所で食い違いがあるそうである。したがって、本作で描かれていることがどこまで真実に迫る物語なのかは分からない。ただ、純粋に1本の映画として見た場合、その波乱に満ちた人生は実に面白く見ることが出来た。
映画は後年のテムジンの回想で綴られていく。彼は牢屋に入れられ身体が衰弱しきって死の縁に立たされている。そこで彼はこれまでの自分の人生を振り返っていく。
妻ボルテ、宿敵ジャムカとの出会いに始まり、父の暗殺によって非情な運命に晒される少年時代、戦場で次々と功名を上げていく青年時代。軽快に進むストーリーは概ねしっかりと構成されていている。
ただし、序盤はやや駆け足気味で、安易に流しすぎな印象も持った。例えば、タルクダイの元から脱走したテムジンが極寒の湖からどうやって脱出したのか?ジャムカとどうやって友情が成立していったのか?こういった所の描き不足がある。特に、ジャムカはテムジンの人生を変えるキーマンなので、二人の友情形成はもう少しじっくりと描いて欲しかった。
映画は後半から青年期のドラマに突入していく。
青年テムジンを演じるのは日本人俳優・浅野忠信。果たして、彼にモンゴル人の英雄を演じられるのか?という心配があったが、見てみると意外に悪くはなかった。耳慣れないモンゴル語だが何となくそれっぽく喋っているし、抑制を効かせた表情も堂々としている。
ちなみに、今作はアカデミー賞外国映画賞にノミネートされ、浅野忠信の名をハリウッドに知らしめるきっかけとなった作品である。その後、彼は「マイティー・ソー」(2011米)、
「バトルシップ」(2012米)といったハリウッド・メジャー作品に出演している。
さて、青年期をを描くここからいよいよ物語は佳境に入っていく。部族を率いたテムジンの天下統一を目指す戦いは、アクション性を強く押し出した作りになっている。特に、メルキト族に連れ去られたボルテを救出する中盤、天下分け目の大勝負を描いたクライマクス・シーンには中々の迫力が感じられた。テムジンの主観映像演出も戦場の混乱振りを生々しく表現しており秀逸である。また、CGで作り上げたモブシーンも上手くスケール感を出している。
そして、ここでのドラマ的な見所はテムジンとジャムカの愛憎ドラマとなる。天下を統一していくテムジンに対するジャムカの思いが切なく描かれ、戦争によって引き裂かれた両雄の運命には心が突き動かされた。
監督・脚本・撮影はロシア人のS・ボドロフ。どちらかというとこれまでは地味な作家という印象だったが、今作はかなりの製作費をかけた大作となっている。また、他のスタッフ、キャストを見ると実に国際色豊かな面々が揃っている。彼にとっても今までない挑戦だったことだろう。大作に合わせ堂々とした演出を見せている。
ちなみに、本作は外から見た英雄談として見れば十分楽しめる作品だが、チンギス・ハーンという個人の内面を知りたいという人には少し物足りない作品かもしれない。内面描写が浅薄で実に淡々としている。さすがに英雄の半生を描くとなると、この尺では足りないだろう。そういう意味では、大味という印象を持ってしまった。