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幻の湖

一部でカルト視されている問題作。
幻の湖 [DVD]幻の湖 [DVD]
(2003/04/25)
南條玲子、隆大介 他

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「幻の湖」(1982日)星3
ジャンルサスペンス・ジャンルSF・ジャンルロマンス
(あらすじ)
 道子は、琵琶湖に近い風俗街でお市という名前でトルコ嬢をしている。彼女の唯一の家族は愛犬シロだけだった。道子はマラソンが趣味で毎日シロと一緒に走っていた。そんなある日、シロが何者かに撲殺される。警察に相談するが相手にされず、独自に犯人探しを始める道子。その先で彼女は犯人につながる有力な手がかりを見つけるのだが‥。
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(レビュー)
 愛犬を殺されたトルコ嬢の復讐劇をシュールに描いたサスペンス・ロマンス。

 東宝創立50周年として製作された大作だが、いかんせん内容が余りにも想像の斜め上をいくような代物で、興業的には大失敗に終わった作品である。ただ、余りにも破天荒な内容に一部でカルト視もされている。横笛というアイテムを使って戦国時代と現代を結びつけたアイディア、クライマックスのマラソン対決等、かなりシュールなテイストが幅を利かせ、それゆれ難解ともされている。良くも悪くも問題作‥という言い方ができよう。

 物語は現在と過去を交錯させながら展開されていく。現在パートは、愛犬を殺された道子の復讐劇である。過去パートは戦国時代の悲恋劇である。この二つの時代に登場するキャラクターには運命的な繋がりがあり、そこにSFチックなテイストが流れている。

 俺は道子が犯人を追いかける理由をこんな風に解釈した。彼女が恋い焦がれる長尾とのやり取りから何となく想像できる。

 長尾は戦国時代の地侍・長尾吉康の子孫である。彼が琵琶湖畔で吹く横笛も代々受け継がれてきた祖先の遺品である。彼が琵琶湖を望みながら吹く音色はとても物悲しい。それは先祖の怨念から湧いて出る深い慟哭であることは間違いない。

 一方、道子には「お市」という源氏名がある。この「お市」は戦国武将・浅井長政の妻の名前から取られたものである。そして「お市」には「みつ」という寵愛する侍女がいた。その「みつ」は周囲の反対を押し切って長尾吉康と結ばれる。その後、織田信長との戦いの中で彼女は非情な死を遂げてしまう。残された吉康は「みつ」の亡骸の前で茫然自失と横笛を吹いて悲しむ。これが現代の長尾が吹く悲しげな旋律とダブって聞こえてきた。

 つまり、現在の道子の復讐に過去のこの悲恋を透かしてみれば、「道子」は「お市」の、「シロ」は「よね」の生まれ変わりだったのではないか‥と想像できるのである。更に言えば、今回の犯人は「織田信長」の生まれ変わりという解釈も出来るかもしれない。

 もっとも、道子の復讐の方法が何故にマラソンなのか?そこは理解に苦しむところであるが‥。普通に復讐すればいいものを、なぜ彼女は犯人にマラソン勝負を挑むのか?相手も相手である。いつまでも彼女のペースに合わせて走っていることはなかろうに‥。

 それと、道子の親友ローザの行動にも意味不明な点が多い。何故、彼女は道子と同じトルコに勤めていたのだろうか?結局彼女は産業スパイだったのだろうか?彼女の目的については全く分からずじまいだった。

 製作・監督・原作・脚本は橋本忍。本作は映画の客入りが悪かったという理由でたった2週間と5日間で打ち切られたそうである。このせいで橋本忍は自らのプロダクションを閉じ、ほとんど引退に近い状態にまで追い込まれてしまった。日本映画界を長年支えてきた名脚本家も最後に不名誉な足跡を残してしまったものである‥。

 橋本の演出は全般的に悪くはないのだが、安穏と見れてしまうような所があり、サスペンス映画としては余り面白味は感じられなかった。
 ただし、日常風景と美しい自然風景については潜在的な演出力量も感じられる。また、クライマックスのマラソン対決は、そのシュールな絵面も相まって脳裏にこびりつくほどのインパクトを与えてくれた。かなり白熱した演出で描かれており、良いか悪いかは別にして斬新だった。

 キャストは脇役に豪華俳優陣を揃えているので、そこが見所である。ただ、オーディションで選ばれた初主演の南條玲子は決して上手いとは思わなかった。心身薄弱の形相に凄味はあったが、日常芝居がこなれていない。

 尚、今作は最後に特撮シーンが出てくる。特撮監督は「日本沈没」(1973日)等で知られるベテラン・中野昭慶が担当している。しかし、どういうわけかここも陳腐な特撮で萎えてしまった。
[ 2013/06/11 01:40 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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