これまでとテイストが異なる三木聡作品でしみじみとさせる。
「転々」(2007日)
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ) 大学8年生の文哉は、借金の返済に追われながらダラダラとした毎日を送っていた。ある日、借金取りの福原から100万円をやる代わりに一緒に霞ヶ関まで行って欲しいと頼まれる。こうして文哉は福原と一緒に東京を歩き始めるのだが‥。
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(レビュー) 冴えない青年と借金取りの友情をしみじみと描いたロード・ムービー。
監督・脚本は
「インスタント沼」(2009日)、
「図鑑に載ってない虫」(2007日)、
「ダメジン」(2006日)、
「亀は意外と早く泳ぐ」(2005 日)の三木聡。シュールな脱力系コントを合間に挟みながら、奇抜なキャラが右往左往するというスタイルは、これまでどおり。但し、今回は文哉と福原の擬似父子愛がテーマになっており、そこにかすかなペーソスが生まれる。ギャグ一辺倒だったこれまでの作品とは一味違ったテイストになっていて新鮮に見れた。
物語は至極シンプルである。サブキャラもテーマを明確化するという意味ではよく働いているし、最後 のオチも予想通りではあるが上手くまとまっていた。常道をいく分、これまでの作品に比べて入り込みやすい映画になっていると思う。
例によって、ストーリーを分断するようにコントも度々出てくるが、少なくともストーリーの邪魔になる程ではない。コメディに特化するのならともかく、こういうテーマで"はっちゃけ″られてしまうと見ていて辛くなってしまうので、今回くらいギャグを抑え気味にしたのは正解であろう。
後半の文哉の心情にも自然に擦り寄る事が出来た。文哉と福原の別れはすでに新宿で一度描かれるが、そこに連なる形で描かれる2度目の別れ。これは1度目の別れよりも擬似家族のメンバーが増えた分だけ、いっそう文哉を寂しくさせる。この展開にも気持ち良く乗っかることが出来た。所詮は疑似家族である。いずれ別れが来るのは文哉自身も予感していたのだろう。だからこそ、この時の別れにはしみじみとさせられる。
尚、小ねたで笑えたのは、だるま、時計店、ハンガー、引き戸のギャグだった。また、三木作品の常連、岩松了、ふせえり、松重豊のトリオも今回は登場してくる。彼らのやり取りは今回も相変わらず冴えている。
また、三木監督お得意の非日常系キャラは今回も登場してくる。アマチュア画家、町のギターマンあたりは出色の造形で面白い。
タレントのキャラクターを利用したネタもある。今回はチョイ役で登場する石原良純が良い味を出していた。一方、岸辺一徳のネタは少々しつこ過ぎたきらいがある。