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シュガーマン 奇跡に愛された男

ウソのような本当の話。正に奇跡のドキュメンタリー。
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「シュガーマン 奇跡に愛された男」(2012スウェーデン英)星3
ジャンルドキュメンタリー・ジャンル音楽
(あらすじ)
 1970年代、アメリカでたった2枚のアルバムを出して消えたミュージシャン、ロドリゲスの数奇な運命を追った音楽ドキュメンタリー。
映画生活

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(レビュー)
 この映画を観るまで自分はロドリゲスのことをまったく知らなかった。実際に彼の曲を聴いてみるとこれが中々に良い。劇中でも語られているが、どこかボブ・ディランに似たテイストもあり、これが何故全然売れなかったのか不思議なくらいである。おそらく人種の問題やレコード会社の力関係など、色々と要因があったのだろう。また、ドラッグや社会批判的なの際どい内容が、当時の世間には中々受け入れられなかったのかもしれない。

 そんな鳴かず飛ばずのまま埋もれてしまった彼のアルバムだが、なんという奇跡かまさか地球の裏側、南アフリカで大ヒットを飛ばしていたのである。正直、映画を観終わった今でも自分はまるで狐につままれたような感覚に捉われているのだが、関係者の証言や記録映像を見る限りこれは紛れもない事実である。これを奇跡と呼ばずして何を奇跡と呼ぶだろう。

 映画前半は、彼の歌がどうやって輸入されたのかを紹介しながら、伝説のミュージシャン、ロドリゲスの足跡を追っていくという構成になっている。
 彼の曲が南アフリカに浸透したのは、当時の反アパルトヘイト運動に大きく関係していた。元々、彼の歌詞は反体制的な内容が多く、それが黒人たちの戦いの象徴として支持されていったのである。
 以前見たドキュメンタリー映画で「アマンドラ!希望の歌」(2002南アフリカ米)という作品があった。あれを見ると、音楽が黒人たちの運動の大きな原動力になっていたことがよく分かる。その中にロドリゲスの音楽も入っていたとは驚きである。

 中盤に入ってくると、南アフリカのジャーナリストと現地のジャーナリストがロドリゲスの消息を辿るという話になっていく。何しろ情報が全くと言って良いほどなく、一説によれば彼はステージ上で自殺したという噂さえある。果たしてそれは本当か?あるいは彼はどこかで生きているのか?生きているとしたら何をしているのか?そうしたミステリが、彼らの調査で少しずつ解明されていく。

 そして、後半に入ってくると、彼の消息は意外な形で判明する。映画はここから更にドラマチックな展開を見せていき、正直な所、半分信じられないながらも、こんな奇跡がまだ世の中にはあったのか‥と素直に感動させられた。

 ただ、物を作る人間の端くれである自分から言わせてもらば、奇跡の美談ともういうべきこのストーリーの影に隠れたロドリゲスの不幸には同情を禁じ得なかった。結局、彼はアメリカでは埋もれたミュージシャンであることに変わりはないわけで、運さえよければ名声を手にし人生を一変させていたかもしれない。そう考えると、彼のことがどこか気の毒にも思えた。

 名声だけが全てじゃない、大切なのはアーティストとしての誇り。どこかで自分の歌を愛してくれる人がいればそれで光栄だという考え方があるのは分かる。しかし、果たしてそれで彼は本当に幸せだったのだろうか‥。確実にあるだろう悔しい気持ちをどうやって克服できたのか?そこが気になる所だった。

 もっとも、映画はそれほど不幸といった側面を前面に出しているわけではない。そこは見ていて救いであった。鑑賞後は色々と考えさせられることがあったが、とりあえず終わり良ければすべて良し‥ということか。

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