ならず者たちの挽歌!
「独立愚連隊」(1959日)
ジャンル戦争・ジャンルアクション・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 太平洋戦争末期、北支戦線に従軍記者・荒木がやって来る。彼はある事件を独自に調査していた。それは独立愚連隊と呼ばれるならず者達が集まる小哨隊で起こった“心中事件“だった。来て早々、荒木はかつての恋人で今は慰安婦をしているトミに再会した。その後、独立愚連隊の任務に同行することになる。そこで荒木は事件に関する意外な真実を知っていく。
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(レビュー) 従軍記者・荒木が最前線で起こった事件を捜査していく中で、戦争の理不尽さ、無情を知っていくアクション推理活劇。
監督・脚本は岡本喜八。荒木が過去の心中事件を捜査していく推理劇は、他の喜八作品に比べると少しこじんまりとした印象を受けるが、クライマックスには派手なドンパチが登場し"らしさ″も感じられる。氏らしいきびきびとした演出が横溢し痛快な娯楽作品に仕上がっている。
シナリオも中々良く出来ている。主人公・荒木のミステリアスな造形、事件の背後に暗躍する陰謀、独立愚連隊にまつわる事情等、様々なミステリーを擁しながら物語は軽快に展開されている。荒木の元恋人・トミが彼を「大久保」と呼ぶので初めは不思議に思ったのだが、なるほどそういう仕掛けがあったのか‥と後になって気付かされる。観客の食いつきを誘うこの引っ張り方も絶妙だった。
個性に溢れた各キャラクターも実に面白く見れた。愚連隊のメンバーは、上官に反発する不良ばかりである。彼らは元々が軍事裁判にかけられる予定であり、半ば墓場に足を突っ込んでいるような連中である。したがって、この期に及んでも死ぬのが怖くない。槍でも鉄砲でも持って来い!といった感じの豪放磊落な兵士が多い。このアウトロー然としたキャラたちは、岡本作品における一つの特徴であるが、今作はそこがたまらなく魅力的に思えた。
中でも、荒木と石井隊長の友情形成にはしみじみとさせられた。クライマックス直前、絶対的不利な状況にも関わらず強気なユーモアで互いに男気を見せるあたりは、素直に格好良いと思えた。
難は前半の水っぽさだろうか‥。サスペンス自体はよく出来ていると思うが、前半の展開が若干間延びする。例えば、頭を打って精神を病んでしまった三船敏郎のエピソードは本筋に何の関係もない。不要であろう。また、肝心の独立愚連隊が登場するまでがまごつく。もっと早い段階で彼らの結束それとなく匂わすような演出があれば、もっとドラマに入り込みやすくなっただろう。要は映画を観る上での取っ掛かりを早めに出して欲しかった。
キャストでは、なんと言っても荒木を演じた佐藤允の圧倒的存在感。これに尽きると思う。どちらかと言うと悪役の印象が強いが、今回はスマートで粋に溢れた快男児を演じている。外見は決してイケメンではないが、そう思わせてしまう内面の魅力が光っていた。
他に、馬賊のリーダーを演じた鶴田浩二もインパクトがあった。中国訛りのイントネーションで日本語を喋り、荒木を助けるナイトのような立ち回りを見せる。あの鶴田浩二が‥と思って見てしまうと余計に怪しくて笑えた。キャスティングの妙である。