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寝盗られ宗介

旅回りの一座の悲喜こもごもを綴った人情ドラマ。故・若松孝二監督作品というよりはつかこうへい作品。
寝盗られ宗介 [DVD]寝盗られ宗介 [DVD]
(2003/02/25)
原田芳雄、藤谷美和子 他

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「寝盗られ宗介」(1992日)star4.gif
ジャンルロマンス・ジャンルコメディ
(あらすじ)
  旅一座を率いる北村宗介は看板女優・レイ子と内縁の関係にあった。しかし、レイ子はいつまでたってもドサ回りを続ける宗介に愛想をつかし、度々座員と駆け落ちしていた。その日も出番に穴をあける寸前までいったが、ギリギリのところで戻ってきた。宗介も注意することしかせずその場は収まった。そんなある日、一座の若手歌手ジミーが緊急入院してしまう。本人の話によれば腎臓移植をしなければならないらしい。仕方なく宗介はその費用を工面してもらおうと実家に戻った。そこで彼は弟・信二から、入院中の父がもう長くないことを聞かされる。
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(レビュー)
 旅一座の座長と駆け落ち癖のある女房の悲喜こもごもを軽妙に綴った人情ドラマ。
 つかこうへいの舞台劇を鬼才・若松孝二が映画化した作品である。尚、つかこうへい自身が脚本も担当している。

 つか作品で真っ先に思い出されるのは、何と言っても「蒲田行進曲」(1982日)である。今作もそれと同じバックステージ物である。ただ、今回は場末の売れない役者たちのドラマで、全編雪に覆われた東北ロケを背景にしていることもあり「蒲田行進曲」のような熱量、豪快さは見当たらない。むしろ、どこか冷え冷えとしたトーンが横溢する。
 ただ、ドラマに関して言えば、逆境を力強く生きようとする活力に溢れた物語になっており、「蒲田~」に共通するテイストが感じられた。いかにも、つかこうへいらしい情に訴えた作劇で、好きな人にはたまらないものがあるだろう。

 そして、その活力の源になっているのが、宗介の明るさ、健気さ、ダンディズムである。
 宗介とレイ子、レイ子を寝取った座員達との関係は、実にあっけらかんとしている。普通なら互いに遺恨を残してドロドロとした関係になってしまうところを、宗介は割と簡単に"寝盗られ″を許してしまうのだ。これは宗介の器のでかさだと思う。

 例えば、冒頭の謙二には芸の肥やしになるからと言って手切れ金よろしく車を買い与え、中盤のマックには可愛そうな外国人だからと言ってレイ子との温泉旅行をプレゼントしてやる。こうして宗介は寝取った相手を追い出して遺恨を断ち切ってしまうのだ。更に、レイ子に対しては厳しく怒ることをせず、逆に優しく接して機嫌を取ってやる。
 今の自分じゃ女房に逃げられても仕方がない‥という諦めの気持ちがあるのかもしれない。あるいは、無用なトラブルで一座に迷惑をかけられない‥という思いもあるのかもしれない。しかし、これは相当の忍耐力が無いとできないことだと思う。ある意味で大した男である。
 ただ、一方でこうも言える。結局、宗介は一座から離れられない半端者だと‥。

 宗介は事あるごとに言う。芝居以外に何もできないバカたちを見捨てるわけにはいかない‥と。これは本心だと思う。そして、それは自分自身も含めてのことだと思う。何だかんだ言って、彼は一座にしがみつきながら自分の居場所を確保しているのだ。そのためには妻の浮気も我慢するし、寝取った相手にもしたたかに対処して事を丸く収める。そうやって一座を維持している。その健気さは実に惨めったらしくもあるが、それ故に何とも言えないペーソスも沸きおこってくる。

 本作には、宗介以外にも様々な魅力的な座員たちが登場してくる。音痴な若手歌手ジミー、真面目な新人女優あゆみ、泣き虫外人マック、宗介にぞっこんのブサイク女優等々。彼らの活躍が賑々しくドラマを展開させており、このアンサンブルは見事である。

 若松孝二監督の演出は実にオーソドックスに整えられている。アヴァンギャルドな映画作りをしていた頃の作品しか見てなかった自分にとっては少々意外だった。
 ただ、後半のジミーとレイ子が出ていくクダリは、舞台劇を意識した演出になっていて多少若松らしいラジカルなタッチになっている。全体のトーンからすれば不自然に感じたが、人物の軽妙なやり取りと背景のサブキャラ達の自然な佇まいとリアクションが面白い。ちなみに、ラストカットは明らかに「蒲田行進曲」へのオマージュだろう。このラストに関しては、つかこうへい色が前面に出ている感じがした。

 キャストでは宗介を演じた原田芳雄の好演が光っていた。女房を寝取られる惨めな男を飄々と、時に熱っぽく演じ、それまでの粗野一辺倒なキャラクターとは一味違ったに新境地を見せている。そして、何と言っても彼が熱唱する「愛の讃歌」。客観的に見れば滑稽であるが、その歌はレイ子に対するプロポーズにも聞こえ、胸に迫るものがあった。正に宗介一世一代の大舞台である。このあたりのドラマチックさは脚本の巧みさもあるが、同時に原田芳雄の力演によるところも大きいと思う。

 ところで、本筋には全く関係ないが、ジミーの実家にいたブタネコという珍種は一体何だったのだろう?ブーブーにゃーにゃー泣く子豚でラーメンのだし汁に丁度良いらしい。まぁ‥当然そんな珍種はないわけだが、こういう嘘八百を並べる所も今作は中々面白かった。
[ 2012/10/25 01:01 ] ジャンルコメディ | TB(0) | CM(0)

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