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陸軍中野学校

非情なスパイの運命を冷徹に描いたサスペンス作品。
陸軍中野学校 [DVD]陸軍中野学校 [DVD]
(2012/06/29)
市川雷蔵、小川真由美 他

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「陸軍中野学校」(1966日)star4.gif
ジャンルサスペンス・ジャンルロマンス・ジャンル戦争
(あらすじ)
 日中戦争が激化する中、予備士官学校を卒業した三好次郎は、草薙中佐が所長を務める陸軍中野学校に呼び出された。そこには彼の他に総勢18名の若者たちがいた。彼らはそこでスパイ養成の訓練を受けることになった。しかし、訓練は想像以上に厳しく、ある者は自らの命を絶ち、ある者は気がふれて脱落していった。そんな中、次郎は婚約者・雪子を捨てて訓練に没頭していく。そして草薙も一目置く優秀な成績を収めていった。一方、次郎を忘れられない雪子は、勤めていた商社を辞めて彼を追いかけるようにして陸軍参謀本部のタイピストとなる。彼女はそこで次郎の消息を探ろうとするのだが‥。
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(レビュー)
 市川雷蔵がニヒルなスパイに扮するサスペンス作品。今作のヒットを受けてシリーズ化され全部で5本作られた。

 雷蔵演じる次郎のストイックな成りも見所なのだが、それ以上に監督・増村保造のクールなタッチが心地よい。同じ陸軍の内実に意欲的に迫った同監督作の「兵隊やくざ」(1965日)とはまた一味違った内幕物になっている。

 ちなみに、「兵隊やくざ」も勝新太郎の豪快なキャラクターが人気を博しシリーズ化されたが、増村の偉い所は第1作を撮った後に、シリーズが人気になっても続編のメガホンを取らなかったことである(但し最終作となる新兵隊やくざは監督を務めた)。こうした人気俳優を擁したシリーズには、どうしても俳優のイメージがつきやすい。そうなれば当然、自分の作家としての色を出しにくい状況にもなる。彼はそうなる前にシリーズから手を引いているのだ。「座頭市」シリーズの三隅研次や「男はつらいよ」シリーズの山田洋次等、シリーズを重ねて行った監督たちとは違い、彼は我が道を行くタイプの作家である。唯我独尊を貫いたその姿勢には頭が垂れる。この「陸軍中野学校」も監督したのは第1作のみである。

 何と言っても、見所となるのはクライマックスの次郎と雪子の対峙だろう。ここで次郎が下した決断には何とも言えぬ哀愁が沸き立った。本作はスパイを扱っていることからサスペンスを売りにした娯楽作品であるが、一方で戦争によって引き裂かれた恋人たちのメロドラマでもある。変に情に訴えず最後までクールに描き切った増村の演出には唸らされる。

 また、軽快に進む展開も良い。約90分というタイトな時間の中に、スパイ養成の訓練や脱落者たちの悲劇のエピソード、雪子の切ない恋心などが無理なく詰め込まれている。金庫破りのプロなど、少しコミカルさを狙ったキャラも登場し終始飽きなく見れた。

 ただ、コンパクトにまとめた分、どうしてもキャラクターの内面描写は底が浅い。次郎は最初から草薙中佐を信奉し、中野学校での訓練に意欲を燃やすが、その境地に至る手前にもう1クッション葛藤があって欲しかった。他の生徒たちが不平を漏らす中、彼は冷静に傍観するが、どうしたらそういう冷めた目で見れるのだろうか?そこに至るドラマが欲しい。また、次郎を失った雪子の心理変化にも奥行き不足が感じられる。このあたりの人物心理の表層化は、明らかに時間不足から来る弊害だろう。

 時に、本作に登場する中野学校の所長・草薙中佐のしたたかさは尋常ではない。訳も分からず集められた若者たちを欧州列強からの解放という題目で物の見事に洗脳し、旧知の仲である諜報部の所長に貸しを作って学校の予算増額を引き出してみせる。加東大介が演じているのだが、飄々としたイメージからは想像もつかない、かなりのやり手である。名バイプレーヤーの面目躍如といった感じで印象に残った。
[ 2013/02/08 21:09 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(2)

お疲れ様です。
このシリーズですと大詰めでの、
『私もスパイだった。私の心も死んだ。』という、淡々かつ重い台詞が印象に残りますが、
元々この頃の大映ですと、矢継ぎ早に新作公開してましたから、その辺の弊害もあったのではと思います。
雷蔵丈も大映でのメインは眠狂四郎(こちらも12作作られたシリーズ)でしたし。
残り4部作の記事も楽しみにしております。
今回はこれにて。
[ 2013/02/11 07:52 ] [ 編集 ]

「映画は大映」というキャッチコピーは伊達じゃなく、この頃は市川雷蔵、勝新太郎といった看板スターで意気揚々としていた頃でした。
シリーズ物の利点・欠点はありますが、当時は人気絶頂でしたから引くに引けない事情もあったのでしょう。
そして、おそらく日本のシリーズ物の最後が「釣りバカ日誌」だったのかもしれません。
なんだか恒例行事が無くなってしまったみたいで寂しくもあります。
[ 2013/02/14 01:28 ] [ 編集 ]

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