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「女の小箱」より 夫が見た

多彩な女たちが魅せるハードなロマンス・サスペンス。
「女の小箱」より 夫が見た [VHS]「女の小箱」より 夫が見た [VHS]
(2001/05/11)
若尾文子、田宮二郎 他

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「「女の小箱」より 夫が見た」(1964日)star4.gif
ジャンルサスペンス・ジャンルロマンス
(あらすじ)
 都内でナイトクラブを経営する石塚は、敷島化工の買収を企てていた。それを察知した敷島化工は、株式課長・川代に買収の阻止を命じる。そんな仕事ばかりの川代に妻・那美子は不満を感じていた。ある日、那美子は親友に連れられて偶然、石塚の店を訪れる。石塚は彼女に近づいて川代が持っている株式名簿の情報を手に入れようとするのだが‥。
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(レビュー)
 野心溢れる青年実業家と夫婦生活に不満を抱える新妻が不倫関係に溺れていくサスペンス作品。

 ストーリー自体はいかにも2時間ドラマ的な内容で、中には強引な個所もあり余り感心できなかった。大体によって株式名簿を持ち歩くなんて普通に考えたらありえないだろう。
 しかし、そうしたシナリオ上の穴はあるにせよ、監督・増村保造のスタイリッシュ且つ軽快な演出が全体を引き締め、中々の快作に仕上がっている。

 白眉は壮絶なクライマックス・シーンである。前回紹介した「曽根崎心中」(1978日)にも言えることだが、増村監督は最後の最後にとんでもない物を見せてくれる。正視できないような過激なバイオレンスを堂々と出してくるのだ。
 更に、ここで石塚が採った行動は、人間の弱さ、愚かさを見事に示していると思った。それに寄り添う”相手の女”の愛もよく理解できた。いずれも嘘偽りない本音を曝け出した所に見応えを感じる。

 そして、この”最後の選択”を石塚に迫った那美子の残酷な、しかし女としては当然とも言える行動にはぞっとさせられた。確かに彼女の狂気的愛は理解できないと言う人もいるだろう。自分はこれだけ愛している。だからあなたも同じように私を愛しないさい‥という一方的な偏愛は、もはやサイコパス的とも言える。だが、夫に見捨てられた悲痛の彼女を誰が咎められよう。箱入り娘よろしく那美子はまるで少女のように純粋な愛を求めたのだ。その辿ってきた人生を鑑みれば、この時の彼女の言い分はある意味で当然の主張のようにも思えた。

 那美子を演じるのは若尾文子。清楚な佇まいとは裏腹に、時折熟れた肉体を持て余しながら各所でエロティックな裸体を披露している。冒頭の入浴シーンの乳房を見せないカット割りには、逆に想像を掻き立てられ助平心をくすぐられてしまった。このあたりの"見せない”増村演出は流石である。増村と若尾のタッグ作は多く、今回も相性はバッチリである。

 他に今作には3人の女たちが登場してくる。これも一々個性的で面白かった。
 まず、一人目は石塚の計画に協力するバーのマダム洋子である。彼女は石塚の野望ために体を使って株式買収の情報を収集する女である。全ての計画が成功した暁には結婚を約束されていたが、那美子の登場によってそれが叶わなくなってしまう。彼女の嫉妬と情念には恐ろしくなった。岸田今日子が独特のオーラを発しながら怪演している。少女のような佇まいの若尾文子との対照的なキャラ立ても見事であった。

 二人目は、石塚の秘書エミである。彼女は今回の事件を起こすキーパーソンである。愛に翻弄され身を亡ぼしていく彼女も、ある意味では野心を持った石塚と同類の人間と言うことが出来よう。その顛末は実に不憫であった。

 三人目は那美子の親友で開業医をしている独身中年女性である。彼女は、かつては結婚願望があったようだが、今では気ままな独身生活を満喫している。那美子や他の女性たちと違って、色々な男達と遊んでいるだけあって恋愛の引き際も熟知している。見た目は決して美人ではないのだが、それがかえって深みにはまらないで済んでいる理由なのかもしれない。自由気ままに生きる彼女が、実は一番したたかな女性な感じがした。

 このように個性的な女性キャラが登場してきて、この映画は様々な男女の愛憎が繰り広げられている。そして、その根底では必ず男女の性愛が息づいており、この生々しさは増村保造にしか出せないカラーだと思った。

 また、セリフも所々に良いものが見つかった。「夫婦は愛ではない、生活だ」「感謝と愛情は別だ」等、色々と含みを持ったセリフが登場してきて考えさせられた。
[ 2013/02/14 00:58 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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