長澤まさみのヒロイン振りが堪らない!
「モテキ」(2011日)
ジャンルロマンス
(あらすじ) 冴えない草食系男子・幸世は、職なし、金無し、彼女無しの寂しい人生を送っていた。ようやくバイトが決まるが、今度は毎日上司から怒られる日々が続いた。そんなある日、幸世はツイッターをきっかけに、みゆきという女性と知り合いになる。これでようやく彼女が出来る‥そう思ったが、実は彼女には彼氏がいた。悶々とした日々を送る幸世。ある日、みゆきから、るみ子という年上の女性を紹介されてしまう。落ち込んだ幸世は、るみ子と成り行きで寝てしまい‥。
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(レビュー) 同名コミックの映画化。今作の前にTVシリーズが作られており、そのヒットを受けて作られた作品である。尚、スタッフ、キャストはTV版と同じである。
自分は原作もTV版も見ていないが、それでも本作の内容は十分理解できた。どの映画とは言わないが、得てしてTVから派生したこの手の作品の場合、スポンサーのしがらみやキャストの縛りによって、歪な作りになってしまう傾向がある。例えば、TVを見ていないと分からない隠しネタが入っているとかetc.そういったものは本来1本の映画として見た場合、邪道である。その点、本作にはそうした嫌らしさがなく初見でも楽しめるように作られている。純粋に1本の映画としてきちんと成立している所に好感が持てた。
ただ、これは監督のコネクションなのだろう。チョイ役で時々ゲストキャラが出てくるのだが、これがドラマの邪魔になってしまい集中力を欠いた。無名の俳優ならまだしもお茶の間でよく見る顔だけに、かえって始末におえない。
また、これも監督の趣味なのだろうが、挿入歌をこれ見よがしに入れるのもいかがなものだろうか‥。物語の進行上どうしても必要なら良いのだが、果たしてこの曲が本当にこのシーンに必要か?と思えてしまうような箇所があった。
物語は不器用な青年の悶々とした姿を綴ったもので、中々面白く見ることが出来た。「モテキ」と言うと、単に都合のいい夢物語を想像してしまうが、幸世はそれによって恋愛の酸いも甘いも味わっていくことになる。実にまっとうに作られた青春ロマンス映画だと思う。
ただし、クライマックスからラストにかけての展開は大いに不満が残ったが‥。幸世の成長、みゆきの心情変化、共に安易に写った。幸世の激走も、いかにも青春映画という感じで良いのだが、彼の心情までは映り込んでいない。外見だけ取り繕ったみました‥と言う感じで、真に迫るほどの感動は得られなかった。もっと泥臭くしても良かったのではないだろうか。
キャストでは森山未來の好演を評価したい。非モテ特有のテンパった姿が実に微笑ましく見れた。大変イタイタしいが、そこがキャラクターへの親近感を湧かせてくれる。
同じようにイタい女・るみ子を演じた麻生久美子も中々の妙演であった。中盤のトンネルのシーンの彼女が愛おしく感じられた。
そして、みゆき役の長澤まさみは、今回は完璧にヒロインとしての輝きを放っている。彼女の小悪魔的な魅力には、男なら誰でもクラッときてしまうのではないだろうか?確かに余りにも可愛すぎるので、本当にこんな子がいたら劇中の幸世同様ちょっと警戒してしまうが、これくらいパーフェクトなヒロインが確立されているとそれだけで映画が華やかになる。
もっとも、彼女が中心にいることで、他のヒロインがかすんで見えてしまうという功罪はあるが‥。これはドラマとして見た場合、非常に悩ましい問題である。というのも、今作は基本的に主人公とヒロインたちの恋愛パワーゲームを描いたドラマである。それが、ここまでみゆきの揺るぎない絶対性が確立されてしまうと、ゲームのパワーバランスが保てなくなってしまうからだ。みゆきのマイナス面をもう少しフィーチャーしても良かったのではないだろうか。そうすれば、この恋愛ゲームはもっと面白く見れたかもしれない。
中でも、今作の仲里依紗は完全に割を食ってしまった感がある。彼女に関しては、他のヒロインと比べてみても味気ない役回りになっていて残念だった。