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ジャンゴ 繋がれざる者

マカロニ・ウェスタンのオマージュがギッチリ詰め込まれたタラ最新作!
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「ジャンゴ 繋がれざる者」(2012米)星3
ジャンルアクション
(あらすじ)
 南北戦争直前のアメリカ南部。黒人奴隷ジャンゴは、ドイツ人の歯科医シュルツによって鎖を外された。実はシュルツは賞金稼ぎだった。彼は賞金首の顔を知っていたジャンゴに捜索を手伝いをしてほしいと言う。こうして二人の旅は始まる。ところが、黒人のジャンゴが白人のシュルツと一緒にいる様は多く人々の目に奇異に映った。立ち寄った町で二人は早速、保安官に咎められる。
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(レビュー)
 稀代のB級シネヲタ、タランティーノがマカロニ・ウェスタンへのオマージュをタップリ注ぎ込んだアクション映画。

 ストーリーは一本調子ながら、ジャンゴの復讐、彼とシュルツの友情、当時の時代背景などが無理なく詰め込まれていて中々の快作に仕上がっている。また、見せ場となる銃撃シーンもガッツリと用意されていて見応えが感じられた。

 但し、上映時間が少し長すぎるという感じも受けた。例によって、タランティーノらしいピリピリとした緊張感でサスペンス的興奮を120%味あわせてくれるのは良いのだが、コンパクトにまとめることで見やすくすることはできたように思う。
 例えば、終盤のクライマックスだが、ここは変に二分されてしまっている。山場が分断されるので後半の銃撃戦に入るまでにダレてしまうのは残念だった。

 主人公ジャンゴは、もちろんマカロニ・ウェスタンの傑作「続・荒野の用心棒」(1966伊スペイン)の主人公の名前である。その後、ジャンゴという名前は多くの作品の主人公となっていくが、元々の出典はここだ。本作でも冒頭にお馴染みのジャンゴの歌が流れる。好きな人には来た来た‥という感じでテンションが上がりまくるだろう。

 ただし、タランティーノという監督は単に過去作を焼き直すだけの監督ではない。自分の作家としてのテイストを確実に持っている人で、それが他のフォロワーと一線を画す所以であり、唯一無二の存在足らしめている一番の要因だと思う。要は、オリジナルに対する愛だけではなく、それを自分流ににアレンジする"挑戦”を常にし続けている監督なのである。

 本作では南北戦争という設定を持ち込んでいる。ジャンゴを黒人奴隷としたアイディアが斬新だ。なるほど、黒人が白人に復讐をする話‥と聞けば、いかにもマカロニ・ウェスタン・チックな話に持って行くことが出来る。この奇抜な組み合わせこそが、タランティーノの今回の"挑戦”だろう。並みの監督ではこういう発想は思い浮かぶまい。

 また、マカロニ流の残酷なバイオレンス・シーンも登場してくる。しかし、これもタランティーノらしいブラック・コメディ・テイストが加味されることで、陽気なカリフォルニア気質が存分に出ている。このあたりのサービス精神もいかにも彼らしい。

 魅力的なアンサンブルも見応えがあった。悪辣な黒人執事長を演じたサミュエル・L・ジャクソン、傲慢な農場主を演じたL・ディカプリオが中々に良かった。農場主は少しオツムが弱いのが玉に瑕だが、ボスとは案外そんなもの‥という弱点さえディカプリオは見事に体現している。惜しむらくは、先述したとおりクライマックスが二分されてしまったことか‥。これによって彼の印象が弱くなってしまった。むしろ、今回のラスボスはサミュエルの方にあるのではないか‥とさえ思えてしまう。

 これは完全に穿った見方になってしまうが、ジャンゴ(黒人奴隷)による農場主(白人資産家)の成敗という結末を避けたかったために、敢えてタランティーノはクライマックスを捻って見せたのではないだろうか。もっとイヤらしい表現をすれば、多くの批評家たちは白人である。そのことを鑑みて、彼らの印象をなるべく和らげるためにこういう結末に持って行ったのではないか‥と思えてしまう。現に、前作「イングロリア・バスターズ」(2009米)はユダヤ人がナチスを成敗するという結末で大いに賞賛を浴びた。今回もタランティーノはある程度計算の上で、敢えて黒人が白人を成敗する絵面を封印したのではないか‥。そんな風に思えた。

 キャストでは他に、シュルツ役のC・ヴァルツの好演を評価したい。「イングロ~」では憎きドイツ将校を演じていたが、今回はガラリと風貌を変えて新境地に挑戦している。冷酷な賞金稼ぎであるが、それを飄々としたユーモアでオブラートに包みこんだ所に上手さを感じた。また、クライマックスで見せる思わぬ豹変ぶりも見事である。

 また、元祖ジャンゴ役のフランコ・ネロがチョイ役で登場したり、往年のスター、ドン・ジョンソン、ブルース・ダーンといった渋いキャストも面白い起用だった。ブルース・ダーンは「11人のカウボーイ」(1971米)で、かのJ・ウェインを殺す悪役を演じていた。その彼が再びまたこうして悪役として登場するあたり‥心憎いキャスティングである。また、特殊メイク師T・サヴィーニがまたもや今回クレジットされている。どこかで派手に散っているのだろうが、自分には気付かなかった。
[ 2013/04/04 18:49 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

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