衝撃の映像に何を思うか‥?野心的なドキュメンタリー作品。
「チェルノブイリ・ハート」(2003米)
ジャンルドキュメンタリー・ジャンル社会派
(あらすじ) 1986年4月26日に発生したチェルノブイリ原発事故のその後を追ったドキュメンタリー。
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(レビュー) 本作は2003年度のアカデミー賞で短編ドキュメンタリー賞を受賞した作品である。日本では同じ監督の他の短編と合わせて公開された。パッケージ版も2本が収録されている。ちなみに受賞したのは前半の方である。
流石にオスカーを受賞しただけあって前半は見応えがあった。
撮影隊は、原発事故から16年後のベラルーシ共和国を訪れて取材していく。そこで彼らが目にするのは、放射能汚染によって被害を受けた人々の姿である。生まれながらの障害児、彼らの面倒を見る介護士や医師等、筆舌に尽くしがたい悲惨な状況がそこには広がっている。中でも出産シーンは余りにもショッキングで正視するのをためらうほどだった。
後半は、事故現場から3キロ離れた所に住んでいた青年の姿を追いかけるドキュメンタリーになっている。彼は事故後、初めて自分の部屋を訪れる。窓から原発を恨めしそうに見つめる姿が印象的だった。その胸中は察するに余りある。ラストは衝撃的な事実で締め括られていて言葉を失ってしまった。
チェルノブイリ原発事故というと誰もが耳にしたことがあると思う。しかし、実際の被害を目にすることは余りないだろう。それを見せてくれたという意味では実に野心に溢れた作品だと思う。
ただ、映画の作りとして少し惜しいと思う点が一つ二つあった。
まず、今作には客観的なデータが乏しい。それが備わっていれば、監督のメッセージに更に説得力が生まれただろう。
また、前半と後半は事故の怖さを訴えるという点では共通したテーマを持っているが、どうしても前半に比べて一個人のドラマに焦点を当ててしまった後半の作りが弱い。もう少し視野を広げて事故の被害者に迫れなかったか‥と惜しまれた。
ともあれ、事故被害にあった人々の苦しみは今もなお続いている。放射能汚染の影響はまだ厳然とそこにあるという事実を知らしめたという意味では、本作は意義のある作品だと思った。