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奴らを高く吊るせ!

凱旋後のイーストウッドの姿に痺れる。
奴らを高く吊るせ! [DVD]奴らを高く吊るせ! [DVD]
(2006/10/27)
クリント・イーストウッド、インガー・スティーブンス 他

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「奴らを高く吊るせ!」(1968米)星3
ジャンルアクション
(あらすじ)
  元保安官のクーパーは牛追いをしていた。しかし、その牛は騙されて買った物であることが分かる。追いかけてきたならず者たちに、牛泥棒とみなされてクーパーは首を吊るされた。その後、囚人を護送中の保安官に救出され、彼は罪人として投獄されてしまう。このままでは無実の罪で死刑になってしまう‥。そう思った矢先、町の権力者で判事のフェントンがクーパーの職歴に注目して彼を新たな保安官に任命した。こうしてクーパーは自分を襲ったならず者たちを追いかけるのだが‥。
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(レビュー)
 マカロニ・ウェスタンで一躍人気スターになったC・イーストウッドがアメリカに凱旋して初めて撮った西部劇である。設定など一応西部劇の体をとっているが、どことなくマカロニ・ウェスタンっぽい作りになっているところがユニークである。おそらく彼のイタリア時代の作品を相当意識して作られたのだろう。

 物語は、クーパーが自分を縛り首にした9人のならず者たちを捜し出して復讐を果たそうという、いわゆる復讐劇となっている。
 まず、クーパーは判事から、ならず者たちを生きて捕まえるよう命令される。しかし、私怨を燃やす彼はそれを無視して、正当防衛を理由に彼らの一人を射殺する。このあたりは如何にもマカロニ・ウェスタン調だ。
 しかし、中盤から彼の復讐心は揺らぐ。一味の仲間、若い二人の少年を逮捕するのだが、まだ年端もいかぬ未成年であること、リーダーの命令には逆らえなかったこと、縛り首に直接手を貸さなかったことなどを理由にクーパーは彼らを許そうとする。
 更に、後半に入ってくると、過去を引きずって生きる悲劇のヒロイン・レイチェルの登場で、彼は慈愛の精神、復讐の無意味さを彼女から教わっていく。
 一見するとマカロニ調なハードなリベンジ・ムービーから、中盤から復讐の意味を問うた骨のあるドラマになっていく所が面白い。クーパーのキャラクター・アークもはっきり示されていて中々ドラマチックな展開を見せている。

 ただし、ラストに関しては余り感心しなかった。何というか、中途半端な終わり方になってしまっている。そもそも、彼の復讐はクライマックスで終わっており、その後の展開はどう見ても惰性でしかない。バッジを巡って判事とやり取りする所で、彼がどのような決断をとるのか?それは見ている観客が考えればいいのであって、映画の中で語るべきものではないだろう。作品のテーマはその手前で決着しているので、その後の展開は蛇足に思えた。

 キャストでは、やはりイーストウッドのニヒルな佇まいが良かった。それまでに培われてきたヒーロー性、男臭い色気が、随所に魅力を放っている。

 また、彼以外の個性的なサブキャラ達も中々に良かった。
 特に、法の下で正義を翳すフェントン判事の”含み”を持った造形が素晴らしい。準州であるオクラホマを正式な州にしようと犯罪の取り締まりに邁進していく彼は、問答無用に絞首刑を敢行するせいで人々から批判を受けるようになる。町の浄化に勤めようとすればするほど、行き過ぎた行動として捉えられてしまう。しかし、それでも彼は絞首刑を止めない。
 彼が目に涙を浮かべながら死刑執行を命じるシーンがある。当然これは一種のパフォーマンスであろう。町の人々に、自分は仕方なくやっているのだ‥ということを必死にアピールしているのである。彼は、復讐を果たすことで徐々に無情を知っていくクーパーとはまったく正反対なアプローチを辿っていくキャラクターである。二人のキャラクター・アークの対比がこのドラマを面白く見せている。

 また、レイチェルのミステリアスな造形も中々に良かった。彼女は囚人が町に護送されてくると必ず全員と面通しをする。その理由は終盤に判明するのだが、実は彼女もクーパー同様、復讐に燃える悲劇のヒロインだったことが分かる。このあたりの”含み”を持たせた演技も見事だった。

 他に、敵役である9人の内の一人、ストーンの顛末も印象に残った。人間の心の弱さをよく表している。

 一方、今作で勿体ないと思ったのは、一部の特殊メイクだろうか‥。クーパーの首には吊るされた時にできた痣があるのだが、これが場面によって付いていたり付いてなかったりしていた。細かな所だが重要な所である。気を配ってほしかった。
[ 2013/01/14 18:14 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

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