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不良少年

少年院の実態に迫った問題作。
「不良少年」(1961日)star4.gif
ジャンル青春ドラマ・ジャンル社会派
(あらすじ)
 不良少年・浅井は友人たちと強盗をして逮捕された。家裁での審判を経た後、首謀者である彼だけが特別少年院に収監される。クリーニング部に配属になった彼は、そこで年長者たちから虐めを受けるようになる。
映画生活

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(レビュー)
 不良少年たちの少年院生活をドキュメンタルに綴った異色の青春映画。

 銀座の街を歩いたことはない、護送車の中から見ただけだ----
 
 浅井のこのモノローグから始まる今作は、公開当時、果たして大人たちの目にはどう映ったのだろう?おそらくかなり強烈に映ったのではないだろうか。余りにも生々しい青春ドラマで、正に時代を証憑した映画のように思う。

 監督・脚本は羽仁進。演技未経験の実際の不良少年たちを臨場感たっぷりに切り取った撮影スタイルは、彼の過去作「絵を描く子供たち」(1956日)「教室の子供たち」(1954日)といったドキュメンタリー映画の延長線上にあるように思う。子供たちをカメラに慣れさせてから撮影に入ったと言われている前2作は今見ても新鮮に感じられるが、今度は素人に演技をさせるという難題に挑戦している。いかにもドキュメンタリー出身の羽仁監督ならではのアイディアであるが、それが見事に作品のリアリズムに繋がっているように思った。普通の劇映画には無い臨場感が感じられた。

 たとえば、浅井と年長者が取っ組み合いの喧嘩をするシーンがある。これなどは手持ちカメラで延々と追いかけながら二人の闘争心を生々しく切り取っている。また、浅井の回想シーンの一つ、歓楽街を悪友たちとぶらつく光景は延々と望遠レンズで捉えられており、これも生々しかった。
 このようにカメラは過度に浅井の心中に迫らず、孤独感、怒り、悲しみといった心情をあくまで客観的な位置から見つめ続けるのみである。何となくベルギーの巨匠ダルデンヌ兄弟の映画を彷彿とさせる。しかし、こちらはほとんどが演技経験ゼロの実際の不良少年たちである。演技を付けるのはプロの俳優よりもかなり難しい。それを難なくやり遂げてしまう羽仁進の手腕には驚かされるばかりだ。

 但し、今作は映像スタイルこそドキュメンタリー・タッチが貫かれているが、物語自体は少年院で育まれる友情という、言ってしまえばかなり通俗的なものである。そのため映像と物語の食い合わせが若干悪いように感じる個所が出てしまっている。
 例えば、度々挿入される浅井のモノローグは、自身の心中を饒舌に"言わされてしまっている″感があり、余り生々しさは感じられない。幼少時代の回想シーンもバックストーリーの説明に終始するばかりで、そこにどうしても作為性が滲み出てしまう。映像は終始ドキュメンタリー・スタイルだが、所々の演出に関してはむしろドラマチックに仕向けようとする意識が感じられる。

 尚、本作の白眉は何と言ってもラストだろう。塀の中から見た浅井の後ろ姿で終わるのだが、この突き放したショットが映画全体を引き締めている。荒廃した少年院生活を終えた彼に待ち受けているのは明るい未来か?それとも厳しい現実か?そこを曖昧にしたまま終わらせている。この少年が辿る先に何を見ますか?と監督が問いかけているような感じがした。余韻を引くエンディングである。

 個人的には、前半の家裁での少年の態度を見る限り、今回も更生した"振り″をしているだけではないのか‥という感じがした。彼の目の前にはやはり厳しい現実が待っているのだ‥と解釈した。

 劇中には特別少年院の実態が色々と出てくるので、そこも興味深く見ることが出来た。
 例えば、教官は絨毯を敷いてその上を歩いて各部屋を巡回をする。足音で感づかれないように監視するためである。また、独房の中で手製の煙草を作るシーンなどは、本来ドラマには余り関係ないのだが、かなり丹念に描写されている。実際に取材しないとこうした所作は分からないだろう。こうした細かい所に対するこだわりも今作のリアリズムに繋がっている。
[ 2013/01/25 01:45 ] ジャンル青春ドラマ | TB(0) | CM(0)

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