食の安全について考えさせられる。
「フード・インク」(2008米)
ジャンルドキュメンタリー・ジャンル社会派
(あらすじ) アメリカの食品業界の歴史と裏側を描いたドキュメンタリー作品。
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(レビュー) アメリカの食品業界は一部の大企業によって支配されている。政治家との癒着、下請け農家への圧力、事故のもみ消し等、消費者の安全よりもコスト削減による効率化が進められ"儲け″が最優先されているのだ。これは実に恐ろしい状況だ。
幾つか衝撃的なエピソードが出てくるが、最も印象に残ったのは後半に登場するモンサントのえげつない利益誘導主義である。遺伝子組み換えの大豆の特許を取って、それを下請け農家に配ることで独占市場を築いている。有機農業をしたい農家は市場で潰されるか、モンサントに裁判で訴えられるので逆らうことが出来ない。今話題になっているTPPでもし遺伝子作物が日本に輸入された場合、日本の農家はどうなるのだろうか?太刀打ちできないのではないか?そんな不安が頭をよぎった。
肉牛のO157問題も深刻に描かれていた。これは肉牛の飼料を低コストなコーンに切り替えたことで始まった問題で、言わば一部の大企業の利益主導が引き起こした問題である。このあたりはBSEの問題にも似ている。
映画では、O157の牛肉を食べたことで子供を失った母親が登場してきて、議員たちにケヴィン法という法案成立の働きかけをする。この法律は簡単に言えば、農務省に工場の操業を停止できる権限を与える‥というものである。今のアメリカ政府にはその権限すらないのだ‥と思うと恐ろしくなってしまうが、似たようなことは日本でもあるような気がした。助成金と天下りによるお目こぼしが正にそうだろう。
ここで描かれている問題は、決して我々日本人にとっても他人事ではないと思う。アメリカの肉牛や原料、飼料の輸入は始まっている。もしかしたら知らないうちに口にしている‥ということもあるかもしれない。
映画は最後に消費者の権利として不買運動を挙げているが、おそらく我々が出来ることと言ったらまさにこれしかないだろう。選択の余地は各人に託されている。今一度、消費者としての権利を見つめなおす時が来ているのではないか。そんな気がした。