シリーズの中では一番推理劇的な面白さがある作品。
「陸軍中野学校 密命」(1967日)
ジャンルサスペンス・ジャンルアクション
(あらすじ) 陸軍中野学校の諜報員、椎名次郎は突然スパイ容疑で逮捕される。彼は拘留所で元外務大臣・高倉と知り合った。その後、次郎は釈放され草薙中佐の元に呼び出される。実はこれまでのことはすべて、次郎が高倉に近づくために張り巡らした草薙の作戦だったことが明かされる。彼の話によれば、親英派の高倉は連合国の要人たちと親交が深い。その中にイギリスのスパイ、キャッツアイが混じっているかもしれないと言うのだ。次郎は草薙の密命を受けてその正体を掴むために高倉邸に潜り込んでいく。
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(レビュー) 市川雷蔵主演のスパイ・シリーズ第4弾。
今回はイギリスのスパイ、キャッツアイの正体を暴く隠密作戦が描かれる。
スパイが敵のスパイと対決するという話は、ある意味では定番ネタという事も出来るが、ドラマはミスリードを配しながら中々上手く作られていると思った。キャッツアイの正体はまさか‥という人物で最後はニヤリとさせられた。
序盤から次郎が逮捕されたり、酷い拷問にかけられたりと、これまでにない新鮮な導入部が良い。もっとも、その後はいただけなかったが‥。草薙が出てきて事の全貌を明かすのだが、次郎を追い詰めてまで高倉に近づかせる必要があったかどうか‥。少し周りくどい作戦のように思えた。
今回は二人のヒロインが登場してくる。この人物相関も今までにない新鮮な設定で面白いと思った。一人は高倉の長女・美鈴、もう一人はドイツ軍に情報を売っている浅井男爵未亡人である。夫々に高田美和、野際陽子が演じているのだが、これが中々に良かった。
美鈴は次郎に恋い焦がれるお嬢様で、愛する彼のために父の周辺を探っていく。健気に応える彼女のいじらしい姿が印象に残る。最後は浮かばれぬ結末を迎えるが、非情なスパイに愛は不要‥といったところか。これはまさに今シリーズが通して訴えるテーマでもある。
一方の浅井夫人は、ドラッグに溺れながら危険と隣り合わせの日常を送る魔性の女である。次郎と不倫に溺れながら、彼女は更なる危険に身を投じていくのだが、彼女の顛末にもスパイの非情さが伺える。美鈴とは対照的なもう一人のヒロインと言っていいだろう
演出はチープな物も見られるが、目立つ破綻は少ない。カメラワークも中々凝っていて、特に前半の次郎と浅井夫人のベッドッシーンからのシークエンスは秀逸だった。モルヒネを注射した夫人の目にカメラはズームアップしていく。自分はこの時点で彼女こそ"キャッツアイ″なのではないかと予想したのだが、実はそうではなかった。こうしたミスリード演出も今回はよく考えられていると思った。
お疲れ様です。
この作品はラスボスが誰であるか、
この点でのスリルが秀逸だったかと思いました。
ラスボスの設定は英国大物スパイとなっていますが、
背景からしまして、第二次大戦前の日本を震撼させた、
ゾルゲ事件(いわずと知れたソビエト連邦の大物スパイ)がベースになっているのではと思ったりもしました。
今回はこれにて。
自分もゾルゲ事件はこのストーリーにかなり影響を与えているように感じました。
そう言えば、それを元にした「スパイ・ゾルゲ」という映画もありましたね(未見)。かなりの大作だったのですが興行的には芳しくなかったようでした。
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