ミレニアム・シリーズの完結編。
「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」(2009スウェーデン独デンマーク)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 宿敵ザラとの対決で瀕死の重傷を負ったリスベットは、殺人未遂の罪で裁判にかけられることなった。ザラの元仲間たちは過去の凄惨な事件を隠ぺいすべくザラとリスベットを暗殺しようとする。一方、ミカエルはリスベットの裁判の準備に取り掛かっていた。彼の妹アニカを弁護士に立てて法廷にのぞむのだが‥。
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(レビュー) 「ミレニアム」」シリーズの第3弾にして最終章。
物語は前作のエンディングから始まっている。ザラとの対決で重傷を負ったリスベットは、彼の元仲間に命を狙われながら法廷で闘っていく。話の流れが中断されることなく、すんなりとドラマに入り込むことが出来た。
ただ、結論から言うと、前2作に比べて地味な印象は拭えない。むろん、法廷中に彼女の過去が明らかにされていく所にはカタルシスを覚えるし、今シリーズが一貫して訴えてきたテーマ"男尊女卑″という社会問題にも一応のケリがつけられている。
しかし、シリーズの肝であるリスベットがずっと病院のベッドで寝ている状態が続くので、どうしても今までに比べると地味にならざるを得ない。どちらかというと、今回の主役は彼女の無罪を晴らそうと奔走するミカエルの方にあり、そちらの活躍に焦点を当てたドラマとなっている。
前作で生き残った宿敵ニーダーマンも、リスベットを追いかける暗殺者としては少々迫力不足だ。逃亡しながら通行人を襲うという反復描写が続き、サスペンスを盛り上げるべく本来の役割を果たしていない。
敵組織も墓穴を掘りすぎるので締まらない。例えば、前半でリスベットとザラが入院している病院をいきなり襲撃して失敗に終わったり、組織としてのまとまり、計画性が全く無い。ここは警察の動きを事前にキャッチして抑え込むくらいの機転が欲しい。
全体的な演出も第1作に比べると幾分落ちる。スタッフは前作と同じスタッフであるが、やはりそこが関係しているのだろう。後半はほとんど法廷シーンとなるのだが、元来、法廷ドラマとは演出が大変難しいジャンルである。動きが少ないし、役者の演技力頼みのような所がある。そこを手に汗握るスリリングなやり取りに見せるのが監督の腕である。法廷に立つ当事者の過去をフラッシュバックで再現するなどしながら盛り上げていかねばならないのだが、本作はそこも余り上手く出来ていない。
尚、後から知ったのだが、第2部と第3部は元々TV映画用として製作された作品だそうである。本来テレビで放送するはずだったのが、第1作の映画が余りにもヒットしすぎて急遽ブラッシュアップして劇場用作品として公開したらしい。その話を聞くと、第1作に比べて作りがチープになっているのも何となく納得できてしまう。
色々と不満を述べてしまったが、ミレニアム出版社のメンバーに個性が出てきた所は救いであった。彼らは敵組織の脅迫に耐えながら今回の事件の調査をしていく。真実を伝えたいという記者魂が、彼らを現場の第一線に踏みとどまらせのだ。その姿勢にはジャーナリストであった原作者自身の思いが込められているのかもしれない。
原作者のスティーグ・ラーソンは、
wikiによれば第4部を執筆中に急逝したそうである。今作で一応話は完結しているが、リスベットのドラゴン・タトゥーがどうして誕生したのか?何故ハッカーになったのか?そのあたりのことはこの三部作の中では明らかにされていない。もしかしたら第4部以降で描かれるはずだったのかもしれないが、原作者が亡くなってしまった今ではそれも分からずじまいである。
また、本シリーズの執筆にあたっては、長年パートナーとして連れ添ってきた女性の協力も相当にあったようだ。もしかしたら、男尊女卑というテーマには彼女の思いも反映されているのかもしれない。とりわけ少女に対する児童虐待は欧州ではかなり厳しく取り締まられており、今作がセンセーショナルに受け止められたのもそのあたりの社会的背景があってのことだろう。仮に続編が作られたとすれば、このテーマはどんなふうに展開されていったのか?返す返すもシリーズの終了が惜しまれる。