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ここに泉あり

心の琴線に触れる音楽人情ドラマ。
ここに泉あり [DVD]ここに泉あり [DVD]
(2004/12/24)
小林桂樹、岡田英次 他

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「ここに泉あり」(1955日)star4.gif
ジャンル人間ドラマ・ジャンル音楽
(あらすじ)
 終戦直後の群馬県高崎市。ここに細々と活動する市民フィルハーモニー管弦楽団があった。しかし、楽団員たちは皆、困窮し練習どころではなかった。そこに一人の才能あふれるヴァイオリニスト・速水がやって来る。彼の音楽に対するストイックな姿勢は周囲との間に深い溝を作るが、マネージャー井田の尽力もありどうにか一つにまとまっていく。そして地元の小学校で初めての演奏会が開かれる。結果は散々だったが、彼らは一つのスタートを切ったという思いを強くした。そんなある日、速水の元に東京の有名楽団から引き抜きの話が持ちかけられる。しかし、彼は楽団のピアニスト・かの子と相思相愛の仲にあり、その話を蹴って楽団に留まる事を決意した。1年後、二人は晴れて結婚する。しかし、相変わらず食うや食わずの生活が続き、ついに楽団解散の話が持ち上がる。
映画生活

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(レビュー)
 田舎町の小さな楽団に起こる悲喜こもごもを感動的に綴った音楽映画。

 貧しくとも希望を絶やさぬ楽団員達の苦労は、見ていて可哀そうになるくらいだったが、周囲の人々や巡業に出向く山村の子供たちとの朴訥とした交流に救われる。これがあることで、この映画は最終的には清らかな鑑賞感を残す。

 特に、前半の小学校での演奏会に始まるシークエンスには、何とも言えぬペーソスが感じられた。この時の聴衆は皆、地元の人間ばかりである。戦後間もない頃の地方農村の人々にとって、西洋のクラシック音楽など全く関心がない。彼らは楽団の演奏に退屈し途中で帰ってしまったり、おしゃべりをしたり、あまつさえ子供たちは目の前でカルタまで始める始末‥。楽団仲間は全員、肩を落として帰る。そこに一人の名もなき少女が駆け寄ってきて花束を渡す。たった一人かもしれない。しかし、確実に自分たちの演奏は彼女に届いたのだ‥というささやかな満足感から、楽団員たちの顔が自然とほころぶのだ。それを見て何とも心温まった。その後に披露されるアカペラはちょっと臭い気もしたが、しみじみとさせる良いシークエンスだった。

 監督は今井正。所々に大仰な演出が目に付くが、大衆娯楽作品として割り切った上で見れば実に堅実にまとめられていると思った。また、この監督は何も感傷的なドラマばかりを撮っているわけではなく、時に重厚な社会派作品を撮ることもある。物事を厳しく見つめる確かな目も持っていて、そのリアリズムが今作では良い方向に働いていると思った。

 例えば、最後の演奏会などはいかにも"泣いてくれ″と言わんばかりの演出になっている。しかし、それすらも朴訥とした子供たちの素の表情の前では、相対的に抑制され感動的に受け止められる。見た所、この子供たちはほとんどがエキストラだと思う。彼らのリアルな佇まいが演出の臭みを相殺している。この絶妙なバランスは見事と言うほかない。
 また、ハンセン病療養施設での演奏場面も然り。患者達は疾患のせいで皆、手に包帯をしているので、拍手をしてもパタパタという音しか出ない。演奏している速水達、楽団の身になって考えてみると、何とも居たたまれない風景だが、この場面はかの子の出産シーンとのカットバックで構成されている。慰問の演奏とかの子の出産のボルテージが相乗効果的に盛り上げられており、これも患者達のリアルな描景が、ある種出産というベタな感動を見事に中和している。

 シナリオも起伏に富んでいて中々良かったと思う。約2時間半の大作だが、展開が軽快なため中弛み感はなかった。若干、中盤の合同演奏会が長く感じたが、それ以外はテンポよく進むので最後まで飽きなく見れた。尚、劇場公開時は約3時間だったそうである。どこがカットされているのか分からないが、現在ソフト化されているのは2時間半バージョンである。

 一方、楽団のサブメンバーのエピソードは、雑に処理されてしまった感がする。個性的な人間が揃っているのだが、いかんせん人の出入りが激しく、中には途中からエピソードが放ったらかしにされてしまっている者もいる。速水の葛藤に焦点を当てたメインのドラマは丁寧に描かれているが、それ以外のサブエピソードはもう少し整理してくれた方が映画としてはまとまったと思う。

 キャストは夫々に好演していると思った。おそらく演奏シーンは吹き替えだろうが、皆上手く演じている。特に、速水役・岡田英次のヴァイオリン、かの子役・岸恵子のピアノの演奏は、いかにもそれっぽく演じていてて感心させられた。
 尚、故・大滝秀治が本作で映画デビューを果たしている。楽団員の中の一人を演じているのだが、見ている最中は気付ず、あとで検索して分かった次第である。
[ 2013/07/25 18:48 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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