見かけの可愛らしさに騙されたらとんでもない!下品でノスタルジックなオッサン御用達映画だった。
「テッド」(2012米)
ジャンルコメディ・ジャンルファンタジー
(あらすじ) 少年ジョンは、クリスマスに両親からテディベアのぬいぐるみをプレゼントされる。ジョンはそれに"テッド″と名付けて一緒にベッドに入って寝た。翌朝、目を覚ますとテッドに魂が宿っていた。喋るぬいぐるみとして世に出たテッドは人気者になっていく‥。それから27年後、成人したジョンは今でもテッドと暮していた。テッドはマリファナ中毒のダメ中年に成り果て、すっかり皆からも忘れ去られていた。ジョンには3年間付き合っているロリーという恋人がいる。しかし、最近彼女との関係が上手くいってなかった。全ては片時も離れないテッドのせいである。ロリーはジョンにテッドと別れるように言うが‥。
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(レビュー) 喋るクマのぬいぐるみが騒動を巻き起こすファンタジー・コメディ。
テッドは見かけの愛らしさとは裏腹に、中味はただの下品な中年オヤジである。かつては人気者だったが、今ではマリファナ&DVD三昧のぐうたらな生活に溺れている。この外見と中味のギャップが本作の肝であろう。
27年間、テッドと一緒に過ごしてきた冴えないサラリーマン、ジョンはすっかり彼の生き方に感化されている。ぐうたらなテッドと一緒にいることで、いつまでたっても大人になりきれないダメ人間になってしまったのだ。その良い例が、序盤の出勤風景である。遅刻の言い訳が、僕のせいじゃない‥って、お前は小学生か!と突っ込みを入れたくなった。
かようにジョンは大人としての責任感を全く持たない半人前である。もっとも、ある意味では少年のハートを持った魅力的な男性‥と評することも可能かもしれない。現にロリーはその純粋な所に惚れたのだろう。
しかし、さすがにいつまでたっても半人前ではロリーも溜まったものではない。彼女は、私とテッドどちらを選ぶの?とジョンに迫る。果たしてジョンはどちらを選ぶか‥というのが、このドラマの本文である。これは言わば大人になり切れないジョンの成長ドラマであり、彼とテッドの友情ドラマ、ロリーの恋愛ドラマでもある。
本作は至極シンプルで難しいことを考えずに見れるところが良い。ただ、ラストは釈然としない終わり方で今一つ不満が残った。結局、これではロリーの方から折れた格好になるので、ジョンが成長したかどうか‥という問題が放り出されたままである。何だか全てを丸く収めようとしているのが見え見えで白けてしまった。
それよりも、この映画は至る所に80年代懐古趣味的なマニアックなネタが登場してくる。個人的にはそこが一番楽しめた。
たとえば、今作で最も印象に残るのは、大フィーチャーされている「フラッシュ・ゴードン」(1980米)である。これはアメコミ原作の実写映画で、元々は「スター・ウォーズ」(1977米)で知られるJ・ルーカス監督が映画化を切望していたとも言われているスペースオペラ風のSFアクション作品である。映画の出来に関しては決して好意的に評価されなかったが、今敢えてこれを取り上げた所に俄然嬉しくなってしまった。しかも、その時にフラッシュ・ゴードンを演じたサム・ジョーンズが本人役として登場してくるのである。これはテンションが上がる!
他にも「007/オクトパシー」(1983米)、「ナイトライダー」(1982米)、トム・スケリット、「サタデー・ナイト・フィーバー」(1977米)‥と思わせておいてそのパロディ作「フライングハイ」(1980米)といった様々な80年代ネタが登場してくる。これらはジョンの少年時代と被るネタばかりである。製作サイドは、もちろんその世代に向けてやっているのだろう。幼少時代にこれらを通過してきた自分には溜まらないものがあった。
尚、かなり下品なギャグが出てくるので注意した方が良い。見かけと中身が異なるテッド同様、作品の方も見かけだけでは判断できないPG15である。
ところで、テッドは心は持っていても身体は所詮ぬいぐるみである。中から綿が出て大参事‥なんてことを心配していたら、案の定クライマックスでは大変なことになっていた。「おねがいマイメロディ」というアニメでも同様のネタをやっていたことを後になって思い出した。誰でも考えることは一緒か‥(汗)