古典戯曲の映画化。増村保造の才気がほとばしるクライマックスシーンが忘れがたい。
「曽根崎心中」(1978日)
ジャンルロマンス
(あらすじ) 真面目一辺倒な商人・徳兵衛と女郎・お初は相思相愛の仲だった。徳兵衛はいつかお初を身請けしたいと思い、お初も彼以外の客を取らずその時が来るのを待っていた。ある日、徳兵衛は店の主人から娘との祝言の話を持ちかけられる。すでに実家に支度金・銀2貫を支払ったと言われたが、徳兵衛は寝耳に水でこれを断った。その結果、彼は主人から勘当されてしまう。徳兵衛はどうしても主人から許しを請おうと、実家に戻って銀2貫を取り立てて返済しようとした。ところが、戻ってくる途中で友人・九平次に会い、借金に苦しむ彼のためにその金を貸してしまう。一方、その頃お初には上客からの身請け話が持ち上がっていた。
楽天レンタルで「曽根崎心中」を借りようgoo映画映画生活ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 近松門左衛門の有名戯曲、心中物の代表作とも言うべき古典を鬼才・増村保造が映像化した作品。
文語調なセリフ回し、大仰な演技は、原作を真面目に再現しようとした結果なのだろう。しかし、結論から言うと、映画としてのリアリティを考えた場合それらが少々くどい。ドラマへの集中力を欠き今一つ入り込めなかった。どうせやるならいっそのこと世界観自体も、木下恵介監督作の
「楢山節考」(1958日)のような舞台劇風にしてくれればまだしっくりくるのだが、どうも画作り自体が中途半端である。
また、音楽も今一つしっくりこない。今作に主演している宇崎竜童が音楽も兼務しているのだが、現代的なサウンドが古典の世界に不似合に感じた。野心的な試みは買うが、これも好き嫌いが分かれると思う。
物語自体は長く語り継がれる古典だけあって、しっかりと構成されており最後まで面白く見ることが出来た。シンプルなドラマながら力強さがある。また、サブキャラも上手く機能しており、物語に無駄がない。クライマックスへ至る過程もそつなく盛り上げられており流石である。
印象的なのは、やはり壮絶なクライマックス・シーンである。増村監督ならではのラジカルな感性が炸裂している。
徳兵衛とお初が愛し合うのは序盤だけである。それ以降はずっと引き裂かれた状態が続き、最後の最後にこの衝撃的なクライマックスを迎える。非常にドラマチックである。ちなみに、俺にはこの場面は二人にとっての最後のセックスのように思えてならなかった。過剰な鮮血がどこか艶めかしい‥。
キャストではお初を演じた梶芽衣子の情熱的な演技が印象に残る。九平次に女郎としての生き様を言い放つシーンは正に圧巻の一言である。
また、九平次を演じた橋本功の憎々しい演技も素晴らしかった。先述の通り、今作は全編大仰な演技が横溢するのだが、彼の悪辣外道なセリフ回しと表情は頭一つ抜きんでてる。ここまで憎々しさに徹せられると逆に文句も出ない。