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フェア・ゲーム

イラク戦争にまつわる恐るべき実態を描いた社会派サスペンス劇。
フェア・ゲーム [Blu-ray]フェア・ゲーム [Blu-ray]
(2012/03/02)
ナオミ・ワッツ、ショーン・ペン 他

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「フェア・ゲーム」(2010米)星3
ジャンルサスペンス・ジャンル社会派
(あらすじ)
 9.11同時多発テロ後のアメリカ。ブッシュ政権は、イラクが核兵器を開発しているのではないかという疑惑を元に調査に乗り出した。早速、CIAの女性諜報員ヴァレリーは、イラクの元原子力研究者に接触する。彼からかつての仲間の名前を聞きだしたヴァレリーは、その情報を元に縁故者を訪ねて潜入作戦を計画した。一方、ヴァレリーの夫で元ニジェール大使ジョーも、ウラン買い付けの真偽を確かめるべく現地へ飛んだ。しかし、調査の結果は白だった。CIAは調査結果をホワイトハウスに上申する。ところが、その報告は鵜呑みにされ、ブッシュ政権はイラクへの攻撃を開始してしまう。
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(レビュー)
 イラク戦争の開戦を頑なに批判した元CIA諜報員の夫婦の物語。実話の映画化である。

 大量破壊兵器を理由にイラクに攻撃しようとするブッシュ側と、それを阻止しようというヴァレリー、ジョー夫婦の対立は、実話という前振りもあり、かなり興味深く見ることが出来た。実際にこうした政府の陰謀と強圧があったかと思うと空恐ろしくなる。作り物ではない。本当のストーリーだからこそ感じられる怖さだろう。

 ただ、開戦を巡るスリリングな夫婦の捜査は前半で大体片づけられてしまう。後半からは、どちらかと言うと夫婦愛に焦点を絞った作りになり人間ドラマ的な趣になっていく。個人的には前半のテイストで最後まで貫いて欲しかったが、おそらく作り手側はこの事件によって崩壊してしてしまう夫婦ドラマの方を描きたかったのだろう。社会派で押すのか?人間ドラマで押すのか?どっちつかずな印象になってしまったのが惜しまれた。

 とはいえ、ヴァレリーたちが権力に押しつぶされていく様は中々重厚にできていて、決して退屈するようなことはなかった。そこに懸けた作り手側の姿勢も真摯に受け止めることが出来た。

 今となってはアメリカの開戦理由に大義がなかったことは明らかだが、それよりも本作を見て恐ろしく感じたのは当時の人々の風潮である。捜査の結果を握りつぶされたジョーは新聞でブッシュ政権を批判する記事を載せる。それが元で彼とヴァレリーは、左翼だの、非国民だのとマスコミや周囲から攻撃されていくようになるのだ。二人は仕事を奪われ徐々に精神的に追い詰められていくようになる。更には、二人の幼い子供たちにまでも危険が迫るようになる。元々この夫婦は、ヴァレリーがCIAという特殊な仕事をしていることもあり、決して円満に行っていたわけではなかった。しかし、この件がきっかけに夫婦の関係は更に悪化していくようになる。

 9.11のこともあり、当時のアメリカ国民の多くはこの戦争を正義の断罪と信じ込んでいたのであろう。しかし、今にして思えば、これはある種ヒステリックな状態にあったのだと思う。何の疑念も抱かずに一つの方向に流されてしまう民衆の愚かさ、それによってヴァレリーたちの家庭が破壊されていく恐ろしさを、今改めて見て自省する必要があるように思う。

 監督は「ボーン・アイデンティティ」(2002米)「Mr.&Mrs.スミス」(2005米)のダグ・リーマン。ライトなアクション・コメディから硬派な作品まで手際よく料理する職人監督といった印象が強い彼が、こうした重厚な社会派作品を撮ったことは意外だった。演出はこれまで通り堅実な物を見せてくれている。特に、序盤はロケ地を転々と換えながら、軽快にストーリーが進行されている。CIAや政府の要人、捜査情報なども手際よく整理されていて感心させられた。
 ただ、この監督はカットバックを多用するクセがあり、一部で少し時制を混乱させるような箇所があったのは惜しまれる。決して時系列に沿った場面交錯をしているわけではなく、そこは見ていて若干、不自然に感じられた。

 キャストはヴァレリーを演じたナオミ・ワッツ、ジョーを演じたショーン・ペン、夫々に好演していると思った。特に、ナオミ・ワッツは、妻としての顔とCIA諜報員としての顔、二つの顔を堂々と演じ分け見事な好演を見せいている。また、彼女の父親役としてS・シェパードが少しだけ登場してくる。こちらは出番こそ少ないが、終盤のナオミ・ワッツとの語らいで中々印象深い演技を見せている。年を重ねることで演技の方にも円熟味が増してきた感がある。娘を思う父の愛が味わい深かった。
[ 2013/07/31 01:02 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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