中村錦之助の熱演もさることながら杉村春子の怪演も印象に残る。
「反逆児」(1961日)
ジャンルアクション・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 戦国時代、今川義元の血筋を継ぎながら織田信長の娘・徳姫を娶った信康の苦悩は計り知れなかった。今、武田軍との戦いで功を上げた信康は岡崎の城に凱旋する。徳姫が第2子を出産し喜ぶが、二人の間には深い溝があった。今川家である信康の母・築山御前と織田家の徳姫は元々相容れない仲であり、信康は複雑な立場に立たされていたのである。築山御前は今川家再建を目論み信康の前に、しのという侍女を差し出した。実は、信康はその昔、花売り娘をしていたしのと一度だけ恋情に溺れたことがあった。
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(レビュー) 戦国時代を戦い抜いた武将の非情な運命を熱度の高いタッチで綴った人間ドラマ。
いわゆる軍記物にメロドラマ的なテイストを混入した所に本作の面白さを見出すことが出来る。母親と妻の愛に翻弄されながら家名の重圧に押しつぶされていく男の悲劇が乱世の中に活写されている。言ってしまえば実に通俗的なドラマであるが、戦国の世ならではの重みがひしひしと伝わってきて、ストーリー自体は上手くまとまっていると思った。
見所は信康を演じた中村錦之助の熱演となろう。特に、約10分に及ぶ壮絶な死に様は、やや大仰と感じるものの堂々たる熱演を見せてくれている。
そして、もう1人、彼の熱演を凌駕する人物が本作には登場してくる。それが信康の母・築山御前を演じた杉村春子である。もはやホラー的と言ってもいい怨念のこもった形相はひたすら恐ろしく、見る者に強烈なインパクトを残す。悲運の死を遂げた父の遺恨を受け継ぎ、息子に再興を託す過激な行動の数々。それに戦慄を覚えてしまった。
たとえば、祈祷師を呼んでまじないをしたり、藁人形で呪いをかけたり、果ては男児を生めない嫁・篤姫への当てつけに花売り娘を側室に迎える算段をしたりetc.杉村春子はこれを憎々しく怪演している。
惜しむらくは前半がやや上滑りしてしまうことだろうか‥。冒頭の戦闘シーンは大作感があってビジュアル的には良いと思うのだが、信康の置かれている立場、周囲の状況などを先に提示しておいたほうが入り込みやすかったかもしれない。群雄割拠する戦国武将の位置関係などもあらかじめ知っていないと分かりづらい面がある。このあたりの様々な情報は見る側に初めに提示しておいた方が親切だったかもしれない。
監督・脚本はベテラン・伊藤大輔。骨太なタッチと繊細なタッチ、両方を巧みに使い分けながらシーンを盛り上げていると思った。信康の壮絶な最期を描くクライマックス、花売り娘・しのとの出会い。この二つは動と静、対照的なシーンであるが、彼の硬軟自在な演出を味わえるという意味ではベスト・シーンであろう。