更に内容てんこ盛りな第3弾。シリーズの中では一番面白かった。
「どぶ鼠作戦」(1962日)
ジャンル戦争・ジャンルアクション
(あらすじ) 終戦間近の北支戦線。林一等兵は命令で、ある小隊に合流しようとしていた。その道中、中国側の情報を日本軍に売る白虎という男と出会い意気投合する。二人は一緒に連れ立って小隊に到着した。ところが、来て早々林は上官を殴って営倉に入れられてしまう。そこにはすでに隊のお荷物である問題児が居座っていた。その後、小隊に新しい参謀・関が到着する。冷酷非情な彼は中国人捕虜を拷問した上に裁判もかけずに銃殺刑にした。その後、関は任務に出て中国軍に捕まってしまう。白虎、林、営倉に入っていた問題児たちは、関救出の特命を受けて出撃する。
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(レビュー) タイトルに「愚連隊」は無いが、今作は岡本喜八監督が撮り上げた「独立愚連隊」シリーズの第三弾である。スタッフやキャスト、ロケ地が前2作とほとんど一緒で、同じ路線で作られた作品であることが分かる。尚、3本ともストーリー的な繋がりは一切ないので単品でも楽しめるようになっている。
岡本監督らしい快活な語り口は今回も健在である。自身が手掛けた脚本は一部で乱暴な個所もあったが、それを凌駕してしまうほどのパワフルな演出は流石である。それによって見る者をグイグイと引きつけていく。
出てくるのは5人の個性的なアウトローたちである。佐藤允演じる中国人スパイ・白虎を中心に、脱走常習犯の林一等兵(加山雄三)、殺人罪で投獄された空手の使い手・三好軍曹(中谷一郎)、三好を敵視する穴山上等兵(田中邦衛)、忍術研究家の佐々木二等兵(砂塚秀夫)。彼らは愚連隊を組織して中国軍に捕われた関参謀救出に向かう。個々のやり取り、敵との交戦などが実に濃密に、そして軽快に綴られていて楽しめる。
例えば、看板を使った賭け、野グソのシーンには笑わされた。また、白虎の宿敵である中国人ゲリラのリーダー・無双との追跡劇、終盤の関参謀と白虎のやり取りも面白く見れた。前者にはサスペンスの醍醐味が、後者にはペーソスが感じられた。クライマックスで明かされる意外な見顕しも意表を突いた演出で面白い。ユーモア、サスペンス、ミステリをごった煮にした満漢全席な内容は、これまで以上のサービスぶりで、これぞ正に岡本喜八の真骨頂といった感じである。
お馴染みとなったキャスト陣のきびきびとした芝居も相変わらず良い。
常連・佐藤允の明るい表情は、悲惨な戦争をまるで宝探しをする冒険ドラマのように見せている。彼のリーダーシップが全キャストを引っ張って行っていると言っても過言ではない。
中谷一郎は前作、前々作の主役から、今回は佐藤率いる白虎隊の一員に収まっている。しかし、最後の最後にきちんと見せ場が用意されており、中々美味しい役所だと思った。また、彼と田中邦衛の確執→友情のドラマにはしみじみとさせられた。
他に、無双演じる中丸忠雄は、怪しげな中国語を話しながら第1作
「独立愚連隊」(1959日)の鶴田浩二並みの“いかがわしさ”で登場してくる。最後に見事なケジメを見せた所は立派だった。
藤田進演じる正宗中尉のどこか頼りなさげな軍人も人間臭くて良かった。
難は、先述の通りストーリー上、かなり乱暴な展開が目につく事である。白虎隊は度々、敵に囲まれて絶体絶命のピンチに陥るのだが、その脱出方法が余りにも適当過ぎて萎えてしまう。例えば、ある場面で”体操”というアイディアで窮地を脱する。コミカルさを狙っているのは分かるが、撮り方、演出が悪いせいで余り笑えなかった。こうした所の詰めの甘さは勿体なく感じた。
ただ、翻って見ればこの能天気さこそ、今シリーズに通底した岡本喜八のこだわりであったように思う。要するに、悲惨な戦争を悲惨一辺倒に見せるのではなく、要所にコミカルな場面を入れながら娯楽作品として戦争批判を行おうという姿勢。それがシリーズの狙いだったのだと思う。そういう意味では、こうした作りの粗を一方的に批判することも出来ない。全てはエンタメに昇華するための強引な駆け引き‥そんな風にも捉えられる。
いずれにせよ、このシリーズは彼の代表作なので、ファンなら一度は見ておきたいところである。