fc2ブログ










まほろ駅前多田便利軒

便利屋とワケあり男の友情を描いたヒューマン・サスペンス。中々の好編。
まほろ駅前多田便利軒 スタンダード・エディション [DVD]まほろ駅前多田便利軒 スタンダード・エディション [DVD]
(2011/11/02)
瑛太、松田龍平 他

商品詳細を見る

「まほろ駅前多田便利軒」(2011日)星3
ジャンル人間ドラマ・ジャンルサスペンス・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 東京郊外のまほろ駅前で便利屋を営む多田は、ある日みすぼらしい格好をした一人の男に出会う。それは中学時代の同級生・行天だった。かつて多田は行天の小指を怪我させたことがあり、何となく気まずい雰囲気になった。一晩泊めてくれという行天の言葉を渋々受け入れた多田は、そのままずるずると共同生活に入ってしまう。ある日、依頼人から預かっていた子犬を返そうと二人はその家を訪問する。ところが、依頼人は謎の失踪を遂げていて‥。
楽天レンタルで「まほろ駅前多田便利軒」を借りよう
goo映画
映画生活

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ


(レビュー)
 便利屋家業をしている男とワケあり男の奇妙な友情を、周囲の様々な事件を交えて描いたヒューマン・サスペンス・ドラマ。

 少しばかりブロマンス的な匂いが嗅ぎ取れるのは狙ってやっているのか?それとも偶然なのか?いずれにせよ、多田と行天のオフビートなやり取りは中々面白く見れた。二人とも不器用な性格でよく似ている。本音を中々口に出せず損をしてしまう。そんなボンクラ二人のバディ・ムービーは中々味わい深い。

 演者陣の魅力も作品に厚みをもたらしている。
 多田を演じた瑛太の優しさと憎しみ、後悔の念を引きずる造形が素晴らしい。特に、クライマックスの熱演には目を見張るものがあった。想像していた通りの秘話であったが、彼の告白にはやはり見入ってしまう。
 一方、行天を演じた松田龍平の肩のこらないナチュラルな演技も、瑛太とのバランスで言えば悪くない。

 ストーリーは1年に渡る4章立てで進行する。まず、多田と仰天の出会いを描く「3月」。塾に通う少年の送迎の仕事をする「6月」。このエピソードを受けて二人が"ある犯罪″に巻き込まれる「8月」。そして、二人の過去が露わになる「11月」。各章は夫々に相関がはかられているので独立しているわけではない。したがって、全体としてのまとまり感がある。全て面白く見ることが出来た。

 ただ、薬物絡みの事件には違和感を持ってしまった。今作は全体的にコメディタッチな作りになっているとはいえ、ここだけは本来のトーンよりもかなり喜劇色が強められている。例えば、闇売買の元締めは明らかに「時計じかけののオレンジ」(1971米)のアレックスの物真似で悪ふざけが過ぎるし、その彼が自分の商売の邪魔をした多田に向かって「走れ!便利屋」とエールを送るのも何だか今一つピンとこない。第一このセリフ自体が臭すぎて受け付けがたい。
 事件を追う刑事もストーリーを進めるための解説者のようになってしまった。説明セリフに走り過ぎである。
 これらは原作にあるものなのか、それとも脚色なのかよく分からないが、若干軽薄に感じてしまった。

 監督は大森立嗣。演出自体はこなれていると思った。ただ1点だけ不満を挙げるとすれば、子犬の飼い主を突き止めた先での母親のリアクションがおかしい。行天はロングコート、長髪に無精ひげという格好である。それを娘の新しい担任教師と簡単に受け入れてしまうのは不自然である。ましてや、深夜の突然の訪問である。普通は怪しむべきであろう。
 こういう細かな粗が幾つか気になったが、全体的にはかなりしっかりと作られていて安心して見ることが出来た。時制の接合にも手間取ることなく流麗に演出されている。

 テーマは『親子の絆』と解釈した。多田と仰天の過去、塾の送迎をしてもらう少年の話、木村の一件等、全てに親子関係の問題が絡んでいる。いずれも苦いドラマになっているが、各キャラクターはその経験を通して最後に一筋の光明を見出している。そこにはホッと安堵させられた。
 例えば、少年のエピソードは、もしかしたら母との距離が少しだけ近づいたかもしれない‥と思えた。また、木村のエピソードも、もしかしたら母親と理解しあえる日が来るかもしれない‥という淡い希望を持つことが出来た。
 親は子を選べないし、逆もまたそうである。親子は一生親子なわけで、離れて住んでいても決して消せない絆である。良くも悪くも逃れられないこの"宿命″を暗に示すかのごとく、夫々のエピソードは丹念に積み重ねられている。

 尚、本作はシリアスなドラマを扱ってはいるものの、そこかしこにオフビートな笑いが登場してくる。その中で最も笑えたのは、瑛太の「なんじゃこりゃ~」のセリフに対する松田龍平が「似てない」という突っ込みである。むろん、これは「太陽にほえろ!」における父・松田優作の名セリフである。
[ 2012/12/29 01:05 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/1052-5e7aad66