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われに撃つ用意あり READY TO SHOOT

やはり若松監督にとって60年代は大きなタームだったのだろう。
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(2011/12/21)
原田芳雄、桃井かおり 他

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「われに撃つ用意あり READY TO SHOOT」(1990日)星3
ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 新宿歌舞伎町でスナックを経営している克彦は20年続けていた店を閉店しようとしていた。その最後の日、メイランという台湾出身の女が店に転がり込んでくる。彼女はヤクザに追われていた。一方その頃、新宿署の軍司刑事は戸井田組・組長が殺されたという連絡を受けて現場に駆け付ける。死体の傍にはビデオのアダプターが残されていた。中のテープは空だった。軍司は秘密のテープを追って捜査に乗り出すのだが‥。
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(レビュー)
 新宿の闇社会に起こった殺人事件を巡って様々な人物が交錯するハード・ボイルド作品。

 監督は鬼才・若松孝二。全共闘世代の懐古をサスペンスに落とし込んだ作劇は中々見事で、こういう切り口で"歴史″に迫った作品は珍しいのではないだろうか。

 映画は克彦たちの一夜のパーティーと、組長銃殺事件に関わる謎の女メイランの逃走劇。この二つをリンクさせながら展開されていく。

 前者は、克彦の店のお別れパーティーに集まってきた様々な面々の会話劇で進行する。彼らは皆、60年代安保闘争を戦った同志である。あの時は良かった、バカだった‥と語りながら酒を酌み交わしていく。傍から見れば何と後ろ向きな‥と思うかもしれないが、彼らにとってはそれが懐かしい青春時代だったのである。そのノスタルジーにはしみじみとさせられた。

 ただ、客観的に見てここは必要以上に水っぽい会話劇であることは確かである。「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(2007日)を撮った若松監督である。学生運動にシンパシーを覚えたかどうかは別として、少なくとも体制に抗した若者たちの姿に強い関心を持っていたことは間違いない。その思いが水っぽいと感じられるこのパーティー・シーンに投影されているのだと思う。
 尚、幾分コメディタッチに作られているので、ガチな政治色は入ってこない。大島渚作品ほどの理屈っぽさがない分、大分突っつきやすくはなっている。

 一方、メイランの逃走劇だが、こちらは完全にサスペンス的な作りになっている。何故ヤクザに追われるのか?どこからやって来たのか?何が目的なのか?そういった謎が徐々に本人の口から明らかにされていく。こちらも追いかけるヤクザが少々間抜けだったりして、若干コメディ・トーンに味付けされている。
 ただ、中盤から香港マフィアが登場することでドラマはいい塩梅で引き締められていく。彼らの登場によってこのサスペンスにシリアスさが増していく。
 欲を言えば、メイランの過去をもう少し早い段階で小出しにしてほしかったか‥。前半は克彦たちの懐古のドラマが中心となるので、どうしても彼女の素性やヤクザの動向などが袖に置かれてしまう。そのため、謎解き自体が少しじれったく感じられた。

 ラストは中々味わいがあって良かったと思う。
 結局、克彦は成し遂げられなかった学生運動を今一度やり遂げようとしたかったのだろう。軍司刑事との関係が意外な形で判明するのも、やはり過去から逃れられない宿命にあったことを示唆してる。あの時、克彦は明らかに学生運動を想起して、過去に向かって拳銃の引き金を引いたのだと思う。
 克彦に寄り添う季律子も然り。学生運動という過去の清算。そして、惚れた男のために‥という女心。それが克彦との共闘に繋がったのだと思う。

 傍から見れば確かに、いい年こいた大人達が社会に突っ張るなんてみっともない‥という感想になろう。ただ、愚直に信念を貫いた克彦たちの戦いは正しく60年代の再燃以外の何物でもなく、果たしてそれを現代の若者たちはクールに笑うことが出来るだろうか?自分は克彦達よりも下の世代だが、彼らの行動を笑うことが出来なかった。それどころか、清々しいまでに信念を貫いた所に格好良いとすら思ってしまった。

 個性派揃いの役者が織りなすアンサンブルも今作の見所である。
 克彦役の原田芳雄のとっぽい造形、スナックの常連客でジャイアンツファンの石橋蓮司の怪演が印象に残った。はみ出し刑事を演じた蟹江敬三の成りも良い。若手刑事との凸凹コンビがコミカルで面白かった。

 尚、新宿の夜の街を生々しく捉えた映像にも引きつけられた。流しやストリートミュージシャン、ポン引きや浮浪者といった雑多な人々の佇まいを含め、今作は新宿という街全体が作品の"顔″として自己主張しているかのようである。
[ 2012/10/27 03:24 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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