FC2ブログ










かぞくのくに

大きなテーマを語る方法としてこういうやり方もある‥という事を改めて知らせてくれる逸品。
pict175.jpg
「かぞくのくに」(2011日)star4.gif
ジャンル人間ドラマ・ジャンル社会派
(あらすじ)
 都内で小さな喫茶店を経営する在日朝鮮人一家の元に、北朝鮮に行っていた一人息子ソンホが25年ぶりに帰ってくる。彼は日本から北朝鮮へ移住する帰国事業の犠牲者だった。脳腫瘍の治療のための3か月という期限付きだったが、両親や妹のリエは久しぶりの再会に喜んだ。しかし、家族の傍には常にヤンという監視人が付いていた。そして、ソンホも何故か浮かぬ表情を滲ませる。
goo映画
映画生活

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ


(レビュー)
 在日朝鮮人一家の数奇な運命をシリアスに綴った社会派人間ドラマ。

 日々のニュースで北朝鮮の様子については見聞しているし、かつて"地上の楽園″と言われて向こうへ渡った人がたくさんいるということも知っている。しかし、多くの日本人にとってはその実態は知らないだろう。渡航した人々のその後はどうなったのか?残された家族はどうしているのか?この映画はそのあたりの所に深く切り込んでいる。
 監督・脚本は在日コリアン2世ということだ。そういう意味ではかなりの真実味も感じられる。また、ここまで実態に迫った映画は日本人には到底撮れまい‥とも思った。

 物語はソンホの帰国から始まる。歓迎する家族、友人達を前に何故か彼は浮かない表情を滲ませる。久しぶりの再会にどう喜んでいいか分からないという戸惑い。あるいは、北朝鮮政府から言動を慎むよう厳しく言い渡されているということもあろう。だが、彼が苦虫を潰したような表情を崩さない理由は、これらとは別にもう一つあった。それは後半で判明する。噂ではよく聞くが、実際にはこんな風にして"行われている″のか‥ということが分かって興味深かった。

 この映画は国家間の狭間で犠牲になった家族の悲惨な姿を通して、体制・政治批判というテーマが熱く語られいてる。実に社会派的な側面を持った作品だと思う。
 ただ、物語のベースとなっているのはあくまで家族ドラマである。そこに我々一般人が見てもフィットしやすい"語り口″の工夫が凝らされている。フラットな目線で見ることができ、我々が知らない所で一体何が行われているのか?彼らはどんな苦しみを抱えているのか?それがストレートに伝わってきた。

 ちなみに、北朝鮮を批判する映画は過去にもあった。例えば、脱北した男が家族の元へ帰ろうと苦闘する「クロッシング」(2008韓国)という映画は記憶に新しい。あれも根本には家族愛のドラマがあった。そして、その背景には北朝鮮い対する憤りがあった。これは体制が変わらない以上、決してなくなるものではないだろう。

 劇中で脳外科医の医師がこんなことを言っていた。これは個人ではどうにもできない問題です‥と。ソンホと家族の絆は、もはや国家間のレベルでしか修復できない問題となっている。25年にも渡る彼らの苦しみには、抗えない血、国家という枷が重くのしかかっている。これを解消するのは容易なことではないと思う。

 ラストが秀逸だと思った。抗えない血、国家に戦いを挑もうという強い信念が感じられたからだ。監督が伝えたいメッセージは、このラストに集約されていると思う。

 また、今作はソンホたち家族の一方でヤンという監視員の葛藤も描かれている。こちらも見応えが感じられた。任務が絶対的な命令である彼の立場は極めて危うい。彼にも家族がいるし、一人の人間である以上良心だってあるはずである。そんな彼は、ソンホ達を一体どう見ていたのだろうか?後半のホテルのシーン、ラスト直前の出立のシーン。この二つから彼の揺れ動く心情が見て取れる。彼もまた血と国家に縛られて生きる悲劇の男‥と言えるのかもしれない。

 キャストは見事なアンサンブルを見せている。ソンホ役の井浦新、リエ役の安藤サクラ、父役の津嘉山正種、母役の宮崎美子等、夫々に見事な好演を披露している。
 ヤン役は「息もできない」(2008韓国)で鮮烈な監督デビューを果たしたヤン・イクチュンが演じている。「息もできない」の時とはガラリと変えた役作りで意外だった。

 尚、このドラマは実にオーソドックスなプロットに則って作られていると思う。物語の基本定型。主人公が行って帰ってくる‥というドラマであり、取り立てて目新しいわけではない。結末は悲劇的な締めくくり方になって梨うが、これは"上昇″or"下降″のドラマで言えば後者に当たる。このプロットを借りれば他にもいくらでもドラマは作れる。しかし、要は本作のような秀逸なモチーフ選び、そこが肝なのだろう。改めて映画はモチーフが重要であるこを認識させられた。

 ただし、一つだけ演出で余り好きになれなかった箇所があった。劇中で"ある歌″が印象的に登場してくるのだが、これをラスト直前で口ずさむのはベタ過ぎて個人的には受け付けがたい。出来ればあそこはそのままそっとしておくか、別のアイテムを用いて悲しみを表現して欲しかった。
[ 2013/02/20 01:03 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/1076-bb685963