ヤクザな警官と援交少女の愛を描いた一風変わった恋愛ドラマ。
「少女~an adolescent」(2001日)
ジャンルロマンス
(あらすじ) 平和な田舎町で警官をしている友川は、近所に住む知的障害の青年・助政と遊んだり、ペットを餌に飼い主の熟女と一時の肉体関係を持ったりしながら呑気に暮らしていた。ある非番の日、喫茶店で少女・陽子に声をかけられる。友川は彼女の誘いでホテルに入りセックスをした。しかし、彼女は金を受け取らずに友川が寝ている間に去って行ってしまった。それからというもの、友川は彼女のことを忘れられず探し回るのだが‥。
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(レビュー) 俳優である奥田瑛二が初めて監督を務めた作品。企画から製作までを彼自身が手掛けている。そういう意味では渾身の1本と言っていいだろう。
物語はヤクザな警官と謎めいた援交少女の愛という純文学的な内容となっている。ただし、所々に刺激的なエロチズムやブラック・ユーモアが入ってくるので、一筋縄ではいかない作品になっている。ある意味では、極めて俗っぽい見かけになっており、そこが奥田瑛二ならではの"味付け″と言えるかもしれない。
何と言っても、少女・陽子のミステリアスな造形がこのドラマの基盤を支えている。その魅力をを引っ張った中盤までは面白く見ることが出来た。
陽子は自称14歳とは思えぬ大人びた少女である。友川に化粧をして近づき、突然「おじさんセックスしない?」と言う。見かけだけでは分からないのがこの年頃の少女であるが、友川もその辺は先刻承知で一緒にホテルに入る。そして官能的なベッドシーンとなるのだが、ここまで映画は彼女のバックストーリーを一切開示せずミステリアスなまま進行していく。
その後、友川は陽子のことを忘れられず彼女を探し回る。これはいわゆるファムファタール映画の典型と言っていいだろう。少女に翻弄されるオッサンの情けない姿が延々と映し出されていく。
そして中盤、いよいよ再会の時が訪れる。映画はここに至るまでに陽子の情報を少しずつ小出しにしており、そこから彼女が何故友川に近づいたのか?という理由も分かってくる。実は、そこには"意外な物″が関係しているのだが、これは中々面白かった。先の展開を期待させる"意外な物″である。映画はここまで陽子のキャラクター・タッチングを中心にしながら上手く作られていると思った。
しかし、本作の問題はここからで、二人が惹かれ合う理由。そこに説得力を持たせることが出来なかった。
結局、このままでは陽子の友川への愛は見かけやフィーリングといった曖昧な感情でしか表現されてないように思う。これではまるで少女マンガチックな恋愛だ。陽子の友川への愛の裏側に何らかのドラマを忍ばせるなど、リアリティを持たせるための工夫を凝らしてほしい。
また、後半にかけて雑な演出が目立つのもいただけなかった。
例えば、助政が煙突に上って降りられなくなってしまうシーン。それを受けての幸枝の復讐シーン。共に演出が雑である。第一にあの高さから落ちた助政が無事とは到底思えない。また、体全体を上下させる幸江の演技もわざとらしい。
友川たちの怒りを描くクライマックスシーンもボルテージの上げ方に"タメ″がないので、今一つ盛り上がらない。
ちなみに、いくら人気の少ない田舎町だからと言って、警官が市民に銃を撃たせるのは無茶苦茶である。このあたりの現実感の無さも気になるところだ。
もしかしたら、奥田監督の中では中盤以降、寓話性を強く意識させたかったのかもしれない。ただ、いかんせんそれが映像から余り感じられないのが苦しい所である。
ちなみに、BGMに関しても物申したい。いくらフランス語のサブタイトルを付けたからと言っても、フランス語の歌をBGMに流すのはどうだろう‥。雰囲気を狙ったものなのだろうが、純和風な世界観の中ではそれも浮いてしまい違和感を覚えるだけである。