増村&白坂コンビが送る風刺喜劇。
「巨人と玩具」(1958日)
ジャンル社会派・ジャンルコメディ
(あらすじ) キャラメル製造会社ワールドの宣伝部・西は、上司の合田課長と新商品の売り出しに躍起になっていた。実は、合田にはある秘策があった。それは専属モデルを使った大胆な広告宣伝である。すでに合田は下町に住む虫歯の少女・京子を発掘していた。見た目は決して魅力的ではなかったが、プロのカメラマンに預けたことで彼女は華麗に変身する。そして、彼女を使ったCMは思わぬ評判を呼び、見事に商品は大人気となった。その一方で、京子の付添い人になった西は彼女に惚れ込んでいく。次第に恋仲になっていく二人‥。その前に新たな美女、ライバル会社アポロの宣伝担当・雅美が現れる。
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(レビュー) キャラメル会社の宣伝部の悲喜こもごもをシニカルに綴った風刺コメディ。
大の大人がお菓子の宣伝を巡って口論したり、裏切ったり、一体何をしているのか?と突っ込みを入れるようになったらこの映画の「勝ち」だろう。実にバカバカしいのだが、そこが実に面白い。
大筋はいたってシンプルである。ワールド、ジャイアンツ、アポロという業界3社の熾烈な売上競争を背景にした熱き宣伝マンたちの愛憎劇である。大量消費を扇動するマスメディアに対する痛烈な批判も掲げられており風刺劇としての歯ごたえも十分。特に、ラストの西の姿にはサラリーマンの悲哀を見ずにいられなかった。正に会社人間の顛末であり印象に残る。
監督は増村保造。作品が持つテーマをカリカチュアされたキャラを使って明確に打ち出した今作は、彼の監督としての資質に照らし合わせるとかなり異質という気がする。しかし、娯楽要素を多分に入れることで、エンタメに特化した所に彼の手腕が感じられる。オープニングや後半に登場する歌には奇妙な面白さが感じられるし、メディアに祭り上げられていく京子の変化も実にドラマチックで面白かった。
また、異様なくらい軽快なテンポで話が進むのも特徴的だ。ここまでセリフ回しが早いと、まるでB・ワイルダー監督の映画を見ているようで気持ちがいい。
脚本は白坂依志夫。彼は増村保造とのコンビ作が多い。作風はまったく異なるが、江戸川乱歩の強烈な世界観に魅せられた
「盲獣」(1969日)も彼と増村のコンビだった。奇抜な映像先行型の「盲獣」と違い、今回は彼のシナリオが軽快なセリフ回しと早いカッティングで活き活きと表現されており、改めて両者の相性の良さが伺える。