平凡な男の奔走劇に思わず感情移入!
「すべて彼女のために」(2008仏)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 平凡な高校教師ジュリアンは、愛する妻リザと幼い息子と幸せな暮らしを送っていた。ところが、ある日突然妻が殺人容疑で逮捕されてしまう。彼女は無罪を主張したが状況証拠が揃っていて有罪が確定した。それから3年後、ジュリアンはリザを脱獄させる計画を企てる。
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(レビュー) 冤罪の妻のために脱獄計画を企てる男の執念を描いたサスペンス映画。
前半20分はリザの逮捕を描くエピソードでややトーンが平板過ぎる感じがした。しかし、ジュリアンが決死の覚悟で脱獄計画の準備を始めるようになってからは、スリリングさが増し面白く見れるようになった。
今作は一にも二にもジュリアンのキャラクター、これに尽きる作品だと思う。ジュリアンは見た目も思考も実に平凡な男である。妻思いの子煩悩で、ちょっと人の良い所もあったりして基本的に人畜無害な男である。それが妻を脱獄させるために犯罪に手を染めていく。このギャップが面白い。
しかも、その心理変化にはリアリティも感じられた。例えば、偽造パスポートを手に入れようとする前半では、彼の中ではまだ罪悪感がはたらいていた。それが後半に入ってくると、渡航費を稼ぐために街のチンピラを襲うまでになっていく。タイトルの「すべて彼女のために」を表すかのように、ジュリアンは自暴自棄とも言えるような大胆な行動を採るようになっていくのだ。この心理変化には大いに見応えが感じられた。
ただ、クライマックスから終盤にかけての盛り上がりは意外とあっさりとしている。このあたりは良くも悪くもフランス映画といったところだろう‥。ちなみに、今作はR・クロウ主演でハリウッドでリメイクされている(「スリーデイズ」(2010米))。未見であるが、そちらの方はどうなっているのだろうか?監督がP・ハギスということでなので少し気になる。彼は脚本家としての才能に溢れた作家だが、演出力も中々ある方だと思う。
一方、シナリオ上、幾つか突っ込み所があったのは残念だった。脱獄王のクダリは唐突過ぎるし、終盤の息子の心理変化にも何らかの説明が欲しい。90分強と短い映画だが、このあたりはもう少し丁寧に描写しても良かったかもしれない。
キャストではリザを演じたD・クルーガーの美しさに惹かれた。無実の罪で収監された悲劇のヒロインを切々を演じている。