緻密さよりもエンタメに特化した今時フレンチ・ノワール!
「この愛のために撃て」(2010仏)
ジャンルサスペンス・ジャンルアクション
(あらすじ) 看護助手のサミュエルは、身重の妻ナディアと幸せな暮らしを送っていた。ある日、病院に担ぎ込まれた重症患者サルテの部屋に何者が侵入するのを目撃する。サルテの容態は急変するがサミュエルのおかげでどうにか一命をとりとめた。その夜、ナディアが誘拐される。犯人の要求はサルテを引き渡せという物だった。サミュエルは負傷したサルテを連れて指定された場所へ向かうのだが‥。
楽天レンタルで「この愛のために撃て」を借りようランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 犯罪組織の争いに巻き込まれる男の戦いをスピード感あふれる展開で見せたアクション作品。
監督は
「すべて彼女のために」(2008仏)で注目された新鋭F・ガヴァイエ。今回も前作と同じく"夫が愛する妻のために奔走するドラマ”となっている。軽快なアクション演出、タイムリミット感を持たせた手に汗握る展開の連続で今回も最後まで楽しむことが出来た。特に、序盤の謎が謎を呼ぶ追跡劇が面白く見れた。
一方、シナリオは今回もガヴァイエ監督が共同で手掛けている。前作と共通する部分もあるが、今回は物語のキーマンとしてサルテという男を登場させたことは新しい。
サミュエルは妻を取り戻すために、負傷した彼を組織の元に連れて行くのだが、その間の二人のやり取りが面白い。最初は反目しあっているのだが、互いに相手のバックボーンを知るうちに徐々に情が芽生えていくのだ。それは甘ったるい友情とまではいかない。どちらかと言うと、同じ敵に向かって戦う連帯感と言えば良いだろうか‥。戦う男のプライドが作り出した共鳴のように写った。本作はこの関係構築のドラマを実に丁寧に描写している。そこに、ある種バディムービーのような面白さが感じられた。
また、犯人のネタ明かし、それ自体は特に驚きはなかったが、映画はその後も更にサスペンスを加速させながらラストまで突っ走って行っている。このテンションの持続は見事だった。
尚、今作も上映時間が90分弱と非常にコンパクトである。このストレス感のないランニング・タイムはエンタメ作品としては重要なポイントだろう。確かにアッサリしすぎな感がするが、作品の印象に切れ味が感じられる。
一方、ストーリー、演出的に幾つか引っかかる部分があり、前作同様、そこはガヴァイエ監督の詰めの甘さが感じられた。
例えば、あれほど重症だったサルテが割と早い時間で復調してしまうのは客観的に言って強引である。致命的な突っ込み所であろう。また、そもそもの話をしてしまうと、サルテを連れ出すのなら普通はプロに依頼するのが普通だと思う。どうして一介の介護助手なんかにそれを命令したのか‥。
こんなことを考えてしまうと、この映画は身も蓋もなくなってしまう。したがって、余り細かいことは考えずに純粋にアクションとサスペンスを楽しむのが吉である。