イギリスの名優共演の痛快娯楽作!
「王になろうとした男」(1975米)
ジャンルアクション・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) イギリス領のインド。退役軍人のドライポットとカナハンは、一獲千金を狙って内戦で揺れる秘境の地カフィリスタンにやって来た。現地人の振りをしてキャラバン隊に潜り込んだ二人は、極寒のヒマラヤ山脈を乗り越えてようやく目的地に辿り着く。しかし、そこで目にしたのは盗賊による蛮行の数々だった。憤りを感じた二人は村人達を救う王になっていく。
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(レビュー) 元イギリス軍人たちの冒険を描いたアクション娯楽映画。
名匠J・ヒューストンの軽妙、シニカルな演出が冴え渡った快作で、ドライポットとカナハン、二人の息のあったコンビが終始面白く見れる作品である。ある種バディ・ムービーとして楽しめた。
ドライポットを演じるのはS・コネリー、カナハンを演じるのはM・ケインである。言わずと知れたイギリスを代表する名優二人の掛け合い。それが今作一番の見所である。二人が向きあってマッチの火をつけるところなどは最高に格好良かった。また、M・ケインの「死んでも誰も泣かせないぜ」というセリフには痺れさせられた。
今作にはコミカルな場面もたくさんある。尼僧の一行が戦場を横断するシーンは最も笑えた。戦場の真只中を一行が渡ろうとすると、全員武器を捨ててひれ伏すのだ。モブを使った大掛かりな撮影をしてながら、この人を食った脱力ギャグ‥。まるでドリフのコントのようだが、実に面白く痛快だった。
物語は、カナハンが旧知の新聞記者に旅の話を聞かせてやる‥という回想形式になっている。この二段構成も良い。というのも、野心を持った軍人が一国の王になっていくという英雄譚は、普通に考えたらありえないような話である。それが回想形式で語られることで、まるでファンタジーのようになるからだ。嘘かもしれないし本当かもしれない‥。そんなどっちつかずな印象がこの話にロマンティズムを与えている。
ちなみに、後で調べて分かったのだが、カフィリスタンという国はかつて実際に存在した国だそうである。劇中に登場するアレクサンダー大王の逸話も本当にあった話だし、そう考えると一見して突拍子もない寓話のようなこの物語も何だかリアリティが湧いてくる。もしかしたら歴史の片隅に本当に転がっているような、そんな奇跡のようにも思えた。
ただ、フリーメイソンとアレクサンダー大王を結びつけるのは、いくらなんでもトンデモ説である。この二つに繋がりがあるなんて何の根拠もない。単に例のマークが似ているというだけである。それを結びつけてドラマが急展開されていくのは、さすがに強引という気がした。
もっとも、J・ヒューストンという監督の資質を考えた場合、この荒唐無稽な創作は分からないでもない。例えば、19世紀末に活躍した画家ロートレックの半生を描いた「赤い風車」(1952英米)では、ムーラン・ルージュを異様なカオス的空間に塗り固めて描景した。J・ヒューストンは持ち前の幻想趣味、猥雑趣味、奇形趣味で、度々作品の根底を支えるリアリティをいとも簡単に覆して見せることがある。だから、今回の大ボラみたいな話も、"らしい″と言えば"らしい″。