ヒロインを演じた安藤サクラが良い。
「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」(2009日)
ジャンル青春ドラマ
(あらすじ) 幼い頃から同じ孤児院で育ったケンタとジュンは、今でも同じ解体工事現場で働きながら行動を共にしていた。ある晩、二人はカヨという女をナンパする。飲みに行った後、ジュンはカヨを抱きそのまま彼女の部屋に転がり込んだ。一方、ケンタは現場の先輩・裕也から不当な虐めを受け精神的に参って行った。ついに溜まりかねた彼はジュンと協力して裕也の車と事務所を破壊して、そのまま会社のトラックに乗って逃走した。そこにカヨも加わり3人の旅が始まる。一行はケンタの兄がいる網走に向かって車を走らせるのだが‥。
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(レビュー) 鬱屈した青春を送る若者たちの逃避行をシリアスに綴ったロード・ムービー。
ケンタとジュンの友情、そこに割って入るカヨという人物配置から、何となく「明日に向って撃て!」(1969米)を連想してしまった。この三角形は友情と恋愛が絡み合う実に微妙なものである。
また、3人は親から見捨てられて帰る場所を持たない若者たちである。そこに現代社会が抱える人間の孤児性という問題も透けて見えてくる。希薄な人間関係と言えばいいだろうか‥。「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」というタイトルには、彼らだけの「国」、つまり彼らの孤独感が込められているのかもしれない。そこに親や教師といった大人達は存在しない。以前見た
「KEN PARK ケンパーク」(2002米オランダ仏)にも感じたことだが、若者たちの孤独感が切なく伝わってきた。
監督・脚本は
「まほろ駅前多田便利軒」(2011日)の大森立嗣。ナチュラルな演出で主要3人のやり取りを生々しく切り取っている。ストーリーは淡々と進行していくが、ロードムービーという動きのある舞台装置のおかげで余り退屈感を覚えることはなかった。ケンタの兄というキーマンを設けることで3人の旅の目的が明確に示唆されていることも大きい。ドラマの芯がしっかり立てられている。
欲を言えば、途中で若干ナチュラルさを壊してしまう演出が見られたので、そこは抑制して欲しかったか‥。小林薫演じる廃品回収のオヤジは役を作りすぎているし、ケンタとジュンがキャバクラで浮かれるのも全体の暗いトーンからかけ離れているように思った。そもそも他人の金で豪遊とはただの甘えたガキにしか見えず、それまでせっかく積み上げてきた荒んだ若者像が一気に壊されてしまったような気がしてシラけてしまった。
逆に、養護学校のシークエンスはまるでドキュメンタリーのように撮られていて、ここだけがドラマじゃなくて本物のように思えた。
さて、今作の見所は何と言ってもケンタが兄カズに再会するシーンだろう。この場面は旅の終着点であり物語のクライマックスでもある。ケンタは幼い頃から心の支えだったカズに会えば閉塞した状況を打開できる、一筋の希望を見いだすことができる‥そんな淡い希望を持っていた。ところが、実際に会ってみると‥という所がこのドラマのミソである。
"パラサイト″という言葉がかつて世間を賑わせたことがある。結局、ケンタはカズに精神的に寄生し自律できないまま成長した青年なのだと思う。同様のことはジュンやカヨについても言える。ジュンはケンタに、カヨはジュンに精神的に寄生している。三者三様、彼らは皆、愛に見放された精神的"孤児″なのである。この映画を見た人の中には、いつまでも3人で凝り固まってないでもっと外の世界に目を向けるべきだ‥と思う人がいるかもしれない。しかし、仮にそうしたとしても、果たして今の世の中に3人を助けてくれるような人がいるだろうか?それは現実的に言ってかなり難しいと思う。
彼らのように行き場を求めて彷徨い歩く若者たちは、今の世の中にはたくさんいるのかもしれない。そんなことを思うと何ともやりきれない思いにさせられる。そして、この映画はそこをきちんと正面から描いているのが尊いと思った。
ケンタ役の松田翔太、ジュン役の高良健吾、ジュン役の安藤サクラ、若手俳優達の飾り気のない演技も良かった。
特に、安藤の存在感は抜群である。本作はとにかく彼女に対する扱いが酷すぎる。例えば、公然とブス呼ばわりしたり、トラックの荷台に1人で寝かせたり、誰もいない深夜のパーキングで置き去りにしたり、ワキガ臭をバカにされたりetc.普通の女優が演じるには抵抗があるところを、彼女は果敢に演じている。そして、ラストの彼女の苦渋の表情。これがこの映画を見事に引き締めていると思った。とことん貶められたダメ人間の末路としては十分すぎるほどの説得力である。
また、本作ではもう一人強烈な個性を持った俳優が登場してくる。それは、件のクライマックスで登場するカズを演じた宮崎将だ。ここはケンタ役・松田翔太の演技も中々に良いのだが、宮崎の不敵な面構えの前ではそれすらもかすんでしまう。尚、後で知ったのだが彼は宮崎あおいの兄だそうである。演じる役によっては化けるのではないだろうか?それくらい強烈な個性が感じられた。