ロリータをベースに敷いた官能ロマン。
「小さな唇」(1974伊スペイン)
ジャンルロマンス・ジャンルエロティック
(あらすじ) 戦争で負傷した作家ポールが帰還する。性不能の後遺症に悩み、生きる希望を無くしていた彼は、屋敷で見知らぬ少女エヴァを目にする。彼女は屋敷の使用人の姪だった。次第にポールは彼女の虜になっていく‥。
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(レビュー) 戦争で不能になった作家が幼い少女に恋をするロマンス作品。
ナボコフの「ロリータ」をベースに敷いた物語はオリジナリティに欠け、雰囲気重視な演出も表層的過ぎて見ていて飽きてしまう。
ただ、少女のエロティズムについては見るべきものがあった。
まず何と言っても、エヴァのミステリアスな造形が映画前半を支えている。川で体を洗っている姿、古いドレスに着替えて遊んでいる姿等を見て、ポールはその清く可憐な容姿に惹かれていく。特に、鏡に映るエヴァの後ろの姿には見ているこちらまでドキリとさせられた。いけないと思いながらも幼い少女を性の対象として見てしまう背徳感。それが前半は上手く描かれている。
ただ、後半からポールのエヴァに対する求愛行動は徐々にエスカレートしていき、やや見世物映画的な作りになってしまったのは残念である。前半の背徳感が薄まり、汚れなき少女の神聖性にも陰りが出始める。ポルノグラフィが物語を語る"手段″ではなく"目的″になってしまった‥という感じがした。
エヴァを演じた少女の体当たりの演技には素直に拍手を送りたい。ここまで肌を惜しげもなく大胆に披露したこと自体、奇跡に近いと思うし、それを前面に出した作品も現代では到底作られまい。
ソフトフォーカスで切り取られた柔らかな映像にも見応えが感じられた。特に、ボートを漕ぐ湖畔のシーンが印象に残る。
哀愁に満ちたステルビオ・チプリアーニのスコアは大仰だが、こういう臭い作りの映画にはほどよくマッチしていたと思う。
尚、現在ソフト化されているヴァージョンはオリジナル版よりも10分短い短縮版になっている。