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ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う

この雰囲気。好きだなぁ。
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(2011/02/25)
竹中直人、佐藤寛子 他

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「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」(2010日)星3
ジャンルサスペンス・ジャンルロマンス
(あらすじ)
 3人の母娘が経営するバーで殺人事件が発生する。彼女たちは殺した男の死体から金品を奪うとバラバラにして山奥に捨てた。帰宅後、次女・れんは男が持っていたロレックスの腕時計が無いことに気付く。彼女は“何でも代行屋”の紅次郎を訪ね、事件のことを一切明かさず腕時計を探してほしいと依頼した。それを受けて次郎はどうにか腕時計を見つける。ところが、そこには肉片らしきものがついていた。不審に思った彼は、先頃仕事で知り合った女性刑事・安斎にそれを調べてもらう。すると鼠の肉という答えが返ってきた。それを聞いて次郎は安心する。一方、安斎は次郎を泳がせて事の真相を暴こうと捜査を始めていく。
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(レビュー)
 石井隆監督が1993年に撮ったノワール映画「ヌードの夜」(1993日)の約17年ぶりの続編。人の良い代行屋・紅次郎が今度は一体どんな事件に巻き込まれていくのか?前作を見てる者としては興味深く追いかけることが出来た。

 尚、前作を見ていなくても一応は理解できる内容となっている。ただ、前作を見た上で鑑賞する方がベターだろう。というのも、紅次郎のバックボーンを把握した上で見ると今作はより一層楽しめるからだ。

 紅次郎という男は基本的に情に脆い男である。これは代行屋としては欠点であるが、一人の人間としては愛すべきチャームポイントになっている。前作「ヌードの夜」には、石井隆作品ではお馴染みの「名美」という名前の女が登場して次郎が翻弄されていく。「名美」とは石井作品に共通するヒロインの名前であり、ある種ファムファタールの象徴とも言えるが、その名美と次郎の関係性がこの続編でも踏襲されているのだ。

 本作のれんは名前こそ違え、ある意味では名美に匹敵するような魔性の女である。次郎はまたしてもこの悪女に騙されて酷い目にあっていく。仮にも代行屋という職業をしていながらこの学習能力の無さは致命的と言わざるをえないが、それが彼の純粋さであり男としての本能である。そこに同じ男としてニヤリとさせられてしまった。あ~また引っかかってやがる‥という具合に‥。

 物語は次郎がれんの過去を探っていくサスペンスで進行していく。クライマックスから少し意外な方向に靡いていくが、これも前作「ヌードの夜」を見ていると「あぁ‥なるほど」と思えた。普通のノワール映画で終わらないところがこのシリーズの面白い所で、少しオカルトチックな風情が加味されるのだ。前作は名美の怨念がキーとなっていたが、今作は殺された人々の怨念が事件の影にうごめいている。クライマックスにおける霊気が漂う独特の空間が映画に面白い効果をもたらしている。

 ただ、次郎にとっての「れん」=「天使」という図式。それを単なる言葉だけでなく何らかのエピソードとして紹介して欲しかった。れんの過去を知っていくうちに自分は騙されていたと知る次郎。しかし、一度惚れてしまったからにはどうすることも出来ず、自分の愚かさを打ち消すべく自己弁護的に彼女を神格化していくようになる。果たして次郎にとって、れんはどこまで「天使」だったのだろうか?そこを明確にするためのエピソードは必要だったかもしれない。そうするとラストはより感動的なものになっただろう。

 尚、れんを「天使のような少女」と例えるのは、いかにも紅次郎っぽいセリフで好きである。彼は基本的に純粋な男である。だから、こういう臭いセリフを吐いても何となく納得できてしまう。

 紅次郎は前作に続き竹中直人が演じている。ハードボイルドを気取っていても肝心な所では墓穴を掘ってしまう情けなさは、彼にしか出せない味だろう。今回もハマリ役に思えた。但し、一部でヤリ過ぎて若干コメディっぽくに写ってしまったのは残念である。このあたりは抑制して欲しかった。

 れん役を演じたのは佐藤寛子。彼女の体を張った演技は実に素晴らしかった。全てを曝け出してタイトルの「ヌードの夜」を体現している。ただ、ここまで病んだキャラであれば、自分の体に鞭をうつシーンはもう少し痛々しくやっても良かったかもしれない。少々ぬるい。

 石井隆の演出は基本的には前作同様、クールに整えられていて作品世界観を堅実に構築している。アバンタイトルの死体を巡るシーンには少しブラック・ユーモアも施されていて楽しめた。一方でクライマックスの熱の籠った演出にも目がくぎ付けになった。メリハリを利かせた色彩も画面を艶っぽくしていて良い。

 ところで、車のシートベルト使った殺しのアイディアは秀逸だと思った。こういう殺しのテクニックは自分は初めて見た。中々良い。
[ 2013/04/20 18:54 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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