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切腹

切腹をモチーフにした傑作時代劇。
切腹 [DVD]切腹 [DVD]
(2003/11/22)
仲代達矢、岩下志麻 他

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「切腹」(1962日)星5
ジャンル人間ドラマ・ジャンルサスペンス
(あらすじ)

 彦根藩・井伊家に半四郎という浪人がやって来て切腹のために庭を拝借したいと申し出た。その頃、世間では困窮した浪人が玄関先で切腹すると言って金品をせしめる行為が流行っていた。家老の斎藤勘解由は半四郎をその輩だと睨み、先頃やって来た千々岩求女という浪人の話を聞かせてやる。求女は実際に腹を切り壮絶な最期を遂げた。それを聞いた半四郎は意外な話を語りだす‥。
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(レビュー)
 切腹によって非情な死を遂げた武士とその家族の生き様と復讐を骨太に綴った時代劇。

 自分は2011年に三池崇史監督がリメイクした「一命」(2011日)の方を先に見ている。
 「一命」は三池監督らしからぬ生真面目なテイストに賛否あったようだが、個人的には今までにない新機軸を見せてくれたという意味で楽しめた。後からこのオリジナル版を見てみると、若干異なる演出は見られるものの両作品は本当によく似ていて驚かされた。そこで、今回は両作品の違いなどをざっと述べてみようと思う。

 まず、求女の切腹の描き方がかなり違う。オリジナル版よりもリメイク版の方がじっくりと描かれている。一部でやり過ぎという声も上がったが、自分はこのシーンには三池監督のこだわりが感じられた。彼はなにも見世物的なエンタメを狙ってしつこく描写したわけではないだろう。ここで求女の苦しみ、痛みを見る側にしっかりと植え付けることによって、彼の無念の思いを強く押し出そうとしたのだと思う。そして、その無念の思いをしっかりとプレマイズすることで、以後の半四郎の復讐の念にも説得力がもたらされることになる。求女の切腹シーンにはこうした三池監督の計算が感じられた。
 したがって、個人的にはじっくりと描いたリメイク版の方がオリジナル版よりもドラマチックに仕上げられているという点で優れているような気がした。

 また、これが両作品で一番大きく異なる部分だと思うのだが、求女を死に追いやった3人の家臣の描き方。これが違う。リメイク版は3人ともほぼ同質の扱いだったが、オリジナル版ではそのうちの一人、彦九郎の立ち位置が目立って描かれている。
 演じる丹波哲郎の冷酷な佇まいが中々良く、後半では半四郎との決闘という見せ場も用意されている。この決闘シーンにはリメイク版に無いケレンミが感じられた。特に、二人が対峙する背景に流れる雲の映像が素晴らしい。しかも、聞くところによればこの撮影には真剣が用いられたそうである(wiki参照)。若干殺陣が弱く感じたのはそのせいかもしれない。しかし、ホンモノの迫力を出そうとした製作サイドの狙いには頭が垂れる思いである。しかも、この決闘シーンで半四郎のずば抜けた剣術を映像として見せたことは重要だと思う。その後のクライマックスでの部類の強さに、より一層の説得力をもたらすことに成功しているからだ。
 一方、リメイク版の彦九郎は他の家臣と同等の扱いで、半四郎との決闘シーンも簡略化されてしまっている。

 キャスト陣については、オリジナル版の方に軍配を上げたい。特に、半四郎を演じた仲代達矢、美穂役を演じた岩下志麻、勘解由を演じた三國連太郎、主要キャストはいずれも好演を見せている。リメイク版はシーンによって若干演技にブレが見られたのが惜しまれた。終始緊迫感を漂わせた演者陣のやり取りはオリジナル版の方が勝っているように感じた。

 このようにリメイク版も見事な時代劇ではあったが、オリジナル版よりも優れていると感じたのは求女の切腹シーンで、他は同等、あるいはオリジナル版の方に軍配が上がってしまう。
 これはあくまで想像だが、三池崇史と脚本家はオリジナル版の完成度を知っていてそれを超えようとしたのではなく、無難に作り直そうとした結果、両作品はほとんど似た作りになってしまったのではないだろうか。確かに失敗はしないやり方ではあった。

 監督は小林正樹、脚本は橋本忍、撮影は宮島義勇、音楽は武満徹。錚々たるスタッフが揃っている。
 小林作品には「上意討ち 拝領妻始末」(1967日)という傑作時代劇があったが、それに勝るとも劣らぬ整然とした画面設計、静と動のメリハリを利かせた演出がここでも見られる。撮影の宮島との息の合ったコンビネーションも見事で、武満徹の音楽もミニマムながら冷徹な雰囲気を作り出し、半四郎たちの無情の思いを静かに盛り立てている。
 そして、特筆すべきは橋本忍のシナリオだろう。これは原作自体が良くできているというのもあるかもしれないが、ミステリを紐解く構成は見る者を画面に引き込む高い訴求力がある。

 武士道を強烈に批判した所にも面白味が感じられた。物語の時代は寛永7年、江戸時代真っただ中である。武家社会に反旗を翻す半四郎の批判行動は相当異端であったことは間違いない。しかし、彼の反抗には一定の論がある。
 確かに求女のやったことはタカリでしかなかった。しかし、劇中で彦九郎が語っているように、当時ですら切腹は体面上のしきたりでしかなく、腹を切るのは名目であって実際には介錯による絶命が慣例となっていた。それなのに敢えて求女には腹を割かせた。しかも竹光で‥。半四郎はそこに憤っているのである。果たしてこの残酷なやり方が武士道と言えるのか‥と。

 時代が推移すれば社会の理念は当然変わっていくものである。前時代的な理念は新しい時代では消えていく。果たして武家社会という理念が崩落の寸前にあったこの時代に、武士たちは自らの生き方をどのように考えていたのだろうか‥。おそらく相当葛藤があったに違いない。その葛藤が、武士道を批判したこのドラマから如実に読み取れて興味深かった。
[ 2012/12/20 01:14 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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