警察官と市民の間で繰り広げられる人情ドラマ。
「警察日記」(1955日)
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ) 東北の田舎町の警察署に勤務する吉井巡査は、ある日、身売りされた少女アヤと母親に捨てられた幼い姉弟ユキ子と茂を発見する。アヤを後輩の花川巡査に送り届けさせ、自分は幼子二人を連れて相談所や施設を回って引き取り先を探した。ところが、どこも手いっぱいで預かる余裕がないと断られる。仕方なく吉井はユキ子を引き取り、茂は近所の料亭の女将に一晩だけ預かってもらうことにする。
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(レビュー) 戦後の貧しい地方農村を舞台に、警察官たちとワケあり市民たちの交流を温もりに満ちたタッチで描いた人情ドラマ。
演出がやや感傷に訴えすぎな面があるが、劇中で繰り広げられる人々のユーモアと優しさには癒された。特に、ユキ子と茂にまつわるエピソードには泣かされた。クライマックスとなる料亭前のシーンは白眉である。
また、万引きをして捕まった母子のエピソードには、胸が締め付けられるような思いになった。母子は万引きの後に無銭飲食で再び捕まるのだが、この時子供は「カレーライスを食べた」と言う。取り調べの警官は母親に向かって「お前は何を食べたんだ?」と尋ねる。すると、逮捕した警官が「お茶だけでした」と答える。無銭飲食をしてしまった母のやむにやまれぬ心情、子を思う気持ちが痛いほどよく分かり切なくさせられた。
コメディ・シーンとしては、少女アヤを売った女の送検シーンが印象に残った。警察署、労働基準監督署、職業安定所、夫々が自分の手柄にしようと「うちで送検する」と主張して喧嘩になる。縦割り組織のお役所に対する痛烈な批判が感じられる。非常に分かりやすい風刺である。
他に、アヤと花川の純愛エピソードも中々味があって良かったと思う。
今作はこうした様々なエピソードを積み重ねながら展開されていくグランドホテル形式のドラマとなっている。これだけの多彩な人物と事件をまとめあげたシナリオは見事である。ただ、キャラクターが皆性善説に拠りすぎており、ややご都合主義になっている面はある。そこをどう取るかで作品の評価は分かれてくるだろう。自分は、人としての優しさを再認識させてくれるような良作であると感じた。
キャスト陣では吉井を演じた森繁久彌の人情味あふれるキャラクターが素晴らしかった。捨てられた幼子たちに対する温かな語りかけが、昔の田舎には本当にこういうお巡りさんがいたかもしれない‥いや、いて欲しいと思わせてしまう。この説得力は、やはりこの独特のセリフ回しにあるように思う。
また、ユキ子を演じた天才子役・二木てるみの愛らしさも印象に残った。
他に、宍戸錠が今作で映画初出演を果たしている。見てる最中は全然気づかなかったが、どうやら若手警官の一人を演じているらしい。頬にシリコンを入れる前の彼である。