特撮シーンと人間ドラマが見事に融合された好編。
「世界大戦争」(1961日)
ジャンル特撮・ジャンル戦争・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 外人記者クラブの運転手をしている田村茂吉は、病弱な妻・由と年頃の娘・冴子、幼い子供たちと慎ましくも幸せな暮らしを送っていた。冴子には心に決めた恋人・高野がいた。航海技師をしている高野とは中々会えなかったが、二人は固い絆で結ばれていた。その頃、朝鮮半島では38度線を巡って激しい攻防が繰り広げられていた。東西に分断された国際情勢は緊張の度合いを増し、ベーリング海上では両陣営の戦闘機が交戦する。こうして世界は第三次世界大戦へ突入していく。
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(レビュー) 第三次世界大戦の恐ろしさを描いた特撮群像ドラマ。
映像的な見所はクライマックスの円谷英二特技監督による核戦争シーンであろうが、豪華俳優陣が織りなす人間ドラマも濃密に作られている。得てしてこの手の特撮を売りにした作品の場合、ドラマをお座なりにしがちになってしまうが、本作に関してはストーリーも丁寧に組み立てられていて感心させられた。いわゆるハリウッド製のディザスター・ムービー的な作りと言って良いかもしれない。迫りくる危機を俯瞰で捉えるのではなく庶民の目から捉えることで、夫々のキャラクターに感情移入しやすい作劇になっている。
中でも、クライマックス直前の田村家の食卓シーン、茂吉の言葉には泣かされた。茂吉は株で設けたり地価が上がって喜んだり、随分と俗っぽい人間として造形されている。しかし、いざ終末の時が迫るに際して、家族のありがたみ、ささやかな幸せといったものに感謝を示す。そして、その幸せを奪ってしまう戦争に対して憤りを爆発させるのだ。演じるフランキー堺の熱演も素晴らしいのだが、淡々と紡いだ演出も秀逸で、ラジオから流れる刻々と迫る戦時の警告が逃げも隠れもできない絶望的な状況を残酷に見せている。
他に、冴子と高野のモールス信号、保育園で母を待つ少女の姿にも切なくさせられた。
特撮シーンの見せ場はクライマックスの核戦争である。ミニチュアセットを使いながら迫力のある映像が作り上げられている。一部で若干薄っぺらさは感じられたものの、東京が融解していくシーンなどは正に圧巻の出来映えで素晴らしかった。おぞましい"きのこ雲"も見事に再現されていて、世界崩壊を描くクライマックスの10分間は目が離せなかった。
惜しむらくは、世界情勢の描写のし方であろうか‥。機械の故障で核ミサイルの発射命令が出されてしまったり、雪崩で核弾頭のスイッチが入ってしまったり、本筋には余り絡んでこないエピソードが登場してくる。おそらく核爆弾の恐怖を表現したかったのだろうが、メインのエピソードにそれほど絡んでこないのが残念だった。描くのであればもっとリアリティを重視するか、いっそのこと省いてしまっても良かったように思う。そうすれば構成もすっきりしただろう。