ニッチ商法が不況を救う?ローラのキャラが良い!
「キンキーブーツ」(2005米英)
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ) イギリスの田舎町。代々続く靴工場を継ぐことになったチャーリーは、傾きかけていた会社を立て直すにはどうしたらいいか頭を悩ませていた。ある日、出張先のロンドンで暴漢に襲われる。そこを派手な格好をしたドラッグクィーン、ローラに助けられた。それが縁でチャーリーは彼のステージを見る。そこから次のヒット商品のアイディが生まれる。それは男性向けブーツだった。チャーリーは早速ローラを呼び寄せて商品開発に協力してもらおうとする。
楽天レンタルで「キンキーブーツ」を借りようgoo映画映画生活ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 実話を元にしたハートフルなヒューマン・コメディ。父親が残した会社を再建すべくセクシーブーツを開発する若社長の奮闘をユーモラスに描いた作品である。
なんと言っても、ドラッグクィーン、ローラの圧倒的な存在感が秀でている。見かけはいかつい黒人男性で、正直なところ決して綺麗とは言い難い。しかし、煌びやかな衣装を身にまといキッチュでセクシーなパフォーマンスを披露するステージ・シーンは中々どうして、堂に入っている。彼は工場再建を目指すチャーリーを手助けする経営パートナーになっていく。
また、冒頭のシーンからも分かる通り、本作は父と子の愛憎ドラマが一つのテーマになっている。ローラの父に対する愛の渇望が、チャーリーの父親を乗り越えるドラマにリンクして深い感動を呼ぶ。ローラと父親の関係はこの冒頭のシーン以外に、後半にも少しだけ語られているが、これなども彼の悲しみが静かに伝わってくる名シーンだ。
一方で、チャーリーの方に目を向けてみると、こちらは父の残した会社を再建するという、言わば成長ドラマになっている。チャーリーは世間知らずな不肖の息子である。経営難で社員を一斉解雇し、会社の中でどんどん孤立してしまう。また、彼には将来を約束した婚約者がいて、彼女との関係も悪化してしまう。正に人生崖っぷち。チャーリーの苦悩もよく伝わってきた。
そして、男でありながら夜の"華"として生きるローラ、男として何一つ自己実現を果たせないチャーリー、二人の友情にもしみじみとさせられた。
ここで面白いのは、やはりローラのチャーリーを見る目である。彼にしてもみれば、これは単なる友情ではなく同性愛的な感情も混じってくる。
例えば、カフェでブーツの開発を熱心に話す時のチャーリーを見る目は、明らかに友情を超えた目だ。そして、ブーツの完成祝賀会での眼差し。ここはチャーリーを慕うもう一人のヒロイン、ローレンの眼差しと重なり、もはや女としての眼差しに見えてくる。更に、その後のレストランのシーンでは、ローラの恋愛感情が決定的に吐露されている。
しかし、彼のこの愛はチャーリーには届かない。
ラストのメールに切なくさせられた。これはローラにとって実に悲しい結末である。
演出はユーモアとペーソスを交えながら実に手堅くまとめられていると思った。会社の中にはローラを敵視する意地悪な社員もいて、彼との融和も面白いアイディアを使って上手く収集が付けられている。ビジュアル面で言えば、派手なローラのステージ・パフォーマンスが楽しめた。
ただ、欲を言えば、ローレンの立ち回りはもう少し上手く描いて欲しかった気がする。彼女は一応本作でのヒロインである。その割にバックストーリーが少々物足りない。一社員としてではなく、チャーリーにとっての特別な存在であることを分からせるようなシーンが欲しい所である。例えば、ローレンがチャーリーの窮地を救うために何か行動を起こすなど、彼女の恋愛感情がはっきりと表に出てくるような場面があれば、彼女の魅力はもっと引き出せただろう。