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フィリップ、きみを愛してる!

ゲイのカップルをコミカル且つシリアスに描いた中々の佳作。
フィリップ、きみを愛してる! [DVD]フィリップ、きみを愛してる! [DVD]
(2013/05/02)
ジム・キャリー、ユアン・マクレガー 他

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「フィリップ、きみを愛してる!」(2009仏)星3
ジャンルコメディ・ジャンルロマンス
(あらすじ)
 妻子と幸せな生活を送る警察官スティーヴンは同性愛者である。彼は母親に捨てられた過去のトラウマから、異性を愛せない人間になってしまっていた。ある晩、事故で重傷を負った彼は、自分がゲイであることを妻にカミングアウトした。二人は離婚し、その後スティーヴンは新しい恋人ジミーと同棲を始めた。ところが、ジミーは根っからの浪費家で、いくらお金があっても足りなかった。スティーヴンは止む無く詐欺を繰り返し逮捕されてしまう。彼は刑務所でフィリップという男と運命的な出会いを果たす。
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(レビュー)
 獄中で出会ったゲイカップルの波乱に満ちた恋愛騒動を軽妙に綴った作品。

 本作は実話がベースになっているそうである。しかし、実際に映画を見てみると実話とは俄かに信じがたい。まずなんと言っても、スティーヴンの行動力が常人離れしすぎている。彼は愛するフィリップのために詐欺行為を繰り返していくのだが、これが余りにもトントン拍子に進むので何だか本当の話のようには見れなかった。他にも、弁護士に成り済まして勝訴を勝ち取ったり、いきなり会社重役のポストを用意されたり、出てくる逸話が随分とぶっ飛んでいる。正直、ここまでくると「実話」という前置きが邪魔になるくらいで、むしろそれを抜きにして単純に楽しみたい‥と思うくらいだった。実話をベースにしているとはいえ、かなり楽観的に脚色されているように思った。

 さて、見所は何と言っても、主演二人の掛け合いである。スティーヴンを演じるG・キャリー、フィリップを演じるE・マクレガー、それぞれに好演していると思った。
 G・キャリーは、やはりこういうコメディは主戦場という感じがする。彼が演じるスティーヴンは詐欺にのめり込んでいくが、すべてはフィリップに対する"病的″なまでの愛あればこそである。この"病的″な所を、G・キャリーは持ち前のキャラクターを使って上手く引き出しているように思った。彼は決して根っからの悪人というわけではない。そこにダメ人間としての愛おしさも覚える。
 また、終盤での彼の激ヤセ振りには驚かされた。CGで誤魔化しているようには見えなかったのだが、実際に役作りしたのだろうか?だとすると、この役者魂は大したものである。

 一方のE・マクレガーのコメディ演技も中々に良かった。ここまでベタなコメディに出演するというのは珍しと思うが、難なくこなしている。乙女チック全開な演技に笑わされっぱなしだった。

 この二人の関係は暴走するG・キャリー、それに振り回されるE・マクレガーという図式になっている。これも俳優としての個性を考えた場合、実にしっくりとくる配置だろう。

 そんな二人のコミカルな恋愛は、クライマックスにかけて意外な変容を見せていく。スティーヴンのフィリップに対する愛がメロドラマのごとき悲劇へと昇華され、ちょっとウルウルとさせるのだ。いかにも古典的な図式ではあるが、コメディからシリアスへの転換は巧みに処理されており唸らされる。こうした予想外の方向へ物語を持って行ったところは評価したい。

 尚、劇中で最も笑わされ、且つ印象に残ったセリフがある。

刑務所の中では『アレをしゃぶれ!』
刑務所の外では『来い!俺のケツに!』

ゲイの生きる術はこの言葉に集約されているような気がした。ゲイの処世術が読み取れる。

 ところで、ゲイをここまで笑えるコメディに仕立てた本作は、それ自体驚くべき事のように思う。一昔前ならゲイと言えば日陰の存在。エイズに犯されて悲劇的末路を辿る‥。そんな映画ばかりだった。ところが、エイズの治療が進んだこともあって、今作ではそれすらも笑いのネタにされている。かつての暗く絶望的な映画とは全く毛色の違う、明るく楽しいタイプのゲイ映画になっており、正に今の時代感覚に合わせた娯楽作に仕上がっている。
 果たして製作サイドの狙いが時代の照射にあったのかどうかは分からないが、きちんと今の時代を見据えた作りになっている所に感心させられた。
[ 2013/03/12 00:56 ] ジャンルロマンス | TB(0) | CM(0)

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